【トヨタ ハリアー PHEV 試乗記】十分なEV航続距離。そしてしっとり心地よい

トヨタ・ハリアーにPHEVモデルが2022年10月末から販売されているが、ようやく試乗することができた。ハリアーPHEVは先行して北米で販売されていただけに、待っていたユーザーも多いことだろう。

トヨタ「ハリアー PHEV」ボディカラーはプラチナホワイトパールマイカ

ハリアーはガソリンモデル、ハイブリッドモデルのそれぞれ2WDと4WDから選択できるが、PHEVはE-Fourのみの設定で、しかもグレードはトップグレードの「Z」のみとなっていることからハリアーのフラッグシップモデルに位置付けているわけだ。

価格はハイブリッドのE-Four・Zグレードでレザーパッケージが514万8000円。PHEVは620万円とその差は105万2000円の開きがある。補助金があってもその差額は大きい。その要因のひとつにはバッテリーサイズ=価格が影響しているからだ。同じリチウムイオンバッテリーながらPHEVは総電力量を18.1kWhまで増やし、EV航続距離は93kmと長く、日常使いでは十分なEV走行距離が稼げているわけだ。そこをユーザーはどう判断するかだろう。

EV走行と言えば、ハリアーPHEVはRAV4のPHEVと同様に急速充電には対応していない。200Vの普通充電だけだ。欧州では日常の移動はEVで移動し、長距離移動はエンジンで走るという考え方が一般的だ。つまり、アウトバーンなど高速道路のアベレージ速度は高く、モーター走行では効率が悪くなり、電費に影響する。であれば、エンジンを使うという考えだ。だから急速充電は不要ということになるのだ。ハリアーPHEV、RAV4 PHEVが急速充電に対応していないのは、そうした考えなのだろうか。

そのほかにもいくつか理由はあるようだが、概ねそうした思考が根底にはある。しかしながら、国内で販売する場合、果たしてそれでニーズにマッチするのだろうか。もちろん、急速充電に対応するとなれば、さらに車両価格は上昇してしまうのは間違いないのだが。

ハリアーPHEVは200Vの普通充電のみ対応している

PHEVのパイオニアである三菱アウトランダーPHEVは急速充電に対応しており、当初は不要論も世間にはあったが、出先で充電することで、ガソリンを全く使わないで走行できる事実などから、後発の国産PHEVには急速充電に対応するモデルが増えているのだ。

実際マツダ・CX-60のPHEVモデルでは220kmほどの走行距離で一回の急速充電により燃料は4リッターしか消費しなかった。50km/Lということになる。ちなみにハリアーPHEVのWLTC燃費は20.5km/Lだ。

CO2の削減という課題に対し、電気を作る時に排出するCO2と原油からのガソリンを生成しエンジンで燃焼し排気するCO2を直接比較するのは難しい。つまり車両からはCO2を一切排気しないEV車も電気を作る段階で排出はしているし、その電力はどうやって作っているかによっても評価は変わる。一方でガソリンを使えばエンジンからの排気はあるわけで、どっちが正解というのは、現段階では難しい。

またトヨタのハイブリッドシステムはエンジンでの駆動とバッテリーへの充電を同時に行なう動力スプレッドタイプであり、このPHEVでも同様の機構を備えている。そのためバッテリー残量が減るとエンジンで充電もしながら走行するため、EV走行はかなりの広範囲で走行できることになる。

さて、ハリアーPHEVはシリーズのトップモデルに据えられているが、実際の走行はどうだろうか。車重がハイブリッドより約200kg重くなっている。その重さが重厚感につながり、かなり高級な印象になっているのだ。

足回りも重量増に対し専用開発されており、乗り心地もいい。重さをネガな方向ではなく、しっとりとした動きやゆったりとした動き、振動の収束などへの効果にうまく利用している印象だ。

そのためステア応答もややゆったり系にしてあり、スポーティなハンドリングではないものの応答遅れの小さい仕上げにして高級感につなげていると感じた。

システム最高出力は225kW(306PS)

ハイブリッドとの大きな違いはエンジンは共通の2.5LのA25A-FXSだが、モーター出力が大幅にアップされている。フロントモーターは88kWのハイブリッドに対して134kW(182ps)までアップし270Nmもトルクがある。さらにE-Four用のリアモーターも40kW(52ps)121Nmあり、4WD性能にも磨きをかけているわけだ。

ボディサイズは全モデル共通の全長4740mm、全幅1844mm、全高1660mm、ホイールベース2690mmで最低地上高は190mmとなっている。

エクステリアは専用のハニカムグリルデザインやフロント・ロアバンパーや専用アルミホイールを装備し、全体にメッキ類が抑えられたデザインだ。インテリアはブラック基調にダークレッドの色調でまとめ、高級感を出している。そして今回12.3インチの大画面ディスプレイと同じく、TFTカラーメーター+カラーマルチンフォメーションディスプレイを装備した。

諸元表

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