【クライスラー】ジープ・グランドチェロキー試乗記 オフロード性能も求められるプレミアムSUV レポート:髙橋 明

マニアック評価vol231

グランドチェロキー
14年モデルのグランドチェロキー リミテッド。8速ATを搭載しプレミアムSUVに磨きがかかる

クライスラー・ジープのフラッグシップSUVモデルであるグランドチェロキーがフェイスリフトを行ない、内外装以外の機能面でも変更が行なわれた。エントリーモデルのラレード、上級のリミテッドが2013年11月23日から発売され、さらに上級のV型8気筒5.7L搭載のサミット、同じくV型8気筒6.4L搭載のSRTは2013年12月中旬から発売開始される。グランドチェロキー
試乗会場は神奈川県の丹沢山系に位置し、特設のオフロードコースを造り、オンロード、オフロードのテストができたので、その様子をレポートする。試乗モデルはラレードとリミテッドの2モデルだ。

今回のフェイスリフト細大のトピックは、5速ATからZF製の8速ATに換装したことだろう。プレミアムSUVに相応しい装備とし、合わせてパドルシフトも加わっている。また、エアサスペンションにより車高を変更させ、高速走行時の空気抵抗の低減なども可能となり、V型6気筒3.7Lのペンスターエンジンでは約8%燃費を向上させている。5.7Lエンジンでも約5%の改善が図られた。

フロントリヤ

グランドチェロキーのフェイスリフトではエクステリアでフロントグリルデザインが変更されている。アイコンとなる7本の縦型スロットは上下幅を狭め、ロアバンパーのデザインが変更されている。ヘッドライトもスリムなデザインに変更され全グレードにバイキセノンランプとLEDクリアランスランプを装備。リヤはLEDを採用した大型テールランプを採用し、ラレードを除き左右4本出しのマフラーを装備した。また、ルーフのスポイラーも形状変更している。

グラチェロのリヤ

さて、グランドチェロキーは言うまでもなくジープブランドのSUVの中でトップグレードに位置し、ラングラー、コンパスの上位にポジショニングするプレミアムSUVだ。1963年のグランドワゴニアにそのルーツを持ち、求められる性能はオフロード性能の走破力と共に、オンロードでのプレミアム感も重視されている。

ラレードラレード

北米生まれのジープブランドは現在120カ国以上で販売されるグローバルモデルで、南米や欧州でも販売は好調だという。アメリカという国は都市部から少し離れると4WDを必要とするような場所は普通に遭遇し、決して特別な場所ではない。したがってクロスカントリー4WDとしての性能を必要とするユーザーも非常に多くいるわけだ。
そのため、プレミアムSUVではあるが、欧州のプレミアムブランドが発売するモデルとは少し性格が異なる面も持っている。それはプロダクトの特長としてユニークセーリングポイントに悪路走破性などの性能を謳うところだ。

セレクターシフト

グランドチェロキーには定評のあるクォドトラックⅡ、クォドドライブⅡに加え、クォドラリフト、セレクテレインという4WDのシステムがある。これらの機能でタイヤへの駆動トルク配分の前後はもちろん、電子LSDも介在し左右へのトルク配分も行なわれる。スリップ検知やスリップ予測などを行ない車輌安定のためのトラクションコントロールがありジープブランドならではの走破性を持っている。

特にセレクテレインでは5つの走行条件をドライバーが任意にセレクトでき、サンド、マッド、オート、スノー、ロックと選択できる。そしてクォドリフトのエアサスペンションシステムは最大調整幅104mmで車高を上下できアプローチアングルは35.8度、デパーチャーアングルは29.6度、亀にならないためのランプブレークオーバーアングルは23.5度を実現している。そして超低速走行するためのクロールレシオも30.2:1から44.0:1まで低められている。そのため、試乗コースにも特設のモーグルや傾斜路走行を体験できる場所を設置しているわけだ。

インテリア

試乗したラレード、リミテッドはともにV型6気筒3.7Lのクライスラー・ペンスターエンジンを搭載し、グランドチェロキーのエントリーモデル、ボリュームゾーンに位置するモデルで、ラレードが427万3500円(消費税込)、リミテッドが542万8500円(消費税込)。

この2モデルはサスペンションにも違いがある。通常のコイルスプリングを使ったラレードに対し、エアサスペンションを装備しているのがリミテッドとなる。オンロードでの乗り心地はともにプレミアムグレードに相応しい、ゆったりとした乗り心地だが、その中でもエアサスペンションのリミテッドのほうが締まった印象の乗り心地だった。そのため、瞬間的な入力に対しては硬いと感じる場面もあったが、トータルでは高級車らしいゴージャス感の高いSUVという印象だ。

運転席後席

新装備となった8速ATは滑らかにシフトアップするステップ式トランスミッションだが、トルクコンバーターによる滑らかな発進、ロックアップ領域の広さから、ダイレクトに変速しつつも変速ショックはなく、逆にその滑らかさが高級感の演出をしているようにも感じるATである。パドルシフトはDCTなみに反応し、気持ちよく加減速できる。トルクフルなエンジンは逞しく、エンジンサウンドも心地よい程度に聞こえ、プレミアム感たっぷりの走りが味わえる。

メーター3.6Lペンスター

ハンドリングはゆったりしたイメージで、不釣合いなアジリティは持ち合わせていない。車格に似合った反応で操舵感も軽く、大きなボディを感じさせない気軽さが生まれてくる。ハンドルは3本スポークでスポーティ。レザー巻きのグリップは太めで悪路での安心感を作るために必要なサイズだ。メーターは2眼式で左がエンジンスピード、右は水温と燃料計になっている。センターには7インチの液晶マルチモニターを装備し、ハンドルにある手元スイッチでさまざまな車輌情報を得ることができる。ちなみに速度計以外の車輌情報表示のときの速度はデジタルでメーター上部に表示されている。

センタークラスターラゲッジ

インテリアではリミテッドがレザーシートで、ラレードがファブリックという違いがあるものの、静粛性も高く、手に触れる部分の質感も高い。ラグジュアリーな室内空間と大型ボディからくる、ゆったりとした贅沢な時間を楽しむことができる室内だった。2915mmのホイールベースは後席のスペースにも大きく貢献し、ゆったりしている。リヤシートのリクライニングも12度傾斜するので、長距離、長時間移動でも疲れにくい。

グランドチェロキーはエンジンパワーだけでなく、走破力にも磨きがかかり筋肉質な性能を持ちながら上品な乗り心地も実現するアメリカ車らしいモデルだった。グランドチェロキーはこの先、ビースト(野獣)というニックネームのアメリカンマッスル、SRT8のデビューを控えている。

価格表

諸元表

ジープ公式サイト

COTY
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