ABB FIA フォーミュラEシーズン10の第11戦が中国・上海で行なわれた。シーズン10も残り5レースでいずれもダブル・ヘッダーでの開催となるため、あと3大会でチャンピオンが決定する。この上海もダブル・ヘッダーで行なわれており、中国開催は5年ぶり、上海では初開催だ。
その上海では、市街地ではなくF-1でも知られる上海サーキットで行なわれ、パーマネントサーキットをフォーミュラE用にショートカットして使用。全長3.051km、12のコーナーで競うことになる。
チャンピオンシップでは、ニック・キャシディ/ジャガーが2位のパスカル・ヴェアライン/ポルシェを16ptリードしてトップ。続いて日産のオリバー・ローランド、シーズン9チャンピオンのジェイク・デニス/アンドレティ・ポルシェ、ミッチ・エバンス/ジャガーと続いている。
残りのレースを鑑みチャンピオン争いに残れるのは6位のジャン・エリック・ヴェルニュ/DSあたりまでと予想され、この予選ではポールポジションを獲得すると3pt ゲットできるため、上位陣には重要な予選になった。
グループ予選A組ではストフェル・ヴァンドーン/DS、ローランド/日産、ノーマン・ナト/アンドレティ、エバンス/ジャガーがデュエルスに進出し、ランキングトップのキャシディ、ランキング7位のマキシミリアン・ギュンター/マセラティが敗退している。
グループ予選B組ではジェイク・ヒューズ/マクラーレン、ヴェルニュ/DS、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ/ポルシェ、ヴェアライン/ポルシェがデュエルス進出を決め、ランキング4位のジェイク・デニス/アンドレッティが敗退している。
デュエルスの順々決勝では、ランキングの見どころ対決があり、6位ヴェルニュと8位ダ・コスタ対決は0.006秒差でヴェルニューが勝ち上がった。続く準決勝でも激しくぶつかり合う対決があり、ローランド対エバンスのランキング3位、4位対決ではなんと!0.001秒差でローランドが勝ち上がった。
デュエルス決勝ではランキング3位のローランドと6位ヴェルニュの対決。どちらも3ptが欲しいふたりだ。ローランドはトップと22pt差で、ヴェルニューはチャンピオンシップに残れるか?という瀬戸際でもある。結果はヴェルニューがポールポジションを獲得し、第2戦デルイヤー以来のポール獲得、シーズン2回目を達成した。
振り返れば、このデュエルスにはチャンピオンシップに絡む、シーズン2位、3位、5位、6位、8位、9位の選手が進出しており、予選はあまり重要ではないと考えられているフォーミュラEでもチャンピオンシップを踏まえるとドライバーはフルアタックをしていることが伝わる結果だ。
ちなみに日産のサッシャはセットアップが決まらないのか、予選最下位の22位からのスタートとなった。
決勝
決勝レースは29周で争われるが、シーズン中盤あたりから、予選順位は関係なく誰にでも優勝できるチャンスがあるというレースに変わってきている。またミサノ、モナコ、ベルリンと欧州ラウンドに戻ってからはチームプレイといったようなシーンも出てくるようになった。
さて、その決勝ではクリーンにスタートが切られ、サイドバイサイド、3ワイドの展開は当たり前の景色になってきた。予選では1分13秒台のタイムで走行しているが、決勝の序盤では1分21秒台と8秒遅い。フォーミュラEではタイヤの使用本数制限もあり、またガソリンのような液体による車重変化もないため、予選と決勝ではマシンのコンディションはイコールと考えていい。
その中で7秒から8秒遅いタイムで展開すれば、ドライバーからすればいつレースが始まるのか?という空気の中で走行を続け、エネルギーセーブを主目的に走行することになる。そのため、できる限り集団の中で展開し、空気抵抗を受けないように走行し、コースティングを多用し電池残量に気を配ることになる。
その証拠にランキング1位のキャイディは予選10位からのスタートだが、序盤15位付近まで順位を下げているのだ。これは意図的な降格に思える。9周目の時点でトップのヴェルニューの電池残量は72%だが、15位のキャシディは74%と温存に成功しているのだ。
そしてレース中盤になると1分17秒台にラップタイムが上がる。とはいえ、22台の参戦マシンはラップタイム1秒以内に全車が入る接近戦なので、17秒台に入ったとはいえ、ドライバーにはまだまだ余裕がある状況だ。
フォーミュラEではヴァーチャルエンジニアという表示があり、それによるとラスト7周でレースが始まるというデータを表示。つまり、序盤、中盤は順位争いというより、電池残量を減らさない走行をどれだけできるかということになる。
また、今回はマシンの接触が極めて少なく、クリーンな展開が続いている。それはパーマネントサーキットでコース幅が広いという要因もあるが、接触が意味を持たないことをチーム、ドライバーがしっかり理解したことが要因だろう。
チーム無線ではマヒンドラのデ・フリースが一時トップに立つが、リードしたくないという無線が飛び、コースティングを使うように指示が出る。そして1位走行から11位まで順位を下げている。
このように通常のレースとは全く異なる展開であり、レースを見る側の楽しみ方も難しいレースで、いかにマシンの状況を公開するかにポイントがありそうだ。
さて、レース終盤に入るとキャシディは順位を戻し始め、トップはポルシェの2台、ヴェアラインとダ・コスタがレースをひっぱり、それにジャガーのエバンス、日産ローランド、デニス/アンドレッティ、ヴァンドーン、ヴェルニュのDS勢が上位を占める。
そして28周目はポルシェ2台、ジャガー2台の4台に絞られ、5位にローランドが上がっている。そして、ファイナルラップはエバンスがヴェアラインを抜き、3位にキャシディ、4位ローランド、5位ダ・コスタ、6位デニスという順でゴールした。
チャンピオンシップをリードするキャシディもしっかり3位に入り、追いかける2位のヴェアラインはここでも2位でポイント獲得。そしてローランドもしぶとく4位に入りまだまだシリーズチャンピオンが狙える位置にいる。
エバンスは今季2勝目でモナコ以来。通算12勝目を挙げランキングもデニスを抜いて4位に浮上した。次戦は翌日に第12戦が行なわれ、1周少ない28ラップで競われる。
結果
順位 | Driver | Team |
1 | MITCH EVANS /ミッチ・エバンス | JAGUAR TCS RACING |
2 | PASCAL WEHRLEIN /パスカル・ヴェアライン | TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM |
3 | NICK CASSIDY/ニック・キャシディ | JAGUAR TCS RACING |
4 | OLIVER ROWLAND/オリバー・ローランド | NISSAN FORMULA E TEAM |
5 | ANTÓNIO FÉLIX DA COSTA/アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ | TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM |
6 | JAKE DENNIS/ジェイク・デニス | ANDRETTI FORMULA E |
ドライバー・シリーズランキング
第11戦終了時点 | Driver | Point |
1 | NICK CASSIDY/ニック・キャシディ | 155 |
2 | PASCAL WEHRLEIN /パスカル・ヴェアライン | 142 |
3 | OLIVER ROWLAND/オリバー・ローランド | 130 |
4 | MITCH EVANS /ミッチ・エバンス | 122 |
5 | JAKE DENNIS/ジェイク・デニス | 111 |
6 | JEAN-ÉRIC VERGNE/ジャン・エリック・ヴェルニュー | 93 |
7 | ANTÓNIO FÉLIX DA COSTA/アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ | 69 |
8 | MAXIMILIAN GÜNTHER/マキシミリアン・ギュンター | 67 |
9 | STOFFEL VANDOORNE/ストフェル・ヴァンドーン | 43 |
10 | SAM BIRD/サム・バード | 38 |
11 | SACHA FENESTRAZ/サッシャ・フェネストラズ | 26 |
チームランキング
1 | JAGUAR TCS RACING | 277 |
2 | TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM | 211 |
3 | NISSAN FORMULA E TEAM | 156 |
4 | DS PENSKE | 136 |
5 | ANDRETTI FORMULA E | 135 |
6 | MASERATI MSG RACING | 75 |
7 | NEOM MCLAREN FORMULA E TEAM | 68 |
8 | ENVISION RACING | 44 |
9 | ERT FORMULA E TEAM(旧NIO333) | 23 |
10 | ABT CUPRA FORMULA E TEAM | 19 |
11 | MAHINDRA RACING | 11 |
マニファクチャラーランキング
1 | Jaguar | 306 |
2 | PORSCHE | 296 |
3 | NISSAN | 214 |
4 | STELLANTIS | 197 |
5 | MAHINDRA | 30 |
6 | ERT | 23 |
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