【フォルクスワーゲン】 ポロTSIハイライン&GTI 試乗インプレッション

マニアック評価vol39
新型ポロは2009年秋に登場したが、その時点では旧モデルから引き継いだ1.4Lエンジンを搭載していた。その後、2010年6月のマイナーチェンジでは、本来計画されていた1.2Lにダウンサイズした、新開発ターボエンジンに換装されている。今回試乗したのは、その1.2Lモデルで上級装備のハイラインである。

POLO

歴代のポロは、GTIを除けば同クラスの日本車と比べても非力なエンジンと4速ATを搭載していたので、コンパクトさや取りまわしのよさ以外ではかなり地味な存在だった。しかし全長3.8mを切り、全幅も1690mm以下のコンパクトボデにもかかわらず、日常のドライブでボディの小ささを感じない点に特徴はあった。小さく感じないどころか、分厚い鉄板で造られた大型車に乗っているような安心感、安定感が感じられたことが同クラスの日本車とは大きく違う点でもあった。

現在のモデルが登場し、新開発のダウンサイズ・エンジンや7速DSGが採用されると、ポロの位置付けは2段階ほどアップしたような印象を受ける。同クラスのクルマからは突出した高性能、優れた燃費と俊敏な走りを両立させ、クルマの質感も大幅にアップされているからだ。さらに、デザイン的にも従来の、いくらか女性好みの愛嬌のあるエクステリアから、シンプルで引き締まった強い存在感のあるフォルムに生まれ変わっている点でも、セグメントを越えていると感じさせている。

ハイライン

4気筒、1.2Lターボエンジンは、従来より排気量が小さくなったにもかかわらず低・中速トルクが強力で、4000rpmくらいまで完全にフラットで滑らかだ。小型のマニホールド一体型ターボを採用し、ターボであることさえ感じさせず、市街地ではDレンジで走行していても、すぐに6速、7速に入る。当然ながら、高速道路での巡航では100km/hで2000rpmという上級車なみの回転数であり、実用燃費はハイブリッドカーに肉薄するレベルになるはずだ。さらに言えば、乾式DSGの熟成も文句なしのレベルにあり、エンジン特性と合わせて誰にでも使いやすい仕上がりだと実感した。

ハイライン_エンジン

乗り心地、ハンドリングは過去のモデルよりさらにダイレクトでしっかり感が高まり、同時にアジリティ(俊敏性)もアップされている。以前のモデルはもう少しルーズでゆったりした感じがあった。それに比べて新型の俊敏性やしっかり感は、これは近年のドイツ車全般の傾向とも言えるかもしれない。路上でのボディの動きは、ピッチングを抑制したフラットな乗り心地で、フリクションが感じられない適度なストローク感や、しっかりとしたシートの造りなど、これなら長時間ドライブでの疲労が少ないであろうことも想像できる。乗って走るフィーリングは硬質で、軽量だが硬い殻の中で運転している感じ、と例えるとイメージしやすいだろう。

室内の仕上げや質感ももちろんクラスを飛び越えている。今やこれ以上のクラスであり、Cセグメントでもダッシュボードにソフトなウレタン表皮を採用しているクルマはほとんどない。また本革ステアリングホイールの楕円断面形状なども疲れにくく、グリップしやすいように、なかなかよく考えられた仕上げだ。こうした高精度の内装の仕上げはオーナーに満足感を与えると思う。ただインテリア全体の色調やデザインがビジネスライクな点は、フォルクスワーゲンらしいといえばそれまでだが、息抜きが欲しくなる。

ハイライン_インテリア

価格はハイラインが242万円で、ベース車のコンフォートラインの213万円より30万円高いが、装備面ではフル装備といえる。コンフォートラインでもESC(横滑り防止装置)、フルエアバッグなど充実装備で、こうした装備が含まれていることを考えると、戦略的な価格設定と言えるし、割高感はない。こうしたこともあり、新型ポロを購入したユーザーの70%は日本車からの乗り換えというデータになのは、なるほどと思う。

ポロGTI 試乗インプレ

GTI

ポロGTIは、1.2Lエンジン車より3ヶ月ほど送れて登場した。GTIはゴルフ・ハイラインと同じ1.4Lツインチャージエンジンを搭載する。ただし、ポロGTI専用にチューニングされ、ゴルフ用よりパワーは179psで19psアップ、トルクも10Nm大きくなっている。また、同じGTI同士で比較すると、ゴルフGTIの馬力荷重(パワーウエイトレシオ)は6.64kg/ps、ポロGTIは1210kgの重量で6.76kg/psと動力性能はかなり接近し、過去のポロGTIより格段に高性能になっていることに驚かされる。

エンジンのフィーリングも専用チューンされただけあって、吹け上がりのレスポンスが高められ、アクセルを踏み込むほど高まる排気音も、高揚感を高める。

GTI_エンジン

またローダウンされたスポーツ・サスペンション、サイドサポート性を向上させたシート、電子制御LSD(XDS)など仕様も本格的だ。つまり、単にパワーの大きいエンジンを積んだだけではなく、スポーツモデルとしてのきめ細かいこだわりも相当なものだ。

他のモデルではエンジンルームに搭載されるバッテリーも、GTIだけはリヤのスペアタイヤ下に収納される。操縦性に配慮したその一例だ。ハンドリングは、ダイレクト感と正確さがベースモデルに比べて一段と高められ、S字カーブなどでの身のこなしは特に印象的だ。

タイヤは215/40-17サイズのハイパフォーマンスで、スポーツ・サスペンションとの組み合わせで硬めに感じるが、ハーシュネスはしっかり押さえ込まれている。またダンパーの減衰レスポンスがよく、ボディの動きの収まりも早い。

ステアリングのフィーリングは、ハイラインよりさらに路面インフォメーションがしっかりと手ごたえとして伝わってくる。GTIでワインディングを気持ちよく走るパフォーマンスだけが強調されがちだが、GTIと名乗るように、長距離走行でファンツードライブを楽しめるポテンシャルも忘れてはいけない。

GTI_インテリア

ギヤの減速比は、標準ポロよりやや低目の設定になっている。Dレンジを選んでおけば実用域では6、7速に早めにシフトされる一方で、アクセルを踏み込むと、強くレスポンスのよい加速感、盛りあがるスポーカーサウンド、そしてよりダイレクトなステアリングフィールなど体感フィーリング、スピード感などあらゆる面でドライバーを駆り立てるテイストを満載している。動力性能的にも文句なしだ。

ただ、通常走行時でのロードノイズの入り方や、室内の静粛性などはゴルフよりワンランク下だと思う。しかしドライバーが気持ちよいと感じるスポーツ感や、広い意味での快適さ、充実した装備などを考えると、コストパフォーマンスはかなり高いと言わざるを得ない。GTIの競合車を考えると、アルファロメオMiToしか存在しないと思う。

ポロはセグメントのレベルを超えた性能や存在感を備えているが、その一方で新興国向けには低価格車という顔を持っている。その2面性は開発時点で織り込まれており、ヨーロッパ、日本向けと両立できている点が見事だ。

ポロは本質的にはクラスレスカーであり、プレミアムクラスに肉薄する妥協のないクルマ造りを目指している点で驚異的といえる。試乗レポートなどでポロは同クラスのベンチマークという表現が多用されるが、それは正しくない。目標とはいえないほど先に進んでしまって、当分、他車は到達できないだろう。

文 編集部:松本 晴比古

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