三菱エクリプスクロスにディーゼルエンジン搭載モデルが追加され、試乗してきた。2.2Lディーゼルターボに8速ATが組み合わされ、もともとの静粛性はそのままに、しっとりとした走りは車格をあげたような力強さをもったモデルだった。
高い静粛性
ここ数年のディーゼルエンジンの静粛性への進化は素晴らしく、ガソリンかディーゼルか区別がつかないレベルまでに進化している。この新たに搭載されたディーゼルエンジンは2.2Lターボで、個性的なSUVミニバン、デリカD:5にも搭載されているパワーユニットだ。車内で聞こえるアイドリング時の音は、ガソリンと比較すればやや音は大きいが、そもそも静粛性の高いエクリプスクロスだけに、走行時のエンジン音はかなり静かな印象だった。
試乗エリアは標高800m近辺の高原で、気づかないレベルのアップダウンはあり、ガソリン車であればキックダウンしたり、エンジン回転が高めに維持されるような道路環境だったが、低回転域からのトルクの立ち上がりがあるディーゼルエンジンの特性と8速に多段化されたトランスミッションとで、エンジン回転は常に2000rpm以下で走行できる。だから必然的に「静か」でもある。
また信号で停止した場合は、アイドリングストップも搭載しているので、そうした場合でも静かさはキープされ、乗り心地とあいまって気分がいい。
2018年3月に発売されたエクリプスクロスは、高い静粛性にこだわるというのは開発の狙いのひとつでもあった。とくにドア閉め音は高級車のような音になるように工夫され、そのための吸音材や制振材などが効果的に採用されている。そのため、走行時の静粛性も高いわけで、滑らかに感じる走行フィールはそうした静粛性からの影響もあるだろう。
そしてディーゼル搭載車でも同様にワンランク上と感じさせる走行フィールが実現しているわけだ。
三菱こだわりのS-AWC
高原の一般道の走行と同時に、ラフロードでのモーグル走行体験もした。ディーゼルモデルはすべてAWDで、三菱が掲げるS-AWCの考え方と技術が投入されている。センターデフを持たないAWDでFFをベースとしており、前後のトルク配分をコントロールしながら効率よく走行する。
また、低速での旋回などタイヤの内外輪の回転速度差が大きいと、抵抗感の大きい動きになりやすいが、100:0にもなるAWDであるためまったくその気配はない。
モーグルでは走行モードのAUTOとGRAVEL(不整地)の両方で走行してみたが、ノーマルタイヤでも走破するレベルの高い性能を体験した。また、アプローチアングル20.3度やデパーチャーアングル30.8度も確保されているため、かなりの段差も車体下部を擦ることなくクリアできるので、キャンプ場などへの出入り、移動では安心感が高い。
ちなみにフロントオーバーハングは955mm、リヤのオーバーハングは780mm、最低地上高175mmとなっている。
パワートレーン
4N14型ディーゼルエンジンのスペックは145ps/3500rpm、380Nm/2000rpmという大トルクでコンパクトSUVにカテゴライズされるエクリプスクロスには十分すぎるほどパワフルなエンジンだった。エクリプスクロスはコンパクトSUVに分類され、欧州で言えばCセグメントに属している。
燃費ではWLTCモードで市街地モードが11.0km/L、郊外モードが14.0km/L、高速道路が16.4km/Lというモード燃費になっている。
また、環境性能としてNOxやPMといった排気に関し、DPFを装備し、尿素SCRシステムを採用している。尿素水アドブルーの消費量はおよそ1.0L/1000kmということで、タンク容量は16L搭載しているため1万6000kmごとの補充という目安だ。
ガソリンモデルはCVTのトランスミッションを搭載していたが、このディーゼルモデルではアイシン製の8速ATを搭載している。この8速ATの制御では、アクセルをスパッと抜くと一時的にシフトアップを抑制し、再加速しやすいように制御している。またアクセルペダルの素早い踏み込みに対しては飛びギヤをして鋭い加速が得られる制御もある。さらに急激なブレーキングには自動でダウンシフトをするスポーティな制御がされているため、標高の高い試乗エリアでもストレスなく、そして力強く走行できた。
ボディサイズは全長4405mm、全幅1805mm、全高1685mmm、ホイールベース2670mmといった大きさで国内ではトヨタ・CH-Rやホンダ・ヴェゼルあたりがライバルになる。もっともエクリプスクロスはグローバル車であり北米がもっとも大きなマーケットであるため、開発目標とされたのは、ヒュンダイの「トゥーソン」であった。欧州であれば日産のキャッシュカイをベンチマークとして開発している。
そのためカーナビに関してはディスプレイオーディオが設定され、いわゆるナビは設定されていない。スマホ接続が前提であり、国内での使い勝手としては不満となるユーザーも多少いるかもしれないが、北米基準でみれば当然の装備ということになる。
まとめ
ディーゼル搭載のエクリプスクロスは、クリーンディーゼルの力強さと8速スポーツATの制御、そしてS-AWCの旋回性や走破力といったものを体験できた試乗だった。個性的なエクステリアデザインとあいまって、20代、30代の若い層からの支持もあるというエクリプスクロス。全体的にアクティブな傾向が強く、積極的にいろんな場所へ出かけていくユーザーには特に魅力的に見えるモデルという印象だった。<レポート:高橋明/Akia Takahashi>