ABB FIA フォーミュラEシーズン10も、この第9戦ベルリンからは後半戦に突入していく。そして残りのベルリンを入れての8戦は全て連戦の開催で、日曜日に第10戦が開催される。
第9戦ドイツ・ベルリンはテンペルホフ空港跡地で毎回開催されているが、今シーズンはレイアウトを変更した新コースで戦うことになる。そしてドライバーも新しい顔が参戦している。WECのスパ6時間レースと日程が重なったこともあり、アプトのミュラーに変わってファン・デル・リンデが参戦。
そしてエンビジョンはフラインスとブエミの2人とも欠席で、代わりにジョエル・エリクソンとポール・アローンが参戦。マヒンドラはニック・デ・フリースに代わってジョーダン・キングが。さらにマクラーレンは骨折のサム・バードに代わって、歴代最年少19歳のテイラー・バーナードが参戦した。
しかし、フォーミュラEマシンはすぐに乗りこなせるマシンではなく、特に決勝レースでは他のレースカーにはないエネルギーマネージメントを踏まえたコースティング走行や回生ブレーキなどもあり、すぐには結果を出せないというのが常識になっている。そのため、予選結果を見るとデュエルスに進出できた代理ドライバーはゼロという結果だった。
その予選ではグループAからモルタラ、ヴェアライン、ヴェルニュ、ダルバラがデュエルスに進出し、ランキング5位のエバンスが6番手、シーズン9のチャンピオン、ジェイク・デニスも進出できなかった。さらに日産のサッシャも精彩を欠き9番手だった。
グループB予選ではディ・グラッシが久しぶりにトップ通過し、続いてギュンター、ヴァンドーン、セッテ・カマラが進出した。シリーズランキング2位のキャシディが5番手で、日産のローランドもサッシャと似たように8番手。そしてデニスのチームメイト、アンドレッティのナトも最下位で、マクラーレンの2台とも最下位、そして日産ワークスも8番手、9番手、さらにジャガーのキャシディ、エバンスのふたりも進出できない結果になった。
デュエルス予選
デュエルスでは順々決勝をヴェルニュとモルタラ、ヴァンドーン、セッテ・カマラが勝ち上がり、準決勝ではモルタラとヴァンドーンが決勝に進出。そしてモルタラが2シーズン振りのポールポジションを獲得した。
予選結果を見ると、右肩上がりだった日産PTを使うマクラーレンと日産が不振で、マヒンドラPTが今季初のポール、そしてポイントを獲得している。またZF・PTのディ・グラッシも好結果で、マヒンドラへPT提供しているZF・PTが地元ドイツで活躍した格好だ。
一方、チャンピオンシップを見るとリーダーのヴェアラインはここでも好調を維持しているものの、2位のキャシディ、3位デニス、4位ローランド、5位エバンスがデュエルスに進出できないという番狂せが起きていた。
決勝は1周2.345kmのコースを40周で競う。アタックモードは今回いつもより2分少ない6分間を2回使うことが義務付けられた。
ポールはモルタラ/マヒンドラで、ヴァンドーン/DS、ヴェルニュ/DS、セッテ・カマラ/ERT、ギュンター/マセラティ、ヴェアライン/ポルシェの順で、ローランドは15番手、サッシャは16番手から。そしてデニスとナトは20位、21位からスタートということになった。またキャシディが9番手、エバンスは10番手からとチャンピオンシップをリードするメンバーの多くが中団以降からのスタートになった。
大混戦の決勝レース
ベルリンのコース幅は広く、スタート直後から順位の入れ替えは激しく、3ワイド、4ワイドが各所で見られ、トップグループも形成されないほど団子状態で始まった。
今回のアタックモードは確実に順位を落とす場所に設置され、アクティベートゾーンへ飛び込むと4〜5番手ほど順位が下がる。スタートから6周目にはほとんどのドライバーが1回目のアタックモードを使い、順位争いは目まぐるしい。
10周目あたりになるとDSの2台が上位を占めたので、モナコのようにチームプレイができるかと思いきや、幅の広いコースだけに後続をブロックすることが難しい様子だ。11周目にFCYとなり、アディショナルラップは確実となったが、FCYがでた瞬間、各マシンは団子状態であり、またサイド・バイ・サイドのマシンもあり、レースコントロールは順位確認に手間取った。
結果6ラップを使い17周目に再開。再び団子レースが展開し、各コーナーで順位が入れ替わるレースが続いた。主にはモルタラ、ヴェアライン、ヴェルニュ、ダ・コスタがトップを競う形だったが、予選で不振の日産勢が決勝では調子を戻している様子だ。
15、16番手スタートのローランドとサッシャは6番手にローランド、9番手にサッシャという順まで挽回しており、またアンドレッティ/ポルシェのデニスも20番手から8位にまで順位を上げている。そして24周目にはローランドはトップ争いに加わる順位にまで上り詰めている。
26周目にバーチャル・エンジニアは残り6周が全力走行でのレース展開になるだろうと予想しているように、エネルギーマネージメントの必要から、セーブしながらの展開が続き、順位を確認する意味を持たないほどの混戦レースになっている。
38周目にアディショナルラップが+6周と伝えられ、当初の規定周回40周目になってもトップが誰になるのか決まらない展開が続いた。そしてマセラティのダルバラが5位を走行していたももの41周目に痛恨のクラッシュをし、初ポイントを逃した。
気づけばキャシディがスタートから中盤までレース後方で走っていたため、バッテリー残量が多く、ジリジリとトップ集団へ近づき、42周目にはローランドも含むトップ集団に加わった。そしてキャシディがトップに立つと圧倒的なスピードで集団から抜け出し、大差をつけ始める。2位以下は混戦だが、シリーズランキングでトップのヴェアラインをキャシディのチームメイトのエバンスがブロックする展開を見せた。
その結果キャシディはぶっちぎりの優勝で今季2勝目を挙げ、2位ヴェルニュ、3位にローランドが入り今季5回目の表彰台に立った。以下、4位エバンス、5位ヴェアライン、6位ダ・コスタの順でサッシャが9位でポイントを獲得した。
チャンピオンシップではキャシディがヴェアラインを抜いてトップに立ち121ptを獲得。2位ヴェアライン112pt、3位ローランド103pt、4位デニス89pt、5位エバンス89pt、6位ヴェルニュー83ptという順になった。
予選で不調だった日産勢、そしてアンドレッティのデニスも一時4番手まで浮上していたが、結果的にクラッシュで離脱してしまった。ちなみに、代理ドライバーを務めた中で最上位はマクラーレンのバードの代わりに走ったバーナードが2レース目にして10位フィニッシュをしており、ポイントを獲得した。他は11位にヴァン・デル・リンデ、12位キング、13位アーロンと続き、エリクソンはリタイヤとなった。
第10戦は翌日、同じコースで開催され、周回数は2周少ない38周で競われる。そしてアタックモードも4分間と短くなって行なわれるため、チャンピンシップの行方と合わせて、エネルギーマネージメントのプログラムも別なものが必要であり、そこも見どころのひとつになる。
シーズン10第9戦終了時点 | Driver | Team | Power Unit | Point |
1位 | ニック・キャシディ | JAGUAR TCS RACING | Jaguar I-Type 6 | 121pt |
2位 | パスカル・ヴェアライン | TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM | Porsche 99X Electric Gen3 | 112pt |
3位 | オリバー・ローランド | NISSAN FORMULA E TEAM | Nissan e-4ORCE 04 | 103pt |
4位 | ジェイク・デニス | ANDRETTI FORMULA E | Porsche 99X Electric Gen3 | 89pt |
5位 | ミッチ・エバンス | JAGUAR TCS RACING | Jaguar I-Type 6 | 89pt |
6位 | ジャン・エリック・ヴェルニュ | DS PENSKE | DS E-TENSE FE23 | 83pt |
7位 | マキシミリアン・ギュンター | MASERATI MSG RACING | Maserati Tipo Folgore | 65pt |
8位 | ストフェル・ヴァンドーン | DS PENSKE | DS E-TENSE FE23 | 43pt |
★第1戦 メキシコシティ
★第2戦 デルイーヤ
★第3戦 デルイーヤ
★第4戦 サンパウロ
★第5戦 東京
★第6戦 ミサノ
★第7戦 ミサノ
★第8戦モナコ