そうだったのか! 日産の働くクルマ試乗会 おっさんは商用車がお好き

マニアック評価vol433
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あまり催されることのない小型商用車(LCV)限定の試乗会に参加した。商用車くくりなので、バンやトラックの試乗だけど日産の販売するクルマの5台に1台は小型商用車なんだそうだ。街中で見かける事業用のクルマをイメージすれば「ふむ、ふむ」と合点がいく。「B to B」の商売と言ってしまえばそれまでだが、個人でもバン、トラックが好きというマニア?はいる。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

ラインアップを見るとグローバルでVANが7機種、TAXIが2、Pick UPが3、Light Duty Truckが4、SUVが2、BUSが1という豊富さ。国内市場だけでもバンが5機種、タクシー2、小型トラック3、バス1、その他2とたっぷりある。そんな中、注目はNV200のEV版「e-NV200」。ガソリンはNV200バネットの名前でデリバリーされているが、そのEV版だ。このe-NV200はリーフのシステムを搭載したバン仕様で、100%電気自動車。用途としては、ルート配送用が中心だ。

エクステリアデザインはEV専用となるe-NV200
エクステリアデザインはEV専用となるe-NV200

いつも決まったルート、あるいは集配範囲などが限定的な使い方に便利。ヤマトとか佐川とかゆうパックが思い浮かぶ。航続距離だってこの手のクルマは数十キロなので、十分カバーできちゃう。深夜電力で充電しておけばコストも下げられる。もちろんガソリン代はゼロ。商用車は「段ボール1個運ぶのにいくらかかるのか?」というコスト計算が常に課題だから、うってつけのモデルだ。ただし、新車価格が高い。だいたい400万円を少し切るくらいで、補助金(最大26.4万円)があっても高級車だ。NV200バネットが180万円前後なので、その差額分をガソリン代で回収するにはちと苦しいという現状だろう。

このe-NV200運転させてもらったら、思わぬハンドリングの良さに驚いた。バッテリーを床下に収納しているため、低重心化ができていて、その結果、操安性の向上という結果をもたらしている。カラ荷の状態なので、なおさら低重心が感じられる。さらにバンは遮音や静粛性、などのNVHに関しては乗用車のようにはいかない。が、このe-NV200はエンジンがないから走行音は静かだし、バッテリーの重量がもたらす重厚感があってしっとりしている。

e-NV200はバンとワゴンがあり、バンは2人乗り/5人乗り、ワゴンは5人乗り/7人乗りを設定
e-NV200はバンとワゴンがあり、バンは2人乗り/5人乗り、ワゴンは5人乗り/7人乗りを設定
バッテリーを床下に搭載するため室内への影響はなし
バッテリーを床下に搭載するため室内への影響はなし
写真はワゴンで3列シート7人乗り仕様。ガソリンモデルと遜色ない
写真はワゴンで3列シート7人乗り仕様。ガソリンモデルと遜色ない
航続距離はカタログ値で190km。近距離のルート配送なら1日走行できるくらいか
航続距離はカタログ値で190km。近距離のルート配送なら1日走行できるくらいか
200Vの普通充電でフル充電まで約8時間。日産のパワーステーションなら4時間に短縮できる
200Vの普通充電でフル充電まで約8時間。日産のパワーステーションなら4時間に短縮できる
シートヒーターやステアリングヒーターなど電気を利用した装備が充実
シートヒーターやステアリングヒーターなど電気を利用した装備が充実
こちらはガソリンモデルのバン5人乗り。ヘッドライトデザインなどが異なる
こちらはガソリンモデルのバン5人乗り。ヘッドライトデザインなどが異なる

どういう理由だかわからないが、ワンボックス好きという人いるじゃない? 荷物を大量に乗せるでもなく、多人数を乗せるでもないのにワンボックスの、しかもバンが好きという人。この人たちにぜひ評価を聞いてみたい。「高級車みたいでイヤだ」とか「しっとりしていてバンっぽくないからダメ」とか「うるさくないじゃん! オレはうるさいのがいいんだ」などの理由が出てくるのだろうか?

NV350キャラバンのなかでも人気の高いライダー
NV350キャラバンのなかでも人気の高いライダー

似た感じのキャラバンも乗った。NV350のガソリンとディーゼル。もちろんライバルはハイエースだ。アピールポイントはTVのCMでおなじみ自動ブレーキを搭載したこと。毎日運転する職業ドライバーさんたちなので、「そんなものいらん。オレの運転信じないのか? その分安くしろ!」という声があるかもしれないが、ひと昔のことを考えれば「ABSがあってよかったでしょ?」と。ま、じきにハイエースにも搭載するんでしょうが、今のところ大きなアドバンテージであることは間違いない。

キャラバンを使ったトランポーター・カスタマイズモデルも展示されていて、キャンプ仕様やMTB仕様、キャンピングカー、車いすのためのリフト付きモデルなどが展示され、リフトの昇降にモーターだ、油圧だとノウハウを語るモデルがあった。また、エルグランドをベースの救急車も展示されていて、お世話になりたくないけど設備が充実しているものほど安心感が高まる。

バンやワゴン、ワイド、ハイルーフ、低床/平床、乗車定員などバリエーションは豊富
バンやワゴン、ワイド、ハイルーフ、低床/平床、乗車定員などバリエーションは豊富
特装カスタムで定評のあるオグショーのデモカーとしても活躍するトランスポーター。車中泊も快適な仕様だ
特装カスタムで定評のあるオグショーのデモカーとしても活躍するトランスポーター。車中泊も快適な仕様だ
こちらはサーファーに嬉しいアイデアが詰まったムラサキスポーツ仕様
こちらはサーファーに嬉しいアイデアが詰まったムラサキスポーツ仕様
MTBのトランスポーター仕様。こうしたカスタムが自在にできることがNV350の魅力でもある
MTBのトランスポーター仕様。こうしたカスタムが自在にできることがNV350の魅力でもある
最大リフト能力350kgを誇るリフター付き。超重量物の載せ降ろしも余裕!
最大リフト能力350kgを誇るリフター付き。超重量物の載せ降ろしも余裕!
福祉車両のチェアキャブ。NV350のハイルーフなら大型車いすのまま乗ることができる
福祉車両のチェアキャブ。NV350のハイルーフなら大型車いすのまま乗ることができる
e-NV200の電力を活用したキッチンカーという提案もあった
e-NV200の電力を活用したキッチンカーという提案もあった
エルグランドをベースにした救急車
エルグランドをベースにした救急車

海外モデルにも試乗できた。NP300NAVARA(ナバラ)とTAIAN(タイタン)。アメリカや東南アジアに行くと、とにかくピックアップ・トラックをたくさん見かけると思う。とくにアメリカではお金持ちで豪邸に住んでいても、トラックは持っているというケースが多い。大都市のダウンタウンではあまりいないかもしれないけど、少し郊外に出ればみんな持ってるイメージ。COSTOCOとかDIYのホームセンターもあるから、バカでかいものを買う習性がアメリカ人にはあるんでしょう。それにはトラックが必要になる。

全長が6.2m、全幅が2m以上もあるフルサイズピックアップのタイタン
全長が6.2m、全幅が2m以上もあるフルサイズピックアップのタイタン
2.3Lディーゼルエンジンを搭載するNP300ナバラ
2.3Lディーゼルエンジンを搭載するNP300ナバラ

アメリカ人は動く応接間が好きなようで、かつてのアメ車はそんな感じ。キャンピングカーだってキャラバンとかのレベルではなく、グレイハンド・バスを改造しちゃうという人たちだから、ピックアップ・トラックの室内も豪華。ソファのようなレザーシートやきらびやかなインテリア。力強さを感じさせるエンジン音などアメリカンなトラックはまた、よだれの出るアイテムかもしれない。

まじめな話をすると日産は小型商業用車=LCVはグローバルで見たとき、コア事業となるレベルのエリアが多い。例えば日本では18%、中近東では57%、南アフリカで63%、メキシコ23%、南米22%、北米10%などがLCVのシェアで、事業としては重要であることが分かる。国内でも日産車販売のLCVが占める割合が年々増加傾向で2013年度が16%だったが15年度の1月~4月期で20%に達している。もっとも乗用車の占める割合が減って商用が増えたという見方もできるが・・・。ちなみに、LCV販売台数ベスト3はNV100クリッパー、キャラバン、ADという順。

EVトラックの「e-NT400」。「アトラス」をベースに「リーフ」のユニットを搭載。市販前のモデルだが実証運行は始まっている
EVトラックの「e-NT400」。「アトラス」をベースに「リーフ」のユニットを搭載。市販前のモデルだが実証運行は始まっている

商用車マーケットは主に途上国での需要が高いだろうし、求められる性能も乗用車とは違うもので、結果的に日本で乗用車ばかりに乗っている中でこうしたLCVに乗ると新鮮で楽しい。バネットやセレナのワゴンはかつてキャブオーバーだった。エンジンがお尻の下にあって、振動やエンジンをお尻で感じていた。いつの間にワゴンではキャブオーバーは絶滅したが、LCVではばりばり現役のレイアウトだ。子供の頃、バスの一番前、電車の一番前から景色を見てた人は、LCV好きかもね。

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