雑誌に載らない話vol217
2018年1月18日、フォルクスワーゲン・グループは2017年の乗用車販売台数を発表し、前年比4.3%増となる1074万台となり、最高記録を打ち立てた。トヨタの正式販売台数の発表はまだ行なわれていないが、1030万台程度と見込まれ、フォルクスワーゲン・グループがトヨタを上回ることは確実になった。
■世界No1はフォルクスワーゲン・グループかルノー・日産・三菱連合か?
フォルクスワーゲン・グループが世界一になるかどうかはルノー・日産・三菱連合の販売データの発表を待たなければならない。2017年上期は、ルノー・日産・三菱がフォルクスワーゲン・グループを上回り、トヨタが3位となっているからだ。だから、このルノー・日産・三菱連合がフォルクスワーゲン・グループを上回り、初の世界ナンバーワンとなるのか、じつに興味深い。
フォルクスワーゲン・グループは、乗用車ブランドが4.2%増の623万台とグループを牽引し、モデルチェンジしたSUVのティグアンは38%増大。1車種で72万台を販売し、大成功のモデルとなった。アウディは過去最高を更新したものの0.6%増の187万台と伸びは少ない。
地域別では、中国が5.1%増の418万台に達した。本拠地であるヨーロッパ全体での販売台数432万台に一国で迫るほどの爆売れといえる。だから、この中国では日本メーカーもまったく歯が立たない状態というわけだ。
2017年、EU主要18ヶ国の乗用車販売台数は、欧州自動車工業会が発表したデータでは、16年比2.5%増の1432万台。4年連続のプラスで1400万台超えはリーマン・ショック前の2007年以来で、市場動向は悪くない。
ディーゼルゲートで一番大きな問題を抱えたアメリカ市場では5.8%増、ロシアは14.8%増、南米が23.7%増と軒並み好調だ。米国はティグアン、アトラス(3列シートのフルサイズSUV)、トゥアレグという3本立てのSUVモデルで販売を伸ばしている。
ロシアや南米は現地の景気の回復傾向の波に乗り、販売を拡大し、これらの地域の景気が本格的に回復すればフォルクスワーゲン・グループの販売は、他社をより大きく引き離す勢いになると予測できる。
1国で100万台を超える市場規模を持つ5つの国では、イタリアが7.9%増、スペインが7.7%増と景気の回復傾向にあり、最大市場のドイツは2.7%増、フランスは4.7%と堅調だった。唯一、イギリスのみが5.7%減と減少傾向にある。
景気も緩やかに回復しつつあるヨーロッパでのメーカー別販売順位は、首位がフォルクスワーゲン・グループで販売台数は1.2%増、2位はオペル/ボグゾールを買収したフランスPSAグループで、ヨーロッパで238万台を販売。グローバルでは362万台販売し15.4%増しの26.6%増、3位はグローバルで376万台(商用車含む)を販売したルノーで5.4%増となっている。
一方でPSAグループは、クロスオーバーSUVのラインアップを充実させたこととオペル/ボグゾール買収が好結果を生み出している。日本車はハイブリッド車が好調のトヨタが10.4%増、日産は2.3%増。日本車全体のEU地域でのシェアは12.7%だった。
■2017年の日本の自動車販売は
2017年の軽自動車を含む新車販売台数は、前年比5.3%増の523万4166台となった。増加するのは3年振りのことで、軽自動車を除いた登録車の販売台数は4.5%増の339万824台となった。軽自動車、登録車を合わせ500万台の市場規模は確保したといえる。
なお2017年12月の軽自動車を含む乗用車の販売台数は、前年同月比0.8%減の39万4254台で、3ヶ月連続の前年割れとなっている。登録車の販売に関しては、前年同月比で1%減の26万2345台だった。無資格検査問題があった日産は22.8%減、スバルは6.7%減となった。またトヨタも1.9%減と振るわない。そして軽自動車全体でも0.5%減の13万1909台と9ヶ月月振りに減少している。
いずれにしても、2017年11月から12月にかけて日産、スバルの無資格検査問題が発生し、販売にブレーキがかかったとは言え、年間では微増し軽自動車は6.8%増の184万3342台と好調だといえる。また輸入車の販売台数は30万台を超え、こちらも堅調といえる。
2017年1月~12月の年間での販売台数ランキングでは、トップはプリウスが死守したが、前年比で見るとかなり販売は鈍化している。逆に日産ノートが、トヨタ・アクアを抜き2位に浮上。もし無資格検査問題がなければ、もっとプリウスに肉薄したしたのではと思われる。
トヨタ車では新たに登場したC-HRが大ヒット作となり、4番手に付けた。またホンダではフリードが5位と大健闘し、6位のフィットとともにホンダの国内市場を支える車種であることが明らかになった。
軽自動車は、相変わらずホンダN-BOXの独走が際立っている。N-BOXは2017年にフルモデルチェンジを行なったが、旧モデルも末期まで好調であり、N-BOXブランドの強さが印象的だ。ただし、ホンダの軽自動車はN-BOXだけの独走で、ダイハツのムーヴ/タント、スズキのワゴンR/スペーシアのようなコンビネーションではないのが面白い。つまりN-WGNは不調なのだ。
その結果、軽自動車全体ではダイハツ、スズキ、ホンダという順になり、ダイハツのシェアが31.9%、スズキが28.5%、ホンダは21.8%となっている。なお日産/三菱のデイズ/eKは合算するとムーヴを上回り、モデル・イヤーとしては古い車種にも関わらず検討したといえる。
■輸入車の販売
輸入車ではメルセデス・ベンツが3年連続で販売台数首位を維持した。2017年新車販売台数は前年比1.2%増の6万8215台(2016年:6万7378台)で、2013年から5年連続で年間販売台数過去最高記録を更新している。またメルセデス・ベンツとは別カウントになるスマートも、2年連続で過去最高となる4638台を販売した。
メルセデス・ベンツの商品構成は、32車種166モデルを展開しており、多モデル・少量販売という特長が明確だ。輸入車の2位にはBMWが付けているが、BMW本体とMINIブランドの2万5427台を合算すると7万7954台となり、輸入車としてはトップとなる。
BMWブランド(乗用車)の販売台数は対前年比3.9%増の5万2527台で過去最高を記録。MINIブランドも対前年比3.6%増の2万5427台で過去最高と堅調だ。外国メーカー車モデル別新規登録台数のトップ10内はBMWグループが販売する6モデルがランクインしている。
MINIブランドは2015年に年間販売2万台を超えているが、それ以後も続伸し2017年に2万5000台を超えた。特に2017年はMINIクロスオーバーが好評で、販売を牽引した。
フォルクスワーゲン・グループジャパンは、前年比4%増の4万9036台となり、2014年以来3年振りに増加に転じた。いうまでもなくフォルクスワーゲンはそれまで輸入車トップを守ってきたが、日本では発生しなかったにもかかわらずディーゼル排ガス問題でイメージダウンし、販売力を弱めていた。
フォルクスワーゲンの2017年は、新型ティグアン、新型up!、そしてマイナーチェンジしたゴルフを投入した結果の巻き返しだが、2018年はパサートTDI、そして量販大本命の新型ポロが投入されるのでフォルクスワーゲンの2018年は昨年の実績をさらに上回ると予想される。
なお、輸入車ブランドで年間1万台を超えているのは、BMW MINIについでボルボ(1万6120台)、ジープ(1万102台)であった。