三菱自動車の4WDへのこだわりを技術的に理解する記事がこちらで、今回はその技術を搭載した車両を雪上で走行させ、体感的にはどんな車両の動きになるのかをお伝えしよう。試乗したモデルは新型デリカD:5、アウトランダーPHEV、エクリプスクロスの3モデルで、モードの違いで明らかな動きの変化があり、安定方向の制御の時には徹底的に滑らない制御になり、スポーツ系のモードの時にはアグレッシブになるという違いがある。では早速車両ごとにその違いをお伝えしよう。
デリカD:5の新旧乗り比べ
デリカD:5は、ビッグマイナーチェンジを受け、フロントフェイスの大幅な変更で話題となっている。エンジンも新型のディーゼルエンジンに変わりミッションも6ATから8ATへと変更。こうした変更に伴い4WD制御の変更も行なわれ、新旧でその違いをテストすることができた。
モードは現行モデルも新型も「2WD」「4WD」「Lock」の3モードで変更はないが、ヨーレートセンサーを採用するなどの違いから制御変更が行なわれている。また、三菱の4WD制御の象徴でもあるS-AWCは、このデリカには搭載されていないものの、制御の考え方は常に4輪をコントロールする「AWC」で制御されている。
オフロードコースに雪が積もったコースでの試乗コースで、悪路走破性を主にテストすることができた。4WDモードでは、新型は少しのスライドもしないようなブレーキ制御とトルクベクタリングを行ない、安定性を高めている。ヨーレートセンサーは滑りの予測にも使われ、フィードフォワードされ前後のトルク配分を変更し、ブレーキをつまむことで滑らない制御になっている。これが現行モデルでは、若干の滑りを感じてから制御介入になるため、フィードバック制御されていることがわかる。
Lockモードでは前後のトルク変動でその配分量に違いがあるものの、こうした悪路で、その違いを感じることはできない。それだけ現行のデリカも高い走破力を持っているという裏返しでもあり、より精緻な制御を可能としたセンサーの搭載により、タイヤにかかる接地荷重コントロールがより細かくできるようになったということだ。だから、より限定的なテスト環境を作れば、その違いがあるかもしれないが特異なケースに限られるだろう。
アウトランダーPHEVにもスノーモード、スポーツモードを搭載
アウトランダーPHEVは前後にモーターがあり、高速走行以外はモーター走行する車両で、走行モードは「ノーマル」「Lock」「スポーツ」「スノー」「エコ」がある。テストは横滑り防止装置をオフでテストした。
ノーマルモードでの通常走行は前後のトルク配分が8:2で走行し、滑りを予測、検知すると55:45まで前後のトルク配分が変わる。ブレーキの介入は遅めで、ここはフィードバックだろうが、滑る瞬間にギュッとつまむ感触だ。しかし、雪上では非常に走りやすくハイスピードでの走行がしやすいモードでもあった。
Lockモードは通常、前後のトルク配分が7:3で、滑ると4:6へトルクベクタリングする。実は意図的に滑らせて走らせるような走り方をすると、このLockモードが走りやすい、という結果になった。それは滑った時、アクセルの反応がリヤ寄りになり、スライドコントロールがしやすいと感じるからだ。19年モデルはリヤモーターの出力を上げている効果がこうした場面で感じ取れた。
スノーモードはいうまでもなく安定方向で、ブレーキが繊細に働き、車両が滑らないように制御が入る。ノーマルではギュッとつままれる感覚だったが、このスモーモードではつままれている感触があまりなく、フィードフォワード制御されていることを感じる。
また、スノーモードの通常は8:2のトルク配分で走行し、滑りを予測、検知すると45:55に変化する。だが、その変化するタイミングがおそらく早めにトルク変動させ、車両の安定性を高めているのだろう。
スポーツモードはリヤ駆動が力強くなるモードで通常は7:3のトルク配分で、滑りの予測、検知により33:67に変化する。このモードはトルクの立ち上がりも性能曲線でいう急峻なトルクの出方に変わるため、アクセルの反応が敏感になり、雪上だとステア操作が忙しくなるほどリヤが動く。雪上のようにかなり低い路面μだと、スポーツモードでは走りにくかった。
エコモードは通常99:1で走行し、滑り出すと7:3にトルク変動するもののアクセルレスポンスが穏やかになるため、雪上を走るにはむかないと感じた。つまり雪上を一般走行する際、万が一の挙動変化に備えておく必要はあり、そういう意味からも反応を緩慢にしているモードのため、雪上ではおすすめしないモードだ。
エクリプス クロスはアグレッシブで楽しい
エクリプス クロスは「オート」「ノーマル」「スノー」「グラベル」の4つのモードで、オートは文字通り前後のトルク配分は自動で常時変動しているモードだ。通常は8:2で走行し、接地荷重が減ってくるに従い55:45までの間で変化している。ドライバーはそのトルク変動を感じることはなく、スムーズに走行できるが、意図的なスライドはやりづらく、少しのスライドを検知すると安定方向の制御でまっすぐの状態に戻されてしまう。
スノーモードは通常8:2のトルク配分から最大45:55まで変更され、目標ヨーレートと実際のヨーレートの差が小さくなるように制御されているので、車両の動きとしては滑らず安定感のある走行を体感する。
グラベルモードは「ラリーの三菱」なのか、オフロードを意味するラリー用語で、リヤ駆動が強くなるので、雪上スポーツ走行には最高に楽しいモードだった。通常は7:3で走行し、最大4:6へと変動する。スライドをさせリヤで曲げていく走り方が可能になるモードだった。
こうして三菱の4WDを体験すると安定方向の制御では、滑らずクルマの挙動変化が起こらないように制御されていることを実感する。またスポーツモードやグラベルモードなど、走りを楽しみたいというユーザーに応えるかのように扱えるのも魅力だ。そしてデリカD:5の圧巻の悪路走破力は本格クロカン4WDに匹敵するほどの性能で、対角離地対応TCL(トラクションコントロール)の効果も高いと想像できた。
安定方向の制御の時には徹底的に滑らない制御になり、スポーツ系のモードの時にはアグレッシブになるという違いを明確に使い分けている制御には感心するばかりの試乗だった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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