4代目トヨタ プリウス プロトタイプ試乗記

マニアック評価vol385

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現在はプロトタイプにあたる4代目プリウスの試乗を富士スピードウェイ敷地内で行った

4代目プリウスに試乗することができた。発売前(2015年12月発売予定)ということで、正確にはプロトタイプの試乗となるが、発売目前であることからも市販モデルであることは間違いない。

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トヨタが掲げる、新型プリウスの「4つのFUN」

場所は富士スピードウェイ敷地内で、ナンバー登録ができないため限定的な試乗だ。しかし、サーキット内の構内道路、ショートサーキット、そしてスキッドパッドのように広いスペースもあるので、さまざまな状況を体験できる試乗だった。

トヨタが掲げる、新型プリウスで目指す「走り」

初めに体験したのはTSS(トヨタ セーフティセンス システムP)で、衝突回避はもちろん、歩行者を認識するシステムであることが特徴。プリウスの強みとして先進装備が挙げられるが、そのうちの一つがこのTSSだ。

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テストはダミー人形を置き、自動で停止するか?というテストだ。試乗日はあいにくの雨模様で、歩行者飛び出しを想定した実験を行なう予定だったものの、雨によって歩行者を動かす装置が故障してしまい、飛び出し実験はできず、ダミー人形を直立に設置した状態でのテストとなった。

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もちろん、テストは成功で、衝突前に警告音が鳴りドライバーが回避行動をとらないと自動的にブレーキがかかり緊急停止する。

◆走って楽しいか?!
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4代目プリウスの開発目標でもある「走って楽しい」という項目では、環境車と言えども走る喜びや愉しみが必要であるとの思いから、走行性能にかかわる改良がされているのも特徴だ。それはリヤサスペンションをダブルウイッシュボーンに構造変更しているポイントや、サスペンションのジオメトリーの見直し、さらにはボディ剛性の向上など多岐にわたり改良されているのだ。

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こうして3代目より走行性能において磨きをかけた4代目はショートサーキットでの走行テストも体験できた。装着するタイヤはトーヨーのエコタイヤ「ナノエナジー」を履く。ここでスペックを振り返ると、ボディサイズは全長4540㎜×全幅1760㎜×全高1475㎜、ホイールベースは2700㎜となっている。エンジンは4気筒ガソリンでモーターと組み合わせたハイブリッドで、1.8Lの排気量を持つ。

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エンジン単体の出力は98ps/142Nm でモーター単体では72ps/163Nm という仕様。バッテリーはリチウムイオン電池とニッケル水素電池の両方があり、試乗車はニッケル水素の方のモデルだった。気になる目標燃費は40km/Lでリチウム電池を搭載するモデルが達成しているようだ。

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さて、ショートサーキットでは3代目のプリウス、そして新型プリウスの15インチ、17インチのタイヤサイズの違いの乗り比べをすることができた。

相対的に、走りを楽しくしたという狙い通り、3代目よりはドライバビリティの向上があり、ウエット路面でコントロールが難しくなってしまう3代目よりは、コントローラブルな顔を見せる4代目のほうが、楽しい。

17インチでは、エコタイヤとはいえグリップもしっかりあるので、コーナーをやや速い速度で進入できるが、限界がつかみにくくESCの稼働タイミングもつかみにくい。一方、15インチは相対的に限界が低めだが、エコカーのドライバビリティとしては開発の狙い通りなのかもしれない。というのは、限界が分かりやすくESCの介入タイミングも早い。したがって、ドライバーが常に余裕をもってコントロールできるので、楽しいという気持ちが湧き出てくるわけだ。万が一コントロールできなくなっても電子デバイスにより、コースアウトするようなこともないというわけだ。

操縦安定性は、せっかくリヤのサスペンション構造がウイッシュボーンに変更しているので、もう少しリヤの追従性が感じられるようにセットアップしてもいいのではないか?と感じた。ESCとの兼ね合いがあるので、よりデバイスによる安全を担保してのセッティングなのだろう。

一方ブレーキタッチは格段に良くなったと感じた。プリウスは世代が変わるごとに回生ブレーキとの協調制御が改善され、よりナチュラルに感じるようになっているが、4代目のブレーキは通常の油圧ブレーキとの差が分からないレベルのブレーキバイワイヤになっていた。

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停止寸前やファーストタッチがバッテリーの充電状況によってフィールが変わってしまう、ということが全く感じられず、好感触を持ったブレーキとなっていた。ただし、公道試乗とは条件が違うので、断言するにはもう少しテストしてからがいいかもしれない。

操舵フィールでは3代目では強く感じた応答遅れが、4代目になるとかなり改善され、気にならなくなっている。が、切り戻しでは応答遅れがでるので、このあたりはもう一歩踏み込んでのチューニングでもいいだろう。ステアフィールとしては総じて軽めで、軽すぎず、重すぎずの程よい程度に仕上げてある。

一般道に近い構内の取り付け道路では、車速規制があるためせいぜい50㎞/h程度の速度でしか試せない。それでもクルマ全体の剛性感が高いのを感じ、設置してある凸凹のオブストラクションでは明確な違いを感じることができた。

また、乗り心地の改善というのも4代目の開発目標になっているが、3代目よりは改善されているものの、17インチ装着者ではピッチングが気になった。エアボリュームのある15インチはクラスレベルの乗り心地は手に入れているだろう。

◆品質の向上は?

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トヨタが掲げる、「新型プリウスが目指したもの」

しかしながら、ハイブリッドという高級な装置を搭載しているだけに、補助金が出るにせよ高級車ゾーンに近い車両価格が想像でき、3代目もそうだが、金額に見合った装備、乗り心地、ハンドリングであるのか?というのも4代目のチェックポイントだ。

とりわけインテリアの質感では高級感が不足している3代目よりは、改善されているがもう少頑張ってほしいというのが正直な感想だ。やはり、手の触れる場所やダッシュボードなど面積の広いところなどで樹脂感があり、クロスを張るとかのひと工夫は欲しい。ポジションとして、また金額からも直接的なライバルとなるモデルはないが、あえてライバルとするならフォルクスワーゲンのゴルフがCセグメントトップとして比べてもいい。

新型プリウスはトヨタが進める次世代技術TNGA(Toyota New Global Architecture)の第1弾だ。この先、自動車を取り巻く状況において、さまざまな進化や変化が起きるわけで、その変化に対応できるように車両開発がすすめられている。それがTNGAと呼ばれるアーキテクチャーで、B、Cセグメント用FFプラットフォームはフレキシビリティを持ち合わせ、今後多くのモデルに展開が予定されている。

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「もっといいクルマをつくろう」をスローガンに掲げる豊田章男社長のもと、開発のベクトルが明瞭化され、高品質でありながら走って楽しいクルマが誕生してくるのか?期待をもって待ち望みたい。

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