ABB FIAフォーミュラEシーズン9のサウジアラビア2連戦の後半、第3戦もポルシェパワートレインが圧勝し、前日と同じ顔ぶれでパスカル・ヴェアライン(タグ・ホイヤーポルシェ)が2連勝を飾った
1日で予選と決勝を行なう1Dayレースの2日目。サウジアラビア・デルイーヤの市街地、ストリートコースで前日と同じレイアウトで第3戦の予選、決勝が行なわれた。
この2連戦で供給されるタイヤは僅か3セット。予選、決勝、雨でもこのタイヤで戦わなければならない。予選では12分間のグループ予選で残り5分付近になると、各チームはニュータイヤを投入する作戦をとっている様子だ。
A、Bグループはシリーズのランキング順で奇数、偶数の順番で割り振られる。Aグループ予選からデュエルスに進出した4台は、ジェイク・ヒューズ(マクラーレン・ニッサン)、セバスチャン・ブエミ(エンビジョン・ジャガー)、ストフェル・ヴァンドーン(DSペンスキー)、ジェイク・デニス(アバランチアンドレッティ・ポルシェ)の4台。
そしてBグループはミッチ・エバンス(ジャガー)、レネ・ラスト(マクラーレン・ニッサン)、パスカル・ヴェアライン(ポルシェ)、エドアルド・モルタラ(マセラティ・ZF)の4台だ。
注目のニッサンのサッシャ・フェネストラズ、ノーマン・ナトーともにグループ予選は通過できなかった。またマセラティのモルタラが今季初のデュエルス進出を決めた。マセラティの前身はヴェンチューリで、当時はメルセデスパワートレインを使うカスタマーチームだったが、マセラティになった今季、ZFのパワートレインを使用している。
Gen3マシンは、デュエルスで350kWの出力になるが、これまで300kWのタイムよりあまりタイムアップしていない。しかし3戦目となったレースでは、軒並みグループ予選のタイムを上回る速さとなった。パワーアップによるマシンのセットアップ変更を積極的に行なっているということだろう。
デュエルス最初のQFを勝ち上がったのは、ブエミ(エンビジョン・ジャガー)とヒューズ(マクラーレン・ニッサン)、そしてラスト(マクラーレン・ニッサン)VSエバンス(ジャガー)で、SFに進んだのは、ヒューズとエバンスだった。
その結果、ポールポジションはジェイク・ヒューズで、なんと参戦3レース目でポールを獲得したのだ。これほど順応の早いドライバーはこれまでにいなかった快挙だ。
こうしてデュエルス進出チームをみると、ジャガー、ニッサンのパワートレインがベスト4であり、ニッサンパワートレインは2台ともマクラーレンでカスタマーチームだ。ワークスのニッサンはデュエルスに進出できない状況で、パワートレインだけでなく、セットアップの課題があるのかもしれない。
マクラーレンチームはシーズン8までメルセデスEQチームで、今季もイアン・ジェームスがチーム・プリンシパルを務めており、シーズン8のチャンピオンチームの強さをニッサンパワートレインに変わっても発揮しているということになる。
またジャガーパワートレインはこれまでもコンスタントに優勝争いを繰り広げる強さがあり、今季はカスタマーチームのエンビジョンにも供給し、ベテランのブエミが活躍している。そして開幕2連勝しているポルシェパワートレインはワークスポルシェ、カスタマーのアバランチ・アンドレティともに、強く、連勝している。
決勝
決勝レースは前日同様ナイトレースで39周で争う。参戦は22台のフルグリッド。
予選順位は以下のようになっている。
1:ヒューズ(マクラーレン・ニッサン)
2:エバンス(ジャガー・ジャガー)
3:ラスト(マクラーレン・ニッサン)
4:ブエミ(エンビジョン・ジャガー)
5:ヴェアライン(ポルシェ・ポルシェ)
6:デニス(アバランチアンドレッティ・ポルシェ)
7:モルタラ(マセラティ・ZF)
8:ヴァンドーン(DSペンスキー・DS)
9:バード(ジャガー・ジャガー)
10:ギュンター(マセラティ・ZF)
そしてニッサンのサッシャが12位、ナトーが19位というスタート順になった。また、開幕から調子がでないアプトチームは今回も最下位の22位と21位だった。ちなみにマヒンドラZFのパワートレインだ。
決勝レースのホールショットはヒューズを抑えてエバンスがトップで1コーナーをクリアしていく。前日のレースではクラッシュもあったが、この日はクリアに展開し、5周目を終え、エバンス、ヒューズ、ラスト、モルタラ、ブエミ、ヴァンドーンという順。
マクラーレン勢が2位、3位と好位置にいる。9周目にトップ、エバンスがアタックモードに入り、その間隙を縫ってヒューズとラストに抜かれ3位に後退。11周目にラストがアタックモードに入るが、後続に抜かれず、トップをキープした。
12周目に入るとヴェアラインがアタックモードを使わずにヒューズを抜き3位に浮上してくる。ポルシェのエネルギーマネージメントがいいのか。ヴェアラインはさらにその翌周にエバンスも交わし2位に。
マクラーレンのラストがトップを走るも、17周目にアタックモードに入るところで、ヴェアラインに抜かれ2位。その直後からヴェアラインは後続を引き離す速さを見せ、19周目には2位ラストに1.5秒のリードをつけるほど速い。もう一台のポルシェパワーを使うデニスは、この時点ではスタート位置と変わらず6位を走行している。
しかし20周を過ぎたあたりからデニスの猛追がはじまり、23周目にエバンスを交わし3位に浮上。さらに翌周ラストも交わして2位に浮上。この時点で前日の1位、2位と同様、ヴェアライン、デニスの順で終盤を迎える。
27周目にバードがラストを交わして3位に浮上した直後にSCが導入され、トップ、ヴェアラインのリードはなくなる。だが、30周目に再開すると安定してヴェアライン、デニスは後続にリードを広げていく。
そうなると3位争いが激しくマクラーレンのラストとジャガーワークスのバードの争いが激化。テールツーノーズでバードがストレートエンドで仕掛けるレース展開が始まる。が、しかし、抜くまでには至らず、ラストは3位を死守した。
結果はヴェアラインの連勝となり、前日と同様に2位デニスとなりポルシェパワートレインの開幕3連勝という圧倒的強さを見せた。3位はマクラーレンのラスト、4位ジャガーのバード、5位マクラーレンのヒューズ、6位ジャガーカスタマーのブエミという結果になった。
マクラーレンは予選での速さが光るものの、決勝での速さはポルシェ勢、ジャガー勢に押され気味だ。エネルギーマネージメントに課題がありそうだ。
一方、ニッサンワークはサッシャが8位フィニッシュでポイントを獲得した。ナトーは15位。サッシャはシーズン8の最終戦に急遽出場した経緯はあったが、実質新人だ。それでニッサンワークスナンバー23号車を操り3戦目でのポイント獲得は上出来と言えるだろう。
次戦は2月11日インドのハイデラバードで第4戦が開催される。インドでの開催は初開催となり、どんなレースになるのか?楽しみだ。