2014年5月3日、ベルギーのスパ・フランコルシャンでFIA世界選手権(WEC)第2戦スパ・フランコルシャン6時間の決勝レースが行なわれ、トヨタ・レーシングが開幕戦に続き2連勝を飾った。
5月2日に行われた公式予選は、スパ特有の天候でウェットから徐々に乾いていく難しいコンディションとなり、予選終了直前まで激しく順位が入れ替わるタイムアタックが繰り広げられた。
シルバーストンで優勝したトヨタの8号車、アンソニー・デビッドソン/ニコラス・ラピエール/セバスチャン・ブエミがセッション終了間際までトップタイムを守っていたが、最後にポルシェ14号車にかわされ、2番手グリッドとなった。一方トヨタ7号車は4番手、ポルシェ20号車は5番手に。今回ポルシェはWEC復帰2戦目できわどいタイム差ながらポールポジションを獲得したことになる。
今回アウディは、ル・マン用のテストカーとして3号車も送り込み3台体制で臨んだ。3号車のボディは高速コース用のエアロダイナミックスを採り入れ、実戦レースでデータを得ようというわけだ。ドライバーはフィリペ・アルブカーク/マルク・ボナノミ/オリバー・ジャービス(ただしオリバーは日本のスーパーGTレースに出場のためスパには不出場)。ボディはリヤのオーバーハングを延長したセミロングテールで、ダウンフォースはやや抑え、空気抵抗を低減しているのが特徴だ。予選結果はアウディ2号車が予選では3番手、1号車が6番手、3号車が7番手となった。
決勝レースのコースはドライとなった。レースの火蓋が切られると予選ポールのポルシェ14号車がトップを守り、トヨタ、アウディが追い上げるという展開となった。ポルシェ14号車は2回目のピットインまで、約1時間半に渡ってトップを走っていたが、2回目のピットイン直前にハイブリッドシステムの警告灯が点灯し、システムが自動シャットダウンしてしまった。このためドライバー自身が再起動を試みたが1周をロスすることになった。ただ、これはトラブルではないのに警告灯が点灯してしまったと後に明らかになった。
またポルシェ20号車はレース序盤からリヤ・サスペンションにトラブルが発生し、修理のために時間を費やし、さらにその後もフロントドライブシャフトの折損が2度も発生し、大きく遅れ完走を目指すことになってしまった。
こうしてトヨタ8号車がトップに立ち、その後のレースをリードする。トヨタ7号車もアウディ、ポルシェと接戦を演じ、3番手に付けている。一方アウディは、トヨタのラップタイムに届かないことを見越し、1号車はピットイン2回目でタイヤを交換する作戦を採用し、ピットストップ時間の短縮で勝負を賭けていた。このためトヨタ8号車もこの作戦を試みたが、後半でのタイムロスが大きいため、すぐに元のピットインごとのタイヤ交換スケジュールに戻している。その後もトヨタ8号車はノートラブルで快調に走り続け、トップの座を明け渡すことなくトップでゴールを迎える。
6時間のレースにおけるアウディのピットイン=給油回数はトヨタと同じ7回であったが、2番手争いを演じたトヨタ7号車とアウディ1号車は、最終的にタイヤ交換サイクルの差でアウディ1号車が2位となり、トヨタ7号車は僅差で3位となった。アウディ2号車は通常通りピットインごとにタイヤ交換を行ったため最終的に5位でフィニッシュする。
アウディ2号車はトヨタ7号車より速いラップタイムでトヨタ7号車を抑える計画だったが、レース序盤に電子信号受信機が壊れ、このため受信機を交換するまでハイブリッドシステムが使用不可能になってしまった。この想定外のトラブルのため、上位に食い込むことは難しくなってしまい5位に甘んじることになった。
決勝レースでトヨタ、アウディは満タンで約50分走行でき、レース中に7回の燃料給油を行なった。ただし最後の7回目は極少量を追加するだけだが。一方、ポルシェは55分~60分走行でき、ぎりぎりで燃料補給は6回で済むはずだったのでレース終盤でポジションを上げることも不可能ではなかったが、終盤になって14号車はタイヤがパンクし、けっきょく7回目のピットインをせざるを得なくなり燃費のメリットを生かすことはできなかった。
レースはトヨタ8号車が優勝し、半周遅れでアウディ1号車、それより6秒遅れでトヨタ7号車が3位となり、ポルシェ14号車は4位となった。次はいよいよル・マン・テストデーである。
トヨタ・レーシング代表・木下美明氏:チームが成し遂げた仕事を大変誇りに思っている。トヨタ・レーシングがマニュファクチャラーズ選手権をリードするというのは大変嬉しく、ル・マンへ向けてチーム全体のモチベーションを上げることができる。今日は、大変多くの観客の前で、ライバルとの素晴らしいレースができた。優勝できたのは最高の結果を出そうと全員が頑張った結果であり、チームも、ドライバーも、皆が本当に良くやってくれた。この先、ル・マンまで厳しい時間が待っている。何度も経験してきたように、ル・マンは特別なレースで何が起こっても不思議ではない。そのレースに向けて我々は全力で仕事をこなし、最高のチャンスを得られるように頑張って行く。
アウディ・モータースポーツ責任者・W.ウルリッ博士:2位を獲得したのは今日の状況ではベストの結果で、作戦がうまく完遂できた賜物です。また3台とも完走し、ダメージがなかったことも幸いです。しかし我々にはまだやらなければならないことはたくさんあると考えています。
ポルシェLMP1プロジェクトリーダー・F.エッツィンガー:主な目標は2台の919ハイブリッドが完走することであり、これは達成することことができました。ポールポジションを獲得し、決勝では非常によいラップタイムを記録し、当然もっとよい結果を期待していました。しかし、両車ともにテクニカルトラブルに見舞われてしまいました。ル・マンに向けて課題が見つかったので、早急に対処したいと思います。