2019年1月30日に、世界の自動車メーカー&グループの2018年の世界販売台数の結果が出揃った。注目の首位争いは、フォルクスワーゲン・グループが3年連続で世界一の座を確保した。
フォルクスワーゲン・グループは、2018年に前年比0.9%増となる1083万台の車両を販売し、過去最高の販売台数を記録した。南米、ヨーロッパ、アメリカ、中国を含む世界の数多くの市場で販売台数が増加し、一部のマーケットでは市場シェアも上昇。各グループブランドの新型車攻勢が成功したことで、中国における不安定な経済情勢やヨーロッパにおけるWLTPへの切り替えによる影響といった地域的なリスクをカバーし、販売台数を増加させている。
北米、ドイツを除く全マーケットで成長
特にグループの新しいSUVモデルが成長の原動力となっており、フォルクスワーゲン、シュコダ、セアト、ポルシェ、ランボルギーニの各ブランドは、販売台数の新記録を達成している。
ーーフォルクスワーゲン・グループセールス責任者のクリスティアン・ダールハイム
「私たちの第一の目標は新記録を達成することではありませんが、この良い結果には大変満足しています。特に下半期には、多くのチャレンジをしましたが、優れた製品およびお客様から寄せられた厚い信頼により、今回の販売記録を達成することができました。不安定な地政学的情勢を考慮すると、弊社の事業は2019年も昨年と同様に強い逆風に直面するでしょうが、フォルクスワーゲン・グループは、今後の課題に確実に対応できる体制が整っていると確信しております。未来に向けて、自信を持って取り組んでいきたいと思っています」と語っている。
一方、ヨーロッパでは2018年、前年比1.2%増となる438万台を販売した。特に中央ヨーロッパ、東ヨーロッパで伸びを見せた。これらの地域では前年比7.1%増となる79万7200台の車両を販売。この販売台数の増加は、前年比19.8%の増加を記録したロシアの好調な業績によるものだ。また、西ヨーロッパでは下半期に新しい燃費基準であるWLTP基準への切り替えが実施されたことによる影響が大きくあった。しかしながら、フォルクスワーゲン・グループは前年とほぼ同レベルの358万台を販売。ドイツにおける販売台数は、前年と同レベルの128万台だった。
北米では市場によって明暗が分かれた。63万8300台を販売した米国(前年比+2.1%)および11万8500台を販売したカナダ(同+3.7%)では成長したものの、メキシコの販売台数は前年比15.6%の減少となった。結果的に北米では対前年比2.0%減となる95万6700台の販売となった。
南米における2018年度の販売は、非常に好調だった。この地域では前年比13.1%増となる59万台の車両を販売し、グループ全体の好調な業績に大きく貢献している。特にブラジルは前年比30.4%増となる40万1700台を販売し、前年比22.4%減の11万8600台となった経済不況下のアルゼンチンの販売の落ち込みをカバーしたばかりか台数は増加している。
アジア太平洋地域では、米国との貿易摩擦の影響により下半期に全体的な景気が停滞した中国市場のマイナスの影響にもかかわらず、成長を遂げ、455万台の車両を販売した。しかしながら中国では、消費者による買い控えの影響により、アジア太平洋地域全体の販売台数は前年度を下回った。しかし、フォルクスワーゲン・グループだけは前年比微増となる421万台の車両を販売して、市場シェアを拡大することに成功している。
なお、フォルクスワーゲンの日本での販売は2018年1〜12月で5万2000台で、前年比106%と増大した。輸入車としてはメルセデス・ベンツに次ぐ2番手だが、メルセデス・ベンツが前年比99%と足踏み状態のため、その差は縮まっている。なお日本の輸入車市場はメルセデス・ベンツだけでなくBMW(97.1%)、アウディ(93.4%)と、3社ともに微減となっている。日本におけるフォルクスワーゲンは、ディーゼルモデルの投入、新型ポロ、新型ティグアンの発売などが販売台数を伸ばした要因だ。
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ルノー・日産・三菱アライアンスが2位に
2018年1月30日に発表されたルノー・日産・三菱アライアンスの世界販売台数は1076万6875台で、フォルクスワーゲン・グループに約7万台の差で2位に付けている。なお小型商用車(LCV)の合計販売台数は13.5%増の200万台となり、ルノー、日産ともに力を入れているこの部門も成功している。
アライアンス3社の中でも、2018年のルノーの年間販売台数は前年比3.2%増の388万4295台、日産は世界で565万3683台を販売し、2018年暦年は2.8%減となっている。三菱自動車は前年比18.3%増の121万8897台を販売した。このデータから、ルノー、三菱の成長が他メーカー、グループと比べても際立っている。一方、日産はアメリカ市場でのセダン系車種の不振が影響している。もちろんアメリカでのセダンの不振は日産だけにはとどまらないが。
特に好調なLCVは、ルノーの「カングー」、「マスター」、「トラフィック」、日産の「ナバラ」、「テラ」、三菱自動車の「トライトン」が販売を伸ばした。共同開発や共同生産を通じLCV市場のプレゼンスの拡大を狙う戦略は、アライアンスの中の柱の一つとなっている。
電気自動車は、2018年はルノー「ゾエ」や日産「リーフ」の販売が牽引し、2010年以降のEVの累計販売数が72万4905台となるなど、ゼロ・エミッションのリーダーとしてのポジションも確保している。
車種ではルノーの「クリオ(ルーテシア)」、「キャプチャー」、「サンデロ」、日産の 「エクストレイル/ローグ」、「セントラ/シルフィ」、三菱自動車では「エクリプス クロス」や「エクスパンダー」などの好調に支えられ、2018年の年間販売台数は前年比1.4%の増加となっている。また三菱の日本市場での販売も4万3000台で、前年比136.6%とエクリプスクロスの投入で上向いている。なおルノーは日本での販売台数は7253台で前年比101.9%と微増。日産は日本市場では、e-POWERモデルが好調なため、2018年は41万4000台で、前年比105.3%と好調だ。
2018年は、中期計画「アライアンス2022」の重要な柱であるコモン・モジュール・ファミリー(CMF)プラットフォームを活用したルノー「クウィド」を複数の市場で販売開始し、CMFプラットフォームをベースとした車両の販売は更に拡大。また、ルノー、メルセデス・ベンツとプラットフォームを共有する日産のピックアップトラック「フロンティア」の生産も増加している。
なお中期計画「アライアンス2022」では、ルノー・日産・三菱自動車は、引き続き2022年末までに年間のシナジーが100億ユーロに達すると見込み、4つの共通プラットフォームで900万台以上の車両を生産し、共通パワートレーンの使用を全販売車両の75%まで拡大する計画だ。さらに計画では12車種の新型ゼロ・エミッションEVを発売し、異なるレベルの自動運転技術を40車種に搭載するとしている。
アライアンスを率いていたカルロス・ゴーン氏の逮捕により、アライアンスの行方がどうなるか不安視する意見もあるが、現状でのアライアンスの効果は絶大だといってもよいだろう。またルノー側はアライアンス3社の経営の統合化を目指していると言われるが、その背景にはルノーの業績が好調で、ルノーがリードする形で3メーカーのグローバル市場での分担を明確化する狙いがあると考えられている。
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トヨタの動向
トヨタ・グループは2018年暦年のグローバル生産台数は、トヨタが888万台(商用車含む)、ダイハツが146万7000台、日野が21万5000台、グループ合計で1057万台で、グループとしてのグローバル販売は1059万台だ。トヨタ、ダイハツ、日野ともに前年を上回っている。
しかしトヨタの国内販売は95.8%、アメリカ市場では99.7%で、グローバル販売で101.7%と、かろうじて前年を上回っている。一方でダイハツは東南アジア市場で順調だ。
トヨタは日産、ホンダと同様にアメリカ市場に依存する割合が多いが、そのアメリカ市場は2017年が販売のピークで、2018年からは緩やかに減速すると見られていたが、実際の2018年の市場は2017年比で微増している。
だが、トヨタはアメリカ市場で-0.3%、日産は-6.2%、ホンダは-2.2%と減少傾向で、これに合わせて販売奨励金も増大している。もっともアメリカ市場では2018年はGM、フォード、トヨタのビッグ3が軒並みに苦戦し、伸びたのは日系メーカーではスバル(+5%)、マツダ(+3.7%)、三菱(+13.9%)、地元勢ではFCAが+8.5%でトヨタに肉薄しつつある。
中国に次ぐ巨大市場のアメリカではピックアップトラックがナンバーワンの伸びを示しており、これにSUVが続きこれらのカテゴリーで新車販売の半分以上を占め、セダン系の凋落が著しい。トヨタに限らないが、グローバル市場に向けて車種カテゴリーの再編成は待ったなしとなっている。