【ヒョンデ】地域特化EV・SDV戦略・積極投資…2030年までに世界555万台を目指す

ヒョンデ・モーターは2025年9月22日、韓国本社で投資家向けイベントを行ない2030年に向けた成長戦略を発表した。

営業利益率の目標

このイベントは、投資家やステークホルダーに向けて、中長期的な戦略を共有する場として開催され、製品拡充、生産体制の強化、そして技術革新に対する強いコミットメントが示された。

ホセ・ムニョスCEOは、戦略的な製品拡大、先進的な電動化技術、そして自動車体験を再定義するソフトウェア定義型機能を通じ、ヒョンデをグローバルなモビリティリーダーへと変革させていくと語った。

「自動車業界が未曾有の変革期を迎える中、ヒョンデは魅力的な製品群、柔軟な生産体制、技術リーダーシップ、優れたディーラーネットワーク、そしてグローバル規模という独自の強みを兼ね備えており、競争に勝ち抜く絶好のポジションにあります。当社はあらゆるセグメントで電動化モデルを提供し、主要市場での現地生産を推進し、ソフトウェア定義型車両から次世代バッテリーに至るまでの革新的技術を活用しています。迅速な適応力、Hヒョンデ・グループの50社以上の関連会社の総合力、そしてお客様への揺るぎないコミットメントによって、当社はステークホルダーに対し大きな価値を提供し続けます」

2030年までに世界555万台体制を目指す

ヒョンデは、2030年までに世界販売555万台を達成する目標を改めて表明。そのうち電動化車両は全販売台数の約60%にあたる330万台に達する見込みで、特に北米、欧州、韓国市場での大幅な成長が期待されている。

車種ラインアップの拡大

グループは、2030年までにハイブリッド車のラインアップを18車種以上へと拡大する計画で、2026年からは「Genesis(ジェネシス)」ブランドにもハイブリッドモデルを投入する。また、次世代「TMED-II」技術を採用した新型ハイブリッド・システムを投入し、さらなる性能向上と燃費改善を目指している。

さらに、2030年までに北米市場で初の中型ピックアップトラックを投入する予定だ。2021年に「サンタクルーズ」を導入して以来、北米市場で培った経験とブランド認知を背景に、米国自動車市場の中心的セグメントでの存在感拡大を図ることにしている。

EV戦略

EV戦略では、各地域市場に特化したモデルを展開する計画だ。
・欧州市場向けには「IONIQ 3」を導入し、大衆市場をターゲットに次世代インフォテインメントシステムを搭載。
・インド市場では、現地ドライバーのために特別に設計されたインドでの初のEVを投入し、現地サプライチェーンも活用する。

・中国市場には現地生産の「エレッシオ SUV」とCセグメント電動セダンを導入し、中国市場での存在感を強めることにしている。

これらの市場で新型EVは、現在の「IONIQ 5」、「IONIQ 6」、「IONIQ 9」を含む既存EVラインアップを補完・強化し、多様な市場の消費者に幅広い選択肢を提供する。

また2027年からは、レンジエクステンダーPHEVを投入予定だ。高性能バッテリーとモーターを組み合わせ、最適化されたバッテリーとエンジンの統合により、航続距離600マイル(約960km)を実現し、EV同様の走行性能を可能にする。ヒョンデ独自のレンジエクステンダーPHEVは、従来型とは異なり内製の高性能バッテリーを活用し、バッテリー容量を半分以下に抑えながらフルEV並みの性能を発揮。優れた航続距離と走行性能を両立し、航続距離の不安を解消する役割を担う。

さらに高性能EVブランド「N」は、2030年までに7車種以上へと拡大し、年間10万台以上の世界販売を目標としている。新型「IONIQ 6 N」は、3種類の温度最適化モードや独自のNフィーリング技術を搭載し、高性能EVの新たな世界観を提供する。

また、バッテリーの革新も推進される。バッテリーは耐久性、コスト効率、安全性を高めるため、顧客中心の設計思想に基づいた改良を継続している。

そしてヒョンデ製のバッテリーは2027年までに業界をリードする成果を実現する計画だ。製造コストを30%削減し、エネルギー密度を15%向上、充電時間を15%短縮することを目指し開発されている。

これによりEVの競争力を飛躍的に強化。ヒョンデはすでに25万マイル(約40万km)以上走行した車両を含む5万台以上のIONIQ 5の耐久データを分析し、大多数の車両が90%以上のバッテリー性能を維持していることを確認しているという。

バッテリーの安全技術では、走行・充電・待機の各状態においてリアルタイムで予測診断を行なう業界最先端のバッテリーマネジメントシステム(BMS)を導入。2026年からはクラウド型BMSを展開し、多様な車両環境から収集したデータを独自の高度モデリングで解析し、より迅速かつ精密な診断を可能にする。また、車両側での区画隔壁、超高安全リレー、耐火シールド、安全ベントなど複数の専用安全層により、熱暴走や火災リスクを抑制できるようにしている。

燃料電池技術においてもヒョンデは業界をリードしており、累計7万3000台の燃料電池車を販売。商用専用用途に向けた次世代燃料電池システムを開発し、高効率・高耐久・高出力を実現して、未来のモビリティ需要に応えるとしている。

商用車分野では、北米市場でのポートフォリオを拡大させる。既存の「シエント 燃料電池トラック」や「ヒョンデ・トランスリード」トレーラーに加え、電動大型バン市場へも参入予定だ。

積極的な投資計画

投資では、8月に発表した投資計画の一環として、米国ジョージア州の工場において、2028年までに年間生産能力50万台を達成する生産能力が実現される。生産モデルはハイブリッド車と電気自動車に特化し、総額27億ドルを3年間で投資。これにより、直接・間接を含め約3000人の新規雇用を創出する。

また、2030年までにアメリカで販売する車両の80%以上を現地生産とすることを目指しており、サプライチェーンにおける現地調達比率も60%から80%へと引き上げる計画だ。

韓国も現状ではアメリカへの自動車輸出には25%の関税がかけられているため、アメリカにおける現地生産を大幅に拡大させる計画を立てているのだ。

グローバルでは、2030年までに年間120万台の追加生産能力を確保する予定としている。内訳は、ジョージア工場から50万台、インド・プネのマルチモデル輸出拠点から25万台、蔚山の専用EV工場から20万台を見込んでいる。さらに、サウジアラビア、ベトナム、北アフリカなどのノックダウン生産拠点から25万台を追加。特にサウジアラビア工場は2026年第4四半期に稼働を開始予定で、「サウジアラビア」製の旗印のもと、次世代ロボティクスと現地生産体制を導入し、年間5万台の生産能力を備えるとしている。

ソフトウエア管理生産とソフトウエア・ディファインド・ビークル

このような生産規模の拡大は、ソフトウエア・ディファインド・ファクトリー(ソフトウエア管理型工場)技術を全面的に導入することで実現される。この新生産技術はシンガポールにあるヒョンデ・イノベーションセンターが起点となり、グローバルに展開される。ソフトウエア・ディファインド・ファクトリーは、高度なロボット自動化システムを導入し、生産システム全体での予知保全、デジタルシミュレーション、自律診断が可能となる。

ヒョンデは、ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)への移行も加速させている。その基盤となるのは、ソフトウェアとハードウェアを分離し、開発効率と拡張性を最大化するCODA(Computing & Input/Output Domain-based E&E Architecture)だ。これを支えるのが高性能ビークルコンピューター(HPVC)とゾーンコントローラーであり、配線の複雑さを軽減し、追加ハードウェアを不要とすることができる。

SDV戦略の中核は、車載分散型OS「プレオス」だ。迅速なソフトウェアアップデート、パーソナライズ機能の強化、安全かつ柔軟な運転体験を可能にするOSだ。ハードとソフトを分離することで、多様なハードウェアに対応するプラグアンドプレイ環境を実現し、セキュリティや機能更新のスピードを加速させることができる。

さらに、次世代インフォテインメントシステム「プレオス・コネクト」を2026年第2四半期から順次展開予定としている。マルチウィンドウ機能や、ユーザープロファイルに基づくパーソナライゼーション、サードパーティアプリの車内マーケットプレイスなどを備え、新たなサービス収益を目指している。

同時に、AI技術もSDVビジョンにおいて重要な役割を担っている。「アトリア AI」により、エンド ツー エンド技術を出現し、高精度地図を必要としない自律走行を実現。さらに「グレオ AI」により直感的な音声ベースの対話機能、AIアシスタント機能を獲得。またこれは大規模データ解析を活用し、フリート管理機能も実現することができる。

ジェネシス・ブランド

ラグジュアリーブランド「ジェネシス」は、設立10周年を迎え、着々と成果を上げている。累計販売台数は8年未満で100万台に到達し、20以上のグローバル市場で二桁の利益率を維持。プレミアム自動車ブランドとして確固たる地位を築きつつある。

ジェネシスは2030年までに年間販売35万台を目指し、米国、欧州、中東、韓国、中国、さらに新興市場における存在感を拡大していく。製品ビジョンには、ラグジュアリーSUV「X グラン エクイター」を始めとする新たなラグジュアリー・モデルやウルトラ・ビスポーク車両などが含まれ、ラグジュアリーブランドとしての位置づけを一層強化していく。

欧州市場では最大20カ国への展開を目指すと同時に、米国での現地生産やEREV(レンジエクステンダーPHEV)の投入を通じて主要市場での基盤を強化。次世代プラットフォームはマルチエネルギー対応とCODAアーキテクチャによるSDVインテリジェンスを実現しつつ、Gブランドの「しなやかで力強い走りのDNA」を発展させていく。

また2026年からジェネシス・レーシングとしてFIA世界耐久選手権(WEC)、2027年にIMSAスポーツカー選手権へ参戦する予定だ。こうしたステージで得られた技術をブランド全体の車両開発に活用していく計画としている。

パートナーシップ

ヒョンデは、アメリカで米国ではWaymoと協業し、完全自動運転技術を搭載した「IONIQ 5」プロトタイプがWaymo車両として公道試験を開始。2025年は自動運転モビリティ戦略をさらに前進させるとしている。

またアメリカのGMとの協業により、2028年以降、共同開発車両5モデルを投入予定だ。生産が本格化すれば、年間販売台数は80万台を超える見込みとなっている。ラインアップには、北米向け電動商用バンに加え、中南米市場向けの小型車、コンパクトSUV、小型・中型トラックが含まれている。

この他に、Amazon Autoとパートナーシップを締結し、ブランド認知度の向上や販売コンバージョンを促進し、Amazonの高い顧客満足度を活かして新たな顧客層にアプローチする。さらに、ファイナンスオプションやアクセサリー販売、オフライン販売の可視性向上を通じてディーラーの収益性改善を支援していく。

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ヒョンデ モビリティ ジャパン 公式サイト

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