2013年5月3〜4日、ベルギーのアルデンヌの森林地帯に位置するスパ・フランコルシャンで開催された世界耐久選手権(WEC)シリーズ第2戦、「スパ・フランコルシャン6時間レース」は3台体制で臨んだアウディ・チームが1-2-3と表彰台を独占するという無敵ぶりを見せつけた。
「スパ・フランコルシャン6時間レース」にトヨタはついに2013年モデルのTS030ハイブリッドを投入した。その7号車はアレックス・ブルツ/ニコラス・ラピエール/中嶋一貴がステアリングを握る。2013年仕様は、ル・マン24時間レースを見据えた低ダウンフォース仕様に仕上げられている他、2012年仕様ではフロントの回生用モーターのスペースがなくなり、ハブリッドシステムにも改良が加えられているという。一方のアンソニー・デビッドソン/ステファン・サラザン/セバスチャン・ブエミが乗る8号車は2012年仕様で、シルバーストン・レース時と同じダウンフォースを重視した仕様になっていた。
アウディチームは3台体制でこのレースに臨んでいる。これまでの2013年モデル2台に加え、ル・マン24時間レース仕様の3号車を持ち込んだのだ。ルーカス・ディ・グラッシ/マーク・ジェネ/オリバー・ジャービスがステアリングを握る3号車は、ロングテール仕様でエクステリアを見る限りは空気抵抗の低減と、ダウンフォース確保の両立を狙った仕様と思われる。なお、アウディチームは、ミシュランとともにル・マン24時間レースのための事前テストも終えており、ここでは早くも2014年シーズン用の先行タイヤテストもテストされるなど、万全の体制を整えていることが垣間見える。
予選では、トヨタの2台はともにダウンフォースが不足し、十分なグリップを得ることができず、7号車が予選4番手、8号車が5番手に終わった。もちろん決勝レースのためにセッティングを変更している。一方、アウディは順調そのもので、ファスラー/ロッテラー/トレルイエ組の1号車がポールポジション。ル・マン仕様の3号車が2番手、そしてデュバル/クリステンセン/マクニッシュ組の2号車が3番手を占めた。3号車はややダウンフォースが劣るにもかかわらず、この日のベストタイム(予選結果は平均タイムを使用する)をマークし、高いポテンシャルを見せつけた。
決勝レースは快晴に恵まれた。スタートが切られるとアウディ勢が先頭に立つが、トヨタのセッティングもうまく決まったため、アウディ勢との激戦となる気配であった。スタート直後、アウディ1号車がコースで他車と絡んだためアウディ2号車がトップに。そしてトヨタの7号車が2番手に着ける。序盤は2号車がリードを広げ、その後方で7号車と1号車が接戦を演じるが、やがて1号車が2番手に。19周目にアウディが最初のピットイン。アウディ勢がトヨタよりも短いスティントでピットインする。
レースはアウディ1号車がリートを続けたが、中盤に破片を拾ったタイヤのパンクにより緊急ピットインする。その後は燃費とタイヤ交換の間隔で優位に立つトヨタ7号車、アウディ2号車、1号車の戦いに。この時点ではトヨタとアウディのペースはほぼ互角に見えた。
しかしスタートから3時間40分、トヨタ7号車のリヤ・ブレーキ温度警告灯が点灯し緊急ピットインする事態となった。ハイブリッド回生を後輪で行なうためノーマルブレーキの負担が少ないのが特徴のTS030だが、ハイブリッドシステムの故障で回生ブレーキが作動せず、リヤ・ブレーキがオーバーヒートしたのだ。結局7号車は99周でリタイアとなる。
このためレースはアウディの1号車、2号車の争いとなり、3号車とトヨタ8号車はトップ2との間隔が縮められないまま経過。終盤は1号車のロッテラーが快調に飛ばし、トップでゴールを迎えた。2位は2号車、3位はアウディ3号車で、アウディR18 etronクワトロが表彰台を独占するというアウディにとっては完璧なレースとなった。