【アルファロメオ】ミト試乗記 コンペティツィオーネ 走りのDNAを持つイタリアンコンパクト

マニアック評価vol84
先ごろ発表されたアルファロメオ・ジュリエッタの弟にあたるミトに改めて試乗する機会があった。ミトは現在、3グレードに整理されている。ベースグレードのスプリント、上級のコンペティツィオーネ、最上級のクアドリフォリオ ヴェルデの3つであり、スプリントとコンペティツィオーネには1.4L+ターボのマルチエアエンジンが搭載されている。出力は99kw(135ps)/5000rpm、230Nm/1750rpm。また、両グレードともミッションは乾式の7速TCTツインクラッチを搭載している。一方、最上級グレードのクアドリフォリオ ヴェルデは同じエンジンながら出力が125kw(170ps)/5500rpm、250Nm/2500rpm(Dynamicモード時)までアップされ、6速のマニュアルミッションと組み合わされている。

フロント
ミトのグレードはスプリント コンペティツィオーネ クアドリフォリオヴェルデの3つに整理された

 

今回試乗したモデルは中間グレードのコンペティツィオーネだ。エクステリアは、ウエストラインから下にボリュームがあるデザインで、小さめのサイドウインドウやリヤウインドウにより、カタマリ感のあるデザインになっている。そして、フロントビューと、リヤビューはアルファロメオらしい、個性的なデザインでアイデンティティをキチンと主張されている。

インテリアはクラストップレベルのプレミアムな印象だ。ダッシュボードは8Cへのオマージュとしてカーボンテイストにデザインされ(8Cはカーボン)、シートバックのショルダーにはアルファロメオのエンブレムが刺繍されている。このようなデザインセンスはまさにイタリアであり、アルファロメオなのだろう。

ダッシュボードフロントシート

市街地の走行ではゴー・ストップが多くTCTの苦手とする状況だ。つまり半クラッチを多用する場面だが、やはり少しギクシャクした感じがあり、渋滞の中などではATのように滑らかにはいかない。制御の難しさなのだろうが、少し気になる部分でもある。

アイドルストップは頻繁でもなくルーズでもなく適度に機能していた。ただし、再スタートのときはブレーキペダルから足を離した場合だけ再始動し、ステアリングを動かすだけでは再始動しない。

エンジンは低速トルクがありスペックからも分かるように、1750rpmで最大トルクを発揮する。興味深いのは、ミトにはD・N・Aというドライビングサポートするデバイスがあるのだが、その設定で最大トルクの絶対値が変化するのだ。一般的に、このてのデバイスはATのシフトアップタイミングが変化したり、パワーステアリングのアシスト量が変化したり、ESPの介入タイミングが遅くなったりというパターンなのだが、出力の絶対値まで変化するというのは極めて珍しい。

TCTシフトメーター

↑D・N・Aの切り替えはシフトレバーの上にある。ノーマルモードで100km/hのとき、2500rpmあたりを指す

逆にドライバーにとっては最大トルクが190Nmだったものが230Nmへアップするので、体感的にも変化を感じ、スイッチが入る。そのDモードはDynamicの略で、最大トルクが大きくなることに加え、TCTのシフトポイントが高くなり、VDC関連の制御介入が遅くなるなど、よりスポーティセッティングに変化する。NはnormalでAはALL ウエザーのそれぞれ略となっている。

このミトはDモードでエンジンを高回転まで使った走りをすると、市街地で走っているミトとは違った印象になる。アイドリングから低回転域は静かで、室内に入る音も小さい。しかし、4000rpm付近からだろうか、エンジン音が変化し、アルファロメオらしさとでも言うのか、官能的なサウンドになる。

マルチエア
1.4L+ターボのマルチエアエンジンにTCTが組み合わされる

ステアリングレスポンスもすばらしく、FFとは思えないニュートラルステアでコーナリングする。フロント・ストラット、リヤ・トーションビームというレイアウトであるため、うまくセッティングしたとすれば、弱アンダーの味付けになると思う。そこから先はデバイスの働きが加わっているのではないだろうか。

しかし、どのうよなデバイスが作動しているのか感じることはないが、終始ニュートラルステアなので、安心感が高い。ニュートラルということはリヤタイヤがしっかり設置し、フロントの操舵方向へ素直についていく動きをする。だから、コーナリング中に切り増ししても不安定な挙動にはならず、素直に回頭していくのだ。

そこでミトが持っているデバイスを見てみると、VDC(ビークル・ダイナミック・コントロール)の中に、ASR、CBC、DST、HBA、MSR、エレクトリックQ2、そしてHHSがある。流行の3文字英語だが、ASRはアンチ・スリップ・レギュレーションで加速時の個別自動ブレーキと出力制御でトラクション性能を確保する。

CBCはコーナリング・ブレーキ・コントロールで、ABSが作動したときに個別にブレーキ制御の働きをする。HBAはハイドロリック・ブレーキ・アシストで、パニックブレーキ時に瞬時に油圧を上げるシステム。MSRはモーター・シュレップ・レグルングでエンジンブレーキやシフトダウン時の強すぎるエンジンブレーキによるスリップを制御し、駆動輪のロックを防ぐ。

エレクトリックQ2は電子制御のLSDだ。こいつがいい具合に働いているのかも知れない。他にHHSはヒル・ホールド・スタートで坂道発進時に車両がバックしないように、ブレーキペダルから足を離しても一定時間油圧が保たれるシステム。

ミト

他にDSTダイナミック・ステアリング・トルクがあり、的確な反力を与えるステアリング修正操作の補助機能である。もちろんABSもついていてEBDエレクトリック・ブレーキフォース・ディストリビューターで個別に油圧が分配される機能がある。

つまり、D・N・AのDモードのときに、VDCとASRの作動は控えめの設定となり、エレクトリックQ2が作動可能となる。またDSTはABSと協調した標準的なブレーキコントロールでオーバーステアのときにドライバーへわずかに回転トルクをあたえ、修正を促してくる。またエンジンのレスポンは敏感になりTCTのシフトポイント高くなる。

NモードでのVDCおよびASR、DST、エンジンレスポンス、TCTいずれも標準的なセッティングとなる。一方、AモードではVDCおよびASRは積極的に介入し少しの挙動にもデバイスが作動するようになる。エンジンの反応は標準的な反応でTCTも標準セッティングとなる。

以上のようなデバイスがあり、設定によって介入タイミングが変更できる。一般的になりつつあるESP(横滑り防止装置)に相当するVDCは、ミトの場合解除する設定はなくすべて設定変更の範疇になっているのも特徴である。もっとも、ESPのように独立したデバイスではなく上記のようなデバイスとの協調制御であるため、オフという概念はないということなのだろう。

ミトはプレミアムコンパクトというカテゴリーに属し、ポロやアウディA1、MINI、シトロエンDS3など個性的なモデルが多いセグメントになる。それぞれどんなユーザーがターゲットとなるのか?は興味深いところであるが、ミトは富裕層のセカンドカー需要で足代わりに使うという用途に応えるより、ワインディングを攻めて遊ぶというスポーツドライブがもっとも似合うモデルということだろう。

●価格スプリント 278万円 コンペティツィオーネ 292万円 クアドリフォリオ ヴェルデ 328万円 ●全長4070mm×全幅1720mm×1465mm全高 WB2510mm ●10・15モード 14.6km/L(クアドリフォリオ ヴェルデを除く)

 

アルファロメオ公式サイト

 

ページのトップに戻る