【ランドローバー】新型レンジローバー・スポーツ試乗記 ランドローバーローバー至上中、最速である必要 レポート:髙橋 明

マニアック評価vol237

レンジローバー・スポーツがフルモデルチェンジを受け2代目として誕生した。プレミアムSUVクラスにおいてライバルに対してどういった特徴と魅力を持ってフルモデルチェンジされたのか、2013年11月30日に発売された新型レンジローバー・スポーツを箱根で試乗してきたのでそのレポートをする。

V型8気筒5.0LスーパーチャージドのAutobiography Dynamic
V型8気筒5.0LスーパーチャージドのAutobiography Dynamic

◆ポジショニング

プレミアムSUVは近年急激に人気の高まりを見せているカテゴリーで、ポルシェのカイエンやBMWX5、アウディQ5などがライバルとなるレンジローバー・スポーツである。デビューは2004年のデトロイトショーで「レンジストーマー」というコンセプトモデルで発表され、翌年に生産モデルとしてレンジローバー・スポーツはデビューしている。

レンジスポーツV6レンジスポーツリヤ

プレミアムモデルでは短いスパンでモデルチェンジを行なわないという流れに沿って、レンジレーバースポーツも2013年上半期まで生産が続いた。そして、今回2代目となるモデルが誕生した。2013年3月のニューヨークショーでワールドプレミアされた2代目レンジローバー・スポーツは早くも国内導入されたわけだ。

課せられたものは、レンジローバーらしく、ダイナミックパフォーマンス、乗り心地、長距離走行時の快適性を高い次元でバランスさせ、かつランドローバーブランドである以上必要絶対条件としてのオフロード性能、走破力は兼ね備える必要がある、というものだ。スポーツツアラーというプレミアムSUVクラスにあってライバルとは少し異なるモデルコンセプトを背負っているわけだ。

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開発は現行のレンジローバーの開発と並行して行なわれ、同じプラットフォームを使用。ボディもSUVでは珍しいオールアルミ構造で開発されている。初代と比較し240kgもの軽量化を果たしている。それでも2250kgはあるのだが。したがってレンジローバーとはいかに異なるキャラクターであるかを示すことも必要であり、そこは明確に異なっていなければならない。そのため、ひとつの例として、よりダイナミックなキャラクター付けとしてエンジンサウンドまで手を入れ、スポーティ度が増した創り込みを行なっている。同じプラットフォームを使用しながらも、レンジローバーに対して75%のパーツは変更されているというから、その違いは明らかだ。

インテリアコクピット

国内に導入されるモデルバリエーションは3モデルでエントリーモデルとなるのがレンジローバー・スポーツSEで798万円(5%消費税込み)。搭載するパワーユニットは340ps/450NmのV型6気筒3.0L+スーパーチャージドガソリンエンジンに8速AT(コマンドシフト付き)という組み合わせ。中間グレードにレンジローバー・スポーツHSEで903万円。ユニットはSEと同じだ。トップグレードがAutobiography Dynamic(オートバイオグラフィ ダイナミック)でV型8気筒+スーパーチャージドガソリンエンジンで510ps/625Nmというハイパフォーマンスを誇る。もちろんZF製の8速AT(コマンドシフト付)を採用し、1260万円というプライスになる。ちなみに燃費だがJC08モードでV6型3.0Lは8.4km/L、V型8気筒は7.3km/Lだ。ボディサイズは全長4855mm×全幅1985mm×全高1800mm、ホイールベース2920mmとワイド感たっぷりのサイズだ。

V型6気筒スーパーチャージドのSEグレード
V型6気筒スーパーチャージドのSEグレード

◆デザイン

エクステリアデザインはいわゆるイヴォーク系の顔になり、兄貴分のレンジローバーより、アグレッシブな顔をしている。全体的な印象は、イヴォークとレンジローバーの中間に位置しているのが分かるデザインだ。ポジショニングとしてもアグレッシブでありながら高級グレードのポジショニングに見合ったエクステリアデザインで、レンジローバーブランドらしくスクエアな印象を残しつつ、ワイルドな仕上がりと言っていいだろう。

5+2の3列目が加わった
5+2の3列目が加わった

一方、インテリアでは、今回のハイライトのひとつとして3列目をオプション設定し7人乗りを可能にしたことがある。但し、大人7人がゆったりと・・・というコンセプトではなく、小柄な人や子供用に設定したもので、エマージェンシーシート的意味合いのある7人乗りで5+2と呼んでいる。

シートはエントリーモデルからレザーシートが標準装備で、シートヒーターやリクライニングがリヤでも選択できるようになっている。日本仕様では14Wayのフロントシートが標準装備され、快適なドライビングポジションを得ることが可能だ。また、初代よりボディが大きくなった分後席のスペースも+24mm拡大され、よりゆったりとした空間を確保している。また、ラゲッジスペースも拡大され利便性も高くなった。

メーターフロントシート

ソフトクローズドア、電動パワーリフトリヤゲート、1700W、23スピーカーの3Dオーディオなどラグジュアリーモデルとしての快適装備も充実しており、満足度の高いインテリアと言えるだろう。

ダイナミック性能では、高い高剛性の軽量アルミボディに、エアサスペンション、進化した電動パワーステアリングに加え、トルクベクタリング、ダイナミックレスポンスシステム、リアクティブデファレンシャルなどをパッケージとして開発しているため、旋回性の高い走りが楽しめる。

◆シャシーダイナミクス

試乗したSEとAutobiography Dynamic(オートバイオグラフィ ダイナミック)では多少のダイナミック性能に差がある。SEとHSEには油圧によりロールとヨーモーメントをコントロールする「ダイナミックレスポンス」が設定されていない。それに伴い500/1secの速さで車両状況をセンシングするアダプティブ ダイナミクスも連動していない。がしかし、コーナー進入時やコーナリング中に感じるロールフィールはナチュラルで、エアサスペンションのストロークの長さを感じることができ、好ましい。

フルタイム4WDには2種類のトランスファーがあり、2速トランスファーとシングルがある。写真はトルセン付きのシングル
フルタイム4WDには2種類のトランスファーがあり、2速トランスファーとシングルがある。写真はトルセン付きのシングル

 

トルクベクタリング機能を持つリヤアクティブデファレンシャル
トルクベクタリング機能を持つリヤアクティブデファレンシャル

 

リヤのアクティブデフ、つまりアクティブロッキングデフによるトルクベクタリングも装備されないが、CBC(コーナーブレーキコントロール)とEBD(エレクトリック ブレーキ ディストリビューション)は装備されるため、コーナー時の旋回性は高く、切り足しをしても挙動に大きな変化を起こすことなく、スッと回頭してしまう。ちなみにEBDは4チャンネルでのブレーキ制御となるため、CBCとの違いは乗車人数や搭載重量バランスなどで機能するEBDとコーナリングのスリップを検知して機能するCBCとの差は、もはや違いは分からない。

Autobiography Dynamicにはシャシーにダイナミックレスポンスとアダプティブ ダイナミクス(センサー)が装備され、ダイナミックモードの走行モードがプラスされるため、油圧制御によりロールとヨーモーメントが抑えられる。そのため、よりフラットライドな乗り味となり、先進的な走りを体感する。具体的にはSE、HSEよりロールを感じにくく、回頭性を強く感じるのだ。さらに、EBDやCBCに加えリヤのアクティブデファレンシャルの働きで後輪外側にトルクを配分するトルクベクタリングも作動するので、信じ難いほどの旋回力を発揮する。

フロントサブフレーム
フロントサブフレーム

 

リヤのサブフレーム
リヤのサブフレーム

 

また、ステアリングレスポンスの向上、シフトパターンのスポーティ化もありアグレッシブな走行が楽しめる。実際、エントリーモデルのSEよりはコーナー進入時のロールは少なく、旋回中のロールも小さいが、逆にSEのシャシーのほうがランドローバーらしい、ゆったりとした動きを感じることができるので、個人的にはこちらのほうが好みだった。

今回悪路での走行は試乗できなかったが、テレインレスポンスも次世代の「テレインレスポンス2オート」へと進化していた。草地、砂利、雪、泥、わだち、岩場などの路面状況に対し最上の乗り心地となるようにオートで選択できるのがテレインレスポンス2オートで、SEとHSEにはオプション設定で、マニュアルのテレインレスポンスが標準装備。Autobiography Dynamicには最新のテレインレスポンス2オートが標準装備となる。

テレインレスポンス2オートへ進化。あらゆる路面で最高の乗り心地を自動で設定
テレインレスポンス2オートへ進化。あらゆる路面で最高の乗り心地を自動で設定

凸凹道での車両の接地性を示す、アクスルアーティキュレーションは546mmで、他のモデルと比較しても非常に高いことが分かる。さらにアプローチアングル、デパーチャーアングルも初代より向上し、深水限界も850mmに向上している。そして「ブレードセンシング」という新しい機能を備え、川などが氾濫したときに、あるいは冠水した路面を走行したときに、水深をセンシングするシステムを搭載したのだ。水深限界を超える前にドライバーに警告音で知らせる機能は業界初の機能であり、センサーはドアミラーに埋め込まれている。

◆レンジローバーらしさ

ライバルと比較してみると、悪路走破性やこうした深水限界など独自の性能を持つ部分もあり、ユニークセーリングポイントとして語れる。実際にこのプレミアムなSUVで悪路を元気に走行したり、川渡りなどアドベンチャラスな走行をするオーナーは少ないだろうが、こうしたことが「できる」というのは魅力だ。さらに、舗装路で、しかもワインディングでの走行性能がスポーツカーのように走ることができるという点でも魅力たっぷりだ。

ライバル達がハイブリッドや新世代ディーゼルモデルを投入してくるなか、ガソリン車でのアドバンテージをこうしたポイントでアピールしているというのが、今回のレンジローバー・スポーツということになるだろう。ハイセンスなエクステリアデザインは高級ホテルやリゾートホテルが良く似合い、移動の長距離高速移動も快適に安全に、そしてエレガントに走行できるというプレミアムSUVだった。

価格表

ランドローバー公式サイト

COTY
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