トヨタMIRAIとアドバンスドドライブを使ってみて

現在トヨタの最先端となる運転支援システムの「アドバンスドドライブ」はMIRAIとレクサスLSにだけ装備され、試乗する機会も限られていたがようやく試乗することができた。

関連記事:トヨタ 燃料電池車の2代目新型「ミライ」を発売

トヨタの考える運転支援システムはトヨタ チームメイトと呼び、お互いが助け合うことを基本とする考え方だ。完全な自動運転はシャトルなどMaaS領域では開発が進められているが、乗用車の領域での情報はない。

人間は360度センシングできないが、システムを使えば可能になる。だが、苦手な状況もある。例えば逆光や大雨などの自然環境もそのひとつ。どこのメーカーも開発を進めているものの、まだ未完成な部分も多くお互いが助け合うのが今の段階でのベストという状況。

またチームメイトとともに、三位一体ということもトヨタは言う。クルマ、人、社会がスパイラルアップしていくことで安全なクルマ社会になっていくと考え、実現したい取り組みであるとしている。クルマだけでは解決できない、人も理解しなければならない、そして社会の受容性も、環境も整わないとダメということから三位一体という表現をしているわけだ。

アドバンスドドライブのシステム

そうした中で提供しているアドバンスドドライブの精度の高さには驚かされるのだ。基本的なシステムを振り返るとレクサスに搭載しているLSSプラス(Lexus safty system)に使われているセンサー類にプラスしてアドバンスドドライブが作動している。

LSSプラスには中距離用のコーナーレーダー(コンチネンタル製)を使い、前方を見る長距離レーダー、そしてカメラはステレオ式を採用している。これをベースにして前方にLidarを追加し、ロケータカメラを追加。これは高精度地図を使って自社位置を演算するカメラで、さらに、望遠カメラとドライバー監視用カメラを搭載し、アドバンスドドライブのセンサーが完成、デンソーとともに制御開発をしている。

そしてSIS ECUはspecial information serviceの略で、高精度地図に対応するECUで空間情報を持っているものだ。それとADS ECUという自動運転用のメインのECUがあり、もうひとつがATXという拡張ECUがある。これにはNVIDIAのエグザビエルというチップを装備し、カメラ情報をAIに解析させ、より高度な認識をし、これらの組み合わせでアドバンスドドライブが作動している。

それでも得て不得手があるわけで、クルマに任せたいとき、ドライバーに任せたいときがあり、お互いワークシェアをしようということでトヨタチームメイトということになる。

首都高速でテスト

このシステムを持つMIRAIに試乗し、首都高速を中心に試乗してきた。まずはナビに目的地を入れ、アドバンスドドライブを稼働させると、道案内が始まり、システムがドライブできる環境になるとモニターに運転できるよ、という表示が現れ、苦手な場面に遭遇すると運転はお願い、という表示になる。

これを繰り返しながら目的地へと行くことになるが、今の段階ではシステムドライブがOKの場合の伝え方や、戻し方はまだまだ議論されている最中。ただこの市販されているシステムではシステムドライブができる場合はハンドルマークがグリーンになり、NGの場合はモニター全体が赤く表示され、運転が戻されるといった表示になっていた。

システムがドライブしているときは車線内をキープして進む。これが素晴らしく、首都高速のような比較的速度が速く曲がりくねった道路でもほぼ外すことなく車線内を維持しながら自動でステアする。さらにカーブでの減速も違和感なく減速するが、逆に加速時には少しもたつきがある。これはあえての制御だそうで、このあたりの加減速のタイミングはある意味、いかようにもエンジニアには作り込める領域にはなってきているのだ。また、こうした制御変更はOTA(通信アップデート)でも対応できるということだ。

そしてハンズオフも可能な場面がくれば、両手を離すことも可能だが、実際はドライバーに戻すことも頻繁にあり首都高速では使いにくい。言い換えれば一般的な高速道路であればそれほど頻繁にドライバーに戻すこともないわけで、首都高速という極めて条件の悪い場所だからの結果だ。

手放しと自動追い越し

クルマが周囲をどのように検知しているかグラフィックで表示される

そして前走車を追い越すときは「追い越しをしますか?」と尋ねてくる。そこで「はい」を選択しサイドミラーを見ていると、システムがドライバーは後方確認をしている認識すれば、自動でウインカーを点灯させ車線変更を始める。そして自車が追い越し車線を走行していると、何もしなくても走行車線へと戻ろうとする。

また気遣いのある制御だと感じたのが、横にトレーラーなどの大型車が並走するような状況になると、タイヤ1本分トレーラーから離れた場所を維持して走行するのだ。こうしたきめ細かな動きは、人が運転しているとごく自然に行なっているが、システムの場合はそうしたデータを入力しないとずっと車線の中央を維持しようとしてしまうわけだ。

高級車MIRAIをドライブ

さて、こうしたアドバンスドドライブをテストした後は、アナログで自らハンドルをにぎりMIRAIの走りを体験してみる。

首都高速や一般道などを走行し、高級な乗り心地で静粛性の高さに感心する。この静かな走りというのは、トヨタが昔から得意とする分野だと思うが、存分にその静かさが味わえる。もちろんモーター走行というのが大きな要因ではあるが、タイヤからのパターンノイズも小さく高級車としての風格が感じられる。同乗者との会話はまるでリビングで会話しているかのように、普通に会話できレベルの高さを感じるものだった。

ガソリン給油となんら違いはない水素充填

そしてMIRAIの試乗でのハイライトは燃料の充填だ。そう、水素の充填をどうすればいいか?初めてのことはドキドキするが、なんと、いとも簡単で水素ステーションに行くと店員がでてきて満タンかどうか聞いてくる普通の光景。「水素満タン」と告げれば店員が充填をしてくれ、支払いをしておしまい。

充填は法規で禁止されているためセルフ方式はなく、資格を持つ店員まかせなのでより何も不安はない。ちなみに東京の赤羽橋にある岩谷産業の水素ステーションでは1kg/1100円で販売している。MIRAIのタンク容量は5.6kgでこの日充填したのは2.2kg、2200 円だった。ちなみに燃費は122km/kgとなっていた。

近所に水素ステーションがある場所に住んでいたら非常におすすめできる。クルマとしての居住性、先進的なインフォテイメント、そして水素という先進感、さらにアドバンスドドライブという運転支援装置のレベルの高さなどなど、欠点は探さないと見つからない。

ちなみに、水素ステーションは都内に22ヶ所あり、満タンで600km程度の走行ができるわけで、月に2回も充填すれば十分といえるのだ。新しい未来の乗り物として高い魅力があると感じるMIRAIの試乗だった。<レポート:髙橋明/Akira Takahshi>

価格

COTY
ページのトップに戻る