東京大会の2週間前、3月16日(土)にフォーミュラーEシーズン10の第4戦 ブラジル・サンパウロで開催された。開幕から3戦を見る限りパワートレインにジャガー製を採用する、ワークス・ジャガーチーム、サテライトのエンビジョン・チームが好調。そしてポルシェ製パワートレインのワークスポルシェとアンドレッティチーム勢が好調だった。
しかし、第4戦のサンパウロではその勢力図に変化が現れていた。ステランティスグループのDSパワートレインとマヒンドラ、そしてニッサンが好調になってきたのだ。今回はわかりやすいように、ドライバー名/ のあとにパワートレインメーカーを記載した。
DS系ではDSペンスキーとマセラティが好調で、マヒンドラ製はZF製のPTを使用しZF制御のアプト・クプラ、そしてハードはZF製、制御がマヒンドラというワークス・マヒンドラも好調だ。
さらに注目はニッサンだ。シーズン9でもマクラーレン/Nissan e-4ORCE 04が好調で、今季のシーズン10でも引き続きマクラーレンは好調。しかし本家のニッサンが今ひとつの成績だったが、シーズン10の第3戦でオリバー・ローランドが3位に入り、一気に、ニッサンワークス勢も好調に転じた。
こうした勢力図の変更は、第4戦サンパウロのグループ予選でその傾向をつかむことができた。グループAからデュエルスに進出した4台は、DSペンスキーのジャン・エリック・ヴェルニューが1位通過、続き、同チームのストフェル・ヴァンドーンが2位、3位にジャガーのミッチ・エバンス、4位アプト・クプラのニコ・ミュラーが進出している。
グループBからはマセラティ/DS E-TENSE FE23のマキシミリアン・ギュンターがトップ通過し、2位にポルシェのパスカル・ヴェアライン、3位マヒンドラのエドアルド・モルタラ、そして4位にマクラーレン/Nissan e-4ORCE 04のサム・バードが通過。残念ながらニッサンワークスのサッシャ・フェネストラズとオリバー・ローランドはグループ予選敗退しているが、明らかに勢力図は変わってきているのがわかる。
つづくデュエルスの準々決勝ではエバンス/Jaguar I-Type 6対ヴァンドーン/DS E-TENSE FE23、ミュラー/DS E-TENSE FE23 対ヴェルニュー/DS E-TENSE FE23、モルタラ/Mahindra M9Electro 対ヴェアライン/Porsche 99X Electric Gen3、そしてバード/Nissan e-4ORCE 04 対 ギュンター/Mahindra M9Electroとなり、それぞれヴァンドーン、ヴェルニュー、ヴェアライン、ギュンターが勝ち上がり、準決勝には3台のDSパワートレインとポルシェパワートレインが1台という構図になった。
そして決勝にはヴァンドーン対ヴェアラインというドイツ人対決になり、0.002秒差でヴェアラインがポールポジションを獲得した。
★決勝
決勝レースが行われるサンパウロの市街地コースは前年シーズン9と同じコースで、非常にバンピーな路面でマシンは常にアンジュレーションの中で走行をしている。またストレートが長く、エネルギー回生が難しいレイアウトとなっており、1周2.933kmのコースを31周で競うことになる。
そしてアタックモードは従来通り8分間を2回にわけ、使い切る必要があるが、そのアクティーベーション・ゾーンはコーナーを大きく外回りする場所に設けられ、通過すると順位の変動は必須のレイアウトになっている。
さて、決勝ではポールがヴェアライン/Porsche 99X Electric Gen3、ヴァンドーン/DS E-TENSE FE23、ヴェルニュー/DS E-TENSE FE23という順でDS勢に囲まれた状態。またチャンピオンシップをリードするキャシディは/Jaguar I-Type 6は9位から。ニッサン勢のサッシャが14番手、そして2戦連続表彰台のローランドは11番手からのスタートとなった。
一方で、マセラティのギュンターはグループB予選をトップ通過しながら減速機の交換をしたため、40グリッド降格があり最下位からのスタート。グリッドは22位までなので、残りのグリッド降格分はピットストップ10秒をプラスしてのペナルティという厳しい条件でスタートを迎えた。
スタートは比較的穏やかなスタートではじまり、トップ1、2は変動なく、エバンス/Jaguar I-Type 6、バード/Nissan e-4ORCE 04が順位を上げている。また3周目にはアタックモードを使い始めるドライバーが出てきて、そのため、予選8位だったポルシェのダ・コスタが3位に浮上している。
このように今回のアタックモードではアクティベーション・ゾーンに入ることで順位を落とし、350kWとなったマシンは長いストレートを生かして順位を上げるという、順位が激しく入れ替わる展開になった。一方でアタックモードを温存するチームもあり、狙いはバッテリ残量と周回数が確定してからのマネージメントとしたいチームが温存方向の作戦をとっているようだ。このあたりは長い目で結果を見ないと正解となる戦略は不透明であり、面白さでもある
途中セーフティカーが何回か入るシーンがあり、SCが3分30秒以上レースをコントロールした場合、周回数を増やすアディショナル・ラップがあり、今回はプラス3ラップ。レースは34周で競うことになった。
このSCの恩恵を受けたのが厳しいペナルティで始まった最後尾スタートのギュンターだ。最下位からプラスしてピットスタートだったが、SCで周回している間にそのギャップを埋めることができ、14周目には総合13位でレースをすることができている。予選での速さもあるため、さらなる上位への進出が可能というわけだ。
20周目にSCが解除され、バード、エバンス、ヴェアラインは変わらず、4位にデニス、7位にローランドが浮上している。
その後ラスト2周でローランドは5位に浮上し、トップ争いはエバンスとバード。3番手デニス。しかしバッテリ残量は多く残っているものの、デニスのペースは上がらない。4位以下に蓋をしたような状態で4位ヴェアライン、5位ローランドを抑え続ける。
そして最終ラップ、最終コーナーひとつ前のコーナーでバードがエバンスを交わして優勝。そして3位争いではデニスがヴェアラインを抑えてアウトに膨らんだ隙に2台をまとめて交わし、ローランドは3位でチェッカーを受けた。
その結果ニッサンパワートレインが1位、3位という結果になった。
優勝:サム・バード/マクラーレン/Nissan e-4ORCE 04
2位:ミッチ・エバンス ジャガー/Jaguar I-Type 6
3位:オリバー・ローランド/Nissan e-4ORCE 04
最後尾スタートのギュンターはなんと9位でフィニッシュしポイントを獲得した。またニッサンのサッシャは11位でポイント獲得ならず。予選で速さを見せたDS勢では7位ベルニュー、8位ヴァンドーン、9位にそのギュンターでそれぞれポイントを獲得した。
チャンピオンシップではポイントが接近し、リーダーはニック・キャシディ57点、2位パスカル・ヴェアライン53点、3位ミッチ・エバンス39点、4位ジャン・エリック・ヴェルニュー39点で同点。5位ジェイク・デニスは1点差の38点、6位はサム・バード37点と混戦状態だ。一方チーム順位ではジャガーが強くトップで96点、2位ポルシェ61点、3位DS57点で、ニッサンは6位に浮上した。
また今季からマニファクチャラーポイントが公開されるようになり、パワートレインのメーカーが競われることになる。現在トップはジャガーで123点、2位ポルシェ95点、3位ニッサン88点、4位ステランティス71点、5位ERT(旧NIO)2点、そして6位にマヒンドラレーシング0点という結果になっている。
さて、次戦はいよいよ東京ラウンドだ。全16戦で戦うシーズン10の第5戦が東京ビッグサイトと周辺公道を使って初開催される。ニッサンの表彰台独占も有り得る状況なので、ぜひとも応援していきたい。
さらに、次戦の第6戦ではレース中のピットストップで急速充電をするルールに変わる予定であり、再びあらたなフェイズへとアップデートされるフォーミュラEレースとなり、次世代モータースポーツから目が離せない。
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