この記事は2018年12月に有料配信したものを無料公開したものです。
世界の自動車メーカーは、現在、2030年頃を目標に本格的な電動化を進めている。もちろん電動化の中には純電気自動車、燃料電池車、PHEV、ハイブリッド、マイルドハイブリッドが含まれ、多様な手段で電動化が行なわれる。
調査機関の予測では、2030年時点では約50%のクルマが電動化されると予想され、大容量のバッテリーを搭載する電気自動車や水素で発電しながら走行する燃料電池車の比率は10%程度とされている。それ以外の車両は電動化とはいえ内燃エンジンを搭載し、そのうちの約50%は内燃エンジンだけで走行するクルマであり、内燃エンジン+電動化を組み合わせたクルマの合計は、2030年時点で90%と予測されている。
エネルギー源とエネルギー密度
20世紀は石油の世紀といわれているが、人類とエネルギー源は切っても切れない関係にある。原始人のエネルギー源は食料だけだったが、その後に「火」が発明され、暖房や調理に利用され始めた。この火のエネルギー源は薪である。産業革命以前は風車、水車が経済活動に必要なエネルギー源であったが、産業革命で蒸気機関が登場すると石炭が重要なエネルギー源となった。石炭は現在でも発電に使用され、依然として重要なエネルギー源となっている。
しかし19世紀後半から20世紀にかけて、内燃エンジンが登場すると新たなエネルギー源として石油が登場する。内燃エンジンだけではなく船舶のボイラー用燃料としても石炭より取り扱いのよい石油は注目され、20世紀は石油の世紀と呼ばれるようになっている。
石炭や石油は化石燃料と呼ばれ、かつての薪燃料や風車、水車などは、現代風に言うところの再生可能エネルギーと比べて、CO2を発生させることと、地中から採掘される有限のエネルギー源とされていることに課題がある。その一方で、エネルギー密度で考えると石油製品の代表のガソリンは、1万2000wh/kg、クルマの電動化のエネルギー源となる水素は(200気圧)で165wh/kg、鉛電池で35wh/kg、ニッケル水素電池で70wh/kg、リチウムイオン電池で150wh/kgであり、原子力用のウラン燃料を除けば格段にエネルギー密度が優れていることがわかる。
また、ここでガソリンと比較した各種の電池類は、作られた電気で充電され、それをエネルギーとして使う2次エネルギーであるという宿命を持っているわけだ。また、電気自体も燃焼による発電や送電といったロスを含むと、エネルギー効率は30%と言われており、その低いエネルギー効率で作られた電気で充電し、そこから初めて電池はエネルギーを発揮しているわけだ。
現在の内燃エンジンは、もはや枯れた技術といわれるが、きわめてエネルギー密度が高い燃料を使用している点で、様々な動力源の中でも依然として優位に立っているわけで、バッテリー搭載の電気自動車が主役に躍り出ることができない理由なのだ。
石油は枯れるのか?
石油は地中にある資源で、有限であり、現在のような使用を続ければまもなく枯渇する、という説は1960年台から叫ばれ、1970年台には30年後に枯渇すると言われていた。しかし正確に言えば地中のすべての埋蔵量は現時点では測定不可能なため、現在の技術と価格の条件で採掘可能な資源量を可採石油埋蔵量と呼んでいる。つまり、コストと技術が上がれば、採掘できていないで眠っている原油が多くあり、採掘が可能になったとすれば、可採石油埋蔵量は増大するということだ。
しかし、現在の技術革新による新規油田の発見や採掘技術の進歩、原油価格の上昇などによる採算性の向上などから、最近の可採年数(埋蔵量)は50年~60年と言われている。ただし、この可採年数は技術の進歩や原油価格の上下によって変動する試算値で、石油が枯渇する年数という意味ではない。
石油採掘の技術革新としてはGPSの活用、三次元地震探査システム、水平掘削技術の採用、水圧破砕法の開発によるシェールオイル/ガス採掘、深海洋石油開発システムの開発などが挙げられる。アメリカにおいては、水平掘削技術と水圧破砕法により産出されるシェールガスがエネルギー需要の20%をまかなうまでに達しており、OPEC(石油輸出国機構)を抑制する戦略的な役割も担っている。
可採年数(埋蔵量)は、原油価格に大きく左右される。
原油価格が安い時代は、直立した採掘井戸で地中から原油を汲み出す低コストな原油しか採掘されず、埋蔵量は減少する。しかし現実は、この低コストの採掘技術を使う中東やロシアの原油が埋蔵量として語られ、可採年数は中東地域やロシアの埋蔵量に限定されているわけだ。
しかし、原油価格が1バーレル当たり100ドルを超えるような高価格になると、最新技術での採掘が可能になり、従来では採算が合わなかった場所からの石油採掘ができることで、計算される埋蔵量は大幅に増大するということになる。