自動車メーカーと対等

雑誌に載らない話vol5
ある、ドイツ系ティア1(直接納入サプライヤー)企業の人から興味深い話が聞けた。それは、ドイツでは自動車メーカーとティア1とは対等な関係であって、ドイツの自動車メーカーをリードしてきたのはティア1だという自負がある、という話だ。

先日の読売新聞に出ていた豊田章男社長のインタビューで「IT技術化で仮想世界が取り込まれ、海外展開の中で仕事も細分化し、全体がどうなっているのかという感覚が鈍った」と発言している。つまり平行分業である、という認識が甘いということだろう。これはプリウスやレクサスなど、相次いだリコールトラブルに関しての反省だと想像できる。

また、インタビューはテスラモーターズとの提携を念頭においてインタビューされていて、つまり、EV自動車を作るベンチャー企業は、パソコンのようにパーツを集めて組み立てる作り方が特徴。一方、旧来の自動車メーカーは多くの下請けメーカーを抱え、下請け企業に製品を作らせる垂直分業を基本としている。

ドイツの自動車文化が始まった時を同じにして、ティア1が存在し、自動車メーカーと共同開発・研究してきた歴史がある。しかも日本のように系列企業ではなく、独立企業としてだ。

日本では垂直産業であったものが、EVやハイブリッドの誕生で平行分業にならざるを得なくなり、ようやくティア1の果たす役目の大きさをメディアが知り始めたのかもしれない。

とはいえ、われわれ自動車メディアであってもティア1に注目している媒体は少ない。たとえば、パラレル式のハイブリッドシステムであれば、コンチネンタルオートモーティブもZFも開発済みで、納入コストが合えばどの自動車メーカーでもすぐにHV車は製造できる。(そんな簡単じゃないか)

また、高性能スポーツカーに装備されるツインクラッチは、ZFやゲトラグなど数社が開発済みである。

しかし日本では「系列」企業で製品を作るという垂直思考が中心のようだ。雇用の問題など複雑なことになる可能性もあるので、単に技術をもっているティア1企業の台頭をあおるわけではないが、少なくともドイツでは自動車メーカーと対等であることを、多くのメディアが認識し、正確な情報を出していくことに注力したい。
文:高橋アキラ

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