トヨタはランドクルーザー70シリーズを国内に復帰させ、期間限定で発売するニュースで心躍る人も多かったことだろう。早速試乗し、オフロードコースも体験してきたので早速レポートしよう。
1984年11月にフルモデルチェンジを受けて誕生した70シリーズは2014年の今年で生誕30周年を迎えた。ランドクルーザー自体は60年の歴史があり、トヨタ自動車の歴史とも言えるモデルでもある。そして2004年に国内販売が終了し早10年という年月が経っている。が、海外向けの生産は現在でも続けられている。
なぜ、70シリーズを復活させたのか?「2013年このランクル70系はグローバル販売で過去最高の販売台数を記録し、世界中で重要が高まっている状態だ。30年造り続け、その29年目にして最高の販売台数だったわけだ。もちろん国内からもファンの方から復活の声も頂きました」と語るのは製品企画本部の鈴木徹氏。
主に中近東へ年間4万6000台輸出し、他にもアフリカ、オーストラリアでの重要が高く悪路走破力、ボディの堅牢性、故障への心配が少ないなどの理由から高い信頼性を得、海外ではいわゆるジャパンブランドの旗頭としてロングセラーになっているわけだ。そして生誕30周年ということもあり国内復帰が決まった。「以前から国内販売再開の話はあったのですが、やはりこの企画を社内で通すことが最もハードルが高かった」と鈴木氏は振り返る。
70ランクルは愛知県内にあるトヨタ車体吉原工場で生産し、月産6500台を生産し、国内の割り当ては200台/月ということになった(ごく一部ケニアとバングラディッシュでコンプリートノックダウンはある)。世界的に見てもライバル不在のモデルで、各国からの需要は高まる一方で入庫待ちのユーザーが世界中で待っているという現状らしい。国内販売に関しては、愛知工場で生産して輸出しているため、難しいことではないという。
時代とともに変化する環境基準や安全性能においても、生産しつづけていたから、輸出国先の基準には常に適合させ改良は続けられていることになる。今回の国内販売においてもガソリンエンジンの排出ガス規制には適合させ、安全基準も満たしているということになる。ただし、海外ではHZ型の4.2L直6のディーゼル、VD型4.5LのV型6気筒ディーゼルはあるものの、国内では4.0LのV型6気筒ガソリンエンジンのみの販売となる理由も、このあたりが原因でディーゼル投入はない。
また期間限定での生産の理由も同様に2015年6月に後方からの追突における安全基準が変更になるそうで、その際、現在のボディ形状では基準を満たせない。しかも小改良では対応できず、根本的な変更が必要となることから、現在のボディ形状での販売は今回が最後となるということになる。
◆インプレッション
最初の試乗はオフロードコースだ。富士が峰オフロードコースを試乗ルートとして用意し、インストラクターのドライブでコースを1周。使用するギヤやデフロックの使い方などのレクチャーを受ける。副変速機は通常の舗装路を走行するときはH2。滑り易い路面など四輪駆動とするのはH4を選択。そしてエクストラローギヤになるL4の3種類があり、そしてデフは通常オープン状態でスイッチを入れるだけでリヤだけデフロック、フロントをデフロックした四輪デフロックが可能になる。
走行コースは想像を超えるハードなコースで、今回は試乗会であり「ここを試してください」というコース設定だからトライする気になるが、試乗会でなければ躊躇するようなコンディションだ。だからオープンデフの状態では簡単にスタックする。がしかしデフロックを使えばいとも簡単に脱出できるという具合だ。
そのオブストラクションのハードルは、試乗会という設定ではなくオフロードを走行していて遭遇してしまった!としたら、走り抜けることには挑戦しないような状況だ。回避ルートを探す、あるいはUターンするというほどの険しいものだった。
このように、オフロードでの走破力を体験したあとは、オンロード走行を試す。こちらは、かつてのランクルと同様に、同じようなハンドリングと乗り心地であり、懐かしいドライブフィールだった。かつてランクルユーザーだった筆者には、そう感じられた。具体的には、ハンドル操作に対してワンテンポ遅れてクルマが反応する。これは悪路走破などを考慮すると、敏感なハンドリングでは未舗装路が走れないからだ。
今の時代SUVのハンドリングも乗用車ライクに変貌し、正確で俊敏なハンドリングが主流。そんな中、クロスカントリーの四駆らしいハンドリングであり、悪路を走りたくなるハンドリングとでも言うのだろうか、そのレスポンスの遅れというハンドリングが懐かしいのだ。
今回のランドクルーザーにはピックアップもラインアップされている。こちらはバンよりもリーフスプリングの枚数も多く、空荷だと跳ねるトラックらしい乗り心地だった。インテリアは共通でキングキャビンスタイルの4ドア/5人乗り仕様になっている。
空調の調整がレバー式だったり、アンテナがボンネットから垂直に伸びるタイプであったり、サイドミラーが縦長デザインをしていたりと、いたるところにレトロ感があり楽しい試乗だった。国内でのユーザーはこの郷愁感を味わえつつ、実用性も高い70ランクルを手にすることができることになる。