内燃エンジンを支える石油、ガソリンを考える

石油の需要

世界の石油需要は、中国、アジア、その他新興国が経済成長により需要が拡大し、予測としては2017年から2023年までで世界規模での需要は約7%増加すると見られている。これに対して供給面では、非OPEC諸国への供給は2023年には約9%増加するため、需給関係のバランスは維持されると考えられている。
世界の石油需要の見通し

一方最近の原油価格は、2017年には1バレルあたり40~50ドルと低水準が続いたが、中東問題が依然として行方が見えず、さらにOPEC諸国が減産の維持を発表し、高値傾向に転じた。また2018年に入るとアメリカがイランと対立し、経済制裁に転じたため、さらに高値要因を抱えることになっている。
主要消費国の一次エネルギー消費構成比

グローバルで見た石油の需給関係では、アジア諸国や中東を中心とする発展途上国の需給が増加傾向にあり、特に中国、インド、中東の需要が拡大し、2035年には中国が世界最大の石油消費国となる。また、2025年頃から需要の伸び率はインドが最大になるとされているのだ。一方、アメリカはシェールオイル生産量の増加を受け、2020年代後半には石油の純輸出国になり、OPEC諸国に対して大きな対抗力を持つことになる。
一次エネルギーの国内供給推移

日本では2016年度で、6年連続で総エネルギー消費量が低減しており、石油の需要も比例して低下している。電力エネルギー、天然ガスは微増しており、火力発電用としては天然ガスと石炭が主流だ。2016年時点では国内の発電用のエネルギー源としては石炭が29%、天然ガスが45.2%を占め、再生可能エネルギーが18%で、石油がわずか6.1%だ。
石油輸送タンカー イメージ

日本は原油をほぼ全て輸入しており2017年度は前年比-3%となっている。輸入先はサウジアラビア(全輸入量の39.4%)、アラブ首長国連邦(同24.8%)、カタール(7.6%)などで、上位2ヵ国で全輸入量のおよそ6割を占めている。言い換えれば、この地域で紛争が勃発した場合、日本は多大な影響を被ることは明らかで、地政的なリスクを抱えているのが現状である。

また日本の2017年度の石油需要は原油から加工・精製された燃料油の合計で前年度比1.2%減となった。灯油は前年度比2.4%増、通年で物流需要があった軽油は前年度比1.5%と増加したが、ガソリンは前年度比1.3%減、ジェット燃料油は前年度比5.2%減、A重油は前年度比4.0%減、B、C重油は大きく減少し、前年度比15.1%減となっている。石油需要は経済活動と連結しているので、少子高齢化、製造業の製造工場の海外移転などが進む日本の現状を考えると石油需要の低減はやむを得ないというほかはない。
電源別発電量の推移

深刻なガソリンスタンド数の減少

日本の石油需要は1995年~2000年頃をピークに、低減傾向に転じており、この傾向は今後も続くと予想されている。またガソリンの需要は2005年頃から下降を開始している。これと連動して、国内のガソリン補給インフラであるガソリンスタンド数が減少している問題は深刻だ。

国内のガソリン販売量は、人口減少、クルマの燃費向上など構造的要因により、減少の傾向が続いている。さらに、今後は電気自動車やプラグインハイブリッド、燃料電池自動車(FCV)などの次世代自動車の増加も見込まれ、ガソリンスタンド経営の展望は明るくない。

ガソリンスタンドは、規制緩和により1998年4月に有人セルフ方式が導入されて以来、フルサービスを行なうスタンドに比べて効率的なためセルフ式スタンドが増加し、2017年度末には9928ヵ所となり、ガソリンスタンド全体に占める普及率は約32%になっている。最近では、元売・特約店・販売店が独自にセルフ化に取り組んでいる一方で、販売量の減少が止まらず、セルフ式スタンドであっても閉鎖される店舗も現れ始めセルフ式スタンドが増加するとはいえなくなっている。
ガソリンスタンド イメージ

こうした環境変化に対処するため、元売会社、販売業界が一体となって、ガソリンスタンドの付加価値販売の強化と経営の効率化を推進しており、石油各社では、SSにおける新サービスとしてコンビニエンスストアや他業種の併設店舗の設置、カーリースの取り扱いなどを始めている。だが、ガソリンスタンド数の低減の歯止めとはなっていないのが実情だ。

ガソリンスタンド数のピークは1994年度末で6万ヶ所、2000年には全国でガソリンスタンドは5万3000ヶ所となり、2017年末の時点では3万ヶ所まで減少しているのだ。この結果、ガソリンスタンド過疎地が増大するという問題が浮上してくる。

生活圏内のガソリンスタンドが少なくなることで、特に寒冷地で生活必需品となっている灯油や、農林業用車両の燃料の供給が難しくなっている地域が増加しており、17年度末には市町村内のガソリンスタンド数が3ヵ所以下の過疎地は312市町村となり、2017年度末から10市町村増加している。地域内でガソリンスタンドが存在しない市町村は2017年で10ヶ所あり、今後はさらに増加すると予想されている。
給油所およびセルフ給油所数の推移

もちろん都市部でも市街地のガソリンスタンドがなくなり、主要な街道部にガソリンスタンドが集まり、かつてのように、どの地域でも不安なく給油できるような状態はもはや期待できなくなっている。

ガソリン車やディーゼル車など内燃エンジン車の時代はまだまだ長く続くことは明らかだが、原料となる石油事情はグローバルレベルでの影響を受けやすく、日本国内ではガソリンスタンドという大きなインフラが揺らぎつつある現状なども考えると、政府レベルでの抜本的な政策が求められる時代になってきている。
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