【アルファロメオ】ジュリエッタ試乗記 アルファ的世界観の新しいシンボル

マニアック評価vol90
2012年の年が明けてジュリエッタがようやく日本にやってきた。第3世代目となるジュリエッタが発表されたのは2009年のことで、2010年の初夏からイタリア、ヨーロッパで順次発売された。当然、日本にも導入されるはずだったが、イタリアに比べ1年半遅れでの日本上陸となった。

その理由は、日本市場向けには必須であるFPT社(フィアット パワートレイン テクノロジー)が生産するアルファTCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)の立ち上がりが遅れたためだという。国内に導入が待たれるまでの間、欧州市場では2011年にアルファロメオ・ジュリエッタはハッチバック・モデルの2.8%を占め、イタリア国内ではシェアは実に14.5%に達する人気となり、アルファロメオのハッチバック・モデルとして史上最高の販売を記録している。ジュリエッタはアルファロメオ渾身の力作だけに、久しぶりにジュリエッタの名が与えられ、激戦のヨーロッパで大きなインパクトを与えていることがわかる。

ジュリエッタ走り
試乗会は横浜のみなとみらい地区を起点に行われた

アルファロメオのイメージは、Cセグメントくらいまでのスポーツプレミアムメーカーにふさわしいドライビングプレジャー最優先のクルマ作りといったイメージが強いが、もうひとつの側面としてテクノロジーやクルマのクオリティに対する強いこだわりも忘れてはならない。

今では一般技術化した連続可変バルブタイミングタイミングやコモンレール式燃料噴射も先頭を切ったのはアルファロメオだったのだ。そういう意味では、今回のジュリエッタはフィアットグループのテクノロジーリーダーという役割だけではなく、世界に対してアルファロメオの技術的な存在感、方向性を示すクルマといえる。

そのためのハードウェアがダウンサイジングを前提にしたマルチエア・エンジンやマニュルトランスミッションより燃費が優れるTCT、そして新開発の「コンパクト」(別称はCエボ)と名付けられた世界最先端のプラットフォームがある。

新プラットフォームはその91%が熱間プレス鋼板、超高張力/高張力鋼板を採用し、極めて剛性が高く、同時にアルミ材、マグネシウム材を骨格に併用することで軽量化も行っている。つまりジュリエッタのボディ骨格は現在でクラストップレベルの剛性を備えているのだ。これがジュリエッタの走りのバックボーンになっているといえる。

100413_AR_Giulietta_50鋼鈑比率

↑右図のオレンジ色は超高張力鋼鈑が84%を占め、ホットプレスが7%であることを示す

デザインは彫刻的な存在感、つまりソリッド感とセクシーさを融合させている。デザインの基調になっているのはコンセプトカー8Cから採り入れられたテイストだ。5ドア・ハッチバックという形式だが、クーペ的なデザイン要素を取り入れているのはアルファロメオらしい。

真横正面

その一方でCセグメントに求められる室内パッケージはきちんとしており、ラゲッジ容量も含めたスペースユーティリティは十分といえる。ジュリエッタらしいのはデザイン要素の上で、Cピラーを後方に向かって強く絞りこませ、ウインドウ角度も室内側に倒しているため、後席の側面に関しては少し圧迫感が感じられた。しかしリヤシートに座ってもフロントシートのシートバックの間隔はじゅうぶんあり、足元スペースは申し分ない。

室内の仕上げでは質感が高く、プレミアムCセグメントの資格は十分だ。特にコンペティツィオーネ、クアドリフォリオベルデのインテリアの質感の高さはクラストップレベルといえる。またメーターパネルやディスプレイのイルミネーションは赤ベースの単色だが、イグニッションキーのオン/オフでのグラフィックな演出などもMiTo以来の内容になっている。

インテリア

スポーティな走りはゴルフ以上

走り出すと、旧世代のアルファロメオとはかなり違ったフィーリングを受ける。以前はしっとりとした官能的なフィーリングがまず感じられたが、このジュリエッタはステアリングやボディ全体から伝えられるフィーリングにしっかり感があり、走り出しから高速走行まで安心感がありどっしりとした感覚が感じられるのだ。

ZF製のピニオンアシスト式のステアリングから伝わるダイレクト感やインフォメーションもきわめてわかりやすい。その一方で、ステアリングの操作と一体感のあるダイレクトなボディの反応はスポーティで、俊敏でドライバーの意のままに操ることができ、ドライビングする気持ちよさが感じられる。

乗り心地は、少し硬めのスポーツモデルらしさと路面との当たりの角の丸さ、路面のうねりを乗り越える時のフラット感など、乗り心地も心地よい。このあたりのまとめ方は絶妙というほかはない。

↑ サスペンションのブルーの部分はアルミ製

ジュリエッタの圧巻は、路面を捉えるロードホールディングの高さだ。ステアリングの操舵に応じて、車体全体が路面に張り付きながらコーナリングしていくフィーリングはまさにジュリエッタの真骨頂といえる。マルチエア・エンジンは極めて低回転から最大トルクを発生し、フレキシブルで力強く、サウンドも程よく抑え込まれてMiToほどメリハリはなくなっている。これはプレミアムCセグメントらしくキャビンの防音性を高めていると解釈すべきだろう。

エンジン特性としては2000rpm程度も回せば、ほとんどの場面でこと足りる。ジュリエッタの主力となる1.4Lのマルチエア・エンジンのフィーリングや走りはゴルフ・ハイラインよりスポーティに感じられるのもジュリエッタの魅力だ。

マルチエアエンジンDNA

DNAを「N」モードにするとTCTは早めにシフトアップし、100km/h巡航は2000rpmとなる。つまり走りをまったく損なうことなくエコモードで走ることができるのだ。「D」モードでは100km/hで2500rpmとなる。当然ながら過給圧もアップされ、より高回転までエンジンを引っ張り、電動パワーステアも操舵力が重めになる。また、ブレーキも与圧されてブレーキレスポンスを高める制御となる。TCTの制御、自動クラッチの繋がりも滑らかで自然だ。そして「D」にすると強めの減速時には積極的にシフトダウンされ、運転のリズム感とマッチしている。

1750ccターボエンジンを搭載するクアドリフォリオベルデは、よりトルクが分厚く力強い加速が実感できるのは言うまでもない。クアドリフォリオベルデは6速MTのみの設定だが、シフトフィールは軽快で気持ちよい。動力性能的にはゴルフGTIと同等だろう。なお、クアドリフォリオベルデにも対応できる、より大容量のTCTもここ2年ほどで市場に投入されるという。

クアドリフォリオ ヴェルデ
4つ葉のクローバーを意味するクアドリフォリオ ヴェルデにはマークが付く

 

その一方でジュリエッタはスタート&ストップを装備しており、市街地燃費の低減では、より有利であり燃費の面からもジュリエッタの資質は高く、一面的にスポーツ・ハッチと捉えるのは間違いだ。実用燃費は競合車と比べてもトップレベルとなるだろう。

ジュリエッタは今までにはないソリッドなフィーリングを新たに加えながらも官能的で心が躍るドライビング・テイストが巧みにミックスされている。アルファロメオの遺伝子を色濃く残しながら汎ヨーロッパ車としてのアルファロメオなりの新しい世界観を示しているといえる。この性能や感覚を体感すると、次に登場するジュリアも期待感が高まってくる。

■ジュリエッタ スプリント主要諸元

●価格 318万円 ●全長4350mm×全幅1800mm×全高1460mm WB2635mm ●1.4L 4気筒マルチエア+ターボ ●6速TCT(乾式デュアルクラッチ) ●最大出力125kw(170ps)/5500rpm 最大トルク250Nm/2500rpm(ダイナミックモード時) ●タイヤサイズ 205/55-16

■ジュリエッタ コンペティツィオーネ主要諸元

●価格 358万円 ●全長4350mm×全幅1800mm×全高1460mm WB2635mm ●1.4L 4気筒マルチエア+ターボ ●6速TCT(乾式デュアルクラッチ) ●最大出力125kw(170ps)/5500rpm 最大トルク250Nm/2500rpm(ダイナミックモード時) ●タイヤサイズ 225/45-17

■ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ主要諸元

●価格 388万円 ●全長4350mm×全幅1800mm×全高1460mm WB2635mm ●1750cc 4気筒+ターボ ●6速マニュアル●最大出力173kw(235ps)/5500rpm 最大トルク340Nm/2500rpm(ダイナミックモード時) ●タイヤサイズ 225/40-18

アルファロメオ公式サイト

COTY
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