プリウス試乗記 大幅に改善されたドライバビリティだが、上質感に課題あり

マニアック評価vol406

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横浜みなとみらい地区で開催された4代目プリウスの公道試乗会

4代目プリウスの公道試乗をする機会に恵まれた。場所は横浜みなとみらい地区。一般市街地と首都高速が使えるエリアで実際の使用環境での試乗となった。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

前回試乗レポートは富士スピードウエイの構内とショートサーキットでの試乗で、限界性能をみるには最適な環境だった。そのレポートはこちらにある。この時はハンドリングでは切り戻し、特にWレーンチェンジのような急激な操作をすると応答遅れがあり、せっかく切り始めの操舵がリニアになってきているのだから、このあたりにも踏み込んだチューンが欲しいというレポートだった。また、ブレーキタッチも改善されているが、市街地での使用を経験してから断言したいともレポートしている。

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今回は、一般市街地と首都高速を使った試乗となった

そのポイントでは現実的な使用環境では、操舵の応答遅れを感じる場面はなかった。ジワリと切り始めれば、ノーズもジワっと動き、切り足ししたときと切り始めのノーズの動きに大きな差は感じない。切り戻しもスムーズで手応えもあり癖のない操舵フィールだ。実用域では応答遅れの顔を出さないのだろう。

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4代目のプリウスは環境車であるがドライバビリティも追及している

また、ブレーキは市街地でも何ら不満を感じなかった。逆に素晴らしいと思う。微妙なタッチをする場面においても油圧ブレーキとの差を感じることはなく、ハイブリッドモデルが持つ難点を見事に解決していた。エンジニアに聞けば、最初は油圧が立ち上がり、そこから徐々に油圧を抜いていく。かわりにジェネレータの抵抗を減速エネルギーにし、その抵抗も一定ではなく、油圧とのバランスを見ながら抵抗を変える。もちろん、そこには踏力という複雑な要素もある中で、見事にブレーキタッチを繊細な領域でコントロールしていた。

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そこまでブレーキがよくなると、出力に関しても欲がでる。CVT的な電気式無段階減速機を持つトヨタのTHS IIは、どうしても加速のときエンジン音と加速フィールでのズレを感じるので、リニア感に欠ける。3代目よりは多少リニア感を増したフィールに変わったものの、積極的な走行シーンになると気にはなる。

4代目のプリウスは環境車であるがドライバビリティも追及しているモデルで、開発の目標にもなっている。そのため、TNGAというトヨタの新しいクルマ造りの考え方やモジュール化したプラットフォーム類など、新技術や考え方が投入されている。だからこそ、走りのFUN要素となる「フィール」が重要だと思う。

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さて、試乗したモデルはニッケル水素バッテリーで4WDのツーリングセレクションとFFでリチウムイオンバッテリーを搭載するAプレミアム・ツーリングセレクションの2グレードに試乗した。いずれもタイヤサイズは17インチを装着。そして確認のために15インチモデルもチョイ乗り試乗をした。

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4WDモデルはE-Fourとネーミングされ、必要な時にモーターでリヤを駆動するタイプ

注目度の高い4WDはE-Fourとネーミングされ、必要な時にモーターでリヤを駆動するタイプだ。4WDモデルではあるが通常は前輪駆動で走行し、タイヤの滑りや滑りのヨーモーメント検知するとリヤタイヤにモーターでトルクを掛けるという仕組み。したがって、今回の市街地走行ではそうした状況には遭遇せず、FFとの違いを感じることはできなかったのだ。

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このE-Fourは本格的な4WDとはずいぶん異なるが、実用レベルで考えると一般的なユーザーにはむしろ、こちらのほうがありがたい。それは4WDとすることで、重量が重くなり、抵抗が増え、結果燃費が悪くなるということがほとんどないからだ。そのマイナス要素が少ないのだからありがたい。ちなみにJC08モードは34.0km/Lとなっている。FFモデルで特殊?なEグレードは40.8km/Lだが、それ以外のFFでも37.2km/Lといずれも省燃費性は高い。

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バッテリーのニッケル水素、リチウムの違いを感じることができたか?という疑問では答えはノー。市街地、首都高速の走行でその違いは全く分からなかった。理論的には電気の出し入れの速度が異なるからリチウムのほうが力強く、そしてレスポンスがいい、と感じることになるのだが、残念ながらその違いは感じない。

エンジニアに聞けば、通常の使い方で体感するほどの差がないように制御はできている、という。しかしバッテリーの温度が上がっている状態など極限に近い状態になると、多少の違いを感じることがある。ただし、EV車を数多く、いろんな条件で試乗したことの経験を持つ人でなければ、それすらもわからないだろう、という回答があった。

各社高性能なリチウムイオンバッテリーを使う中、トヨタだけが世界中でニッケル水素を使い続けている。当初、多額の設備投資をしているから、そう簡単にはリチウムにシフトできない、と噂されているが本当の理由はよくわからない。それも一理あるはずだが、さすがにこれだけトヨタのハイブリッドは売れているわけで、設備費の回収がままならないというのは考えにくい。あるいは、爆発や発火などの事故の危険性を回避しているから、という話も聞く。それも本当だろう。

今回の試乗でもそうだが、バッテリーがどのタイプなのか?ユーザーにとってその違いを感じないわけだから意味のない問題指摘なのかもしれない。

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さて、気になる価格だが、発売の滑り出しはやはり高級グレードが人気のようだ。2016年1月のオーダーで6か月待ちという人気で、乗り換えユーザーもかなり多いという情報だ。量販グレードとしてはFFのAとA・ツーリングセレクションが中間グレードで、約277万円から約292万円。トップグレードのE-FourAプレミアム・ルーリングセレクションは約339万円という価格になる。

最初に試乗したE-FourはA・ツーリングセレクションで車両本体は312万2000円。これに専用のT-connectナビや寒冷地仕様、ボディカラーなどのオプションも入れると358万5060円というプライスになった。

エコカー減税では、全グレードで「平成32年度燃費基準+20%」を達成し、「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」の認定も併せて取得しエコカー減税の免税対象となっている。

さて、4代目プリウスはドライバビリティを重視しながらも乗り心地の改善という目標もある。15インチのほうが当然ソフトで丸みのある乗り心地だが、富士スピードウエイで乗ったときほど17インチとの差は小さく感じた。つまり17インチはありだ。

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乗り心地がよくなり、ハンドリングもよくなった。燃費はさらによくなり・・・といいことずくしなのだが、最後に気になったインテリアの豪華さと乗り心地の上質さについても少し触れてみたい。

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樹脂に直塗りの部分が多く、ドア内貼りは樹脂のままのインテリア

インテリアは樹脂に直塗りの部分が多く、ドア内貼りは樹脂のまま。国産車は内装が素晴らしいと言えるものは少ないがそれでもアクセラやインプレッサよりも質感は低い。300万円前後のモデルなのだから、次はインテリアも豪華にしてほしいものだ。

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乗り心地の上質感とはやはり、音の侵入を抑え、しっとりとした質感が欲しい。ハイブリッドはもともと静かだが風の音や周囲の音、ロードノイズの遮断などの方向で音対策が欲しい。そしてゴルフ7のハイラインのように、しっとりとした乗り心地も手に入れたい、と欲深くなる試乗だった。

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