トヨタ・クラウンのシリーズ最上位に位置するクラウン・マジェスタを試乗してみた。これまで、後席のためのモデルという印象だったものが一変。ハンドルを握っても快適で、ゆとりある走りも同居し、そしてもちろん豪華なホスピタリティも充実したものだった。
2013年9月9日に発売となった新型クラウン・マジェスタは、クラウンシリーズのトップに位置し最高級の「おもてなし」モデルであり、これまで法人需要がおよそ7割を占めるクルマだった。つまり、後席を重視したモデルであり、運転してどうか? ということよりも後席の居住性や快適性などが評価されてきた。
リヤシートの余裕ある「おもてなし感」はさすが
新型マジェスタもその後席へ求められる内容に大きな変化はなく、満足のいくホスピタリティを目指している。ホイールベースはロイヤル/アスリートより75mm長く2925mmもあり180cmの筆者でも余裕の広さだ。ボディサイズは全長4970mm×全幅1800mm×全高1460mmで、国内専用モデルであるため、5m以下、1800mm以下は守られたサイズになっている。
それでいて、室内に乗り込めば広々とした空間があり、運転席も余裕の広さを感じるとてもルーミーな雰囲気がある。試乗車はFバージョンでマジェスタの最高級グレード。レザーシートはもちろん、トリムまわりにもふんだんにレザーが使用され高級感たっぷりだ。またウッド調のパネル類もグラデーション加工やメッキ加飾など大人なインテリアを創りだしている。
後席ではシートバックの角度が深く、ソファに身を委ねるかのようにリラックスした座り方ができる。インテリアは樹脂パーツであるにもかかわらず、本物の木目材としか思えないほどの質の高さがあり、調度品のレベルと言っても過言ではない。高級かつ豪華さも兼ね備えたものになっている。また、運転席にある空調スイッチも2つ調整スイッチがあれば運転席と助手席のデュアルであると思い込むが、マジェスタは前後で室温調整ができるデュアル式であり、このあたりからも後席おもてなし感が伺える。
エンジンラインアップはハイブリッドだけの1機種。V型6気筒3.5Lガソリンエンジンにモーターを組み合わせたタイプで、エンジン単体出力292ps/354Nm、モーター出力147Kw(200ps)/275Nmで、システム合計は343psというハイパワーだ。先代に搭載していた4.5LのV8型と遜色ない出力を持っている。ハイブリッドはロー、ハイの切り替えがあるリダクションギヤを装備し、モーターの連続超高速回転を抑える機能も備えている。
製品企画の岩月健一氏は、こんなことも言っていた。「法人需要とは言え、今の時代に大排気量で燃費の悪いモデルは使いにくい、というご意見があります。マジェスタはV型8気筒のイメージが強いですが、ハイブリッドのおかげなのか、意外にもV型6気筒は障害にならなかったです」と。
このV6型ハイブリッドはレクサスGSに搭載するシステムと基本的には共通のユニットだが、マジェスタ用により静粛性が高まるように、回転数、出力、音というパラメーターで制御を変更しているという。もちろん燃費も背反のないように慎重に変更がされている。JC08モードは18.2km/Lと省燃費だ。また、エンジンマウントも静粛性を高めるために、レクサスGSとは異なる方法でマウントし、徹底的に音、振動には拘った開発がされている。
■俊敏なイメージのステアフィールに進化
通常走行ではEV走行も交えながら無音に近い静粛性で走行し、ひとたびアクセルを踏み込めば先代V8型を凌ぐ力強い加速をし、パワー志向のユーザーでも不満はないだろう。先代クラウンに搭載していた高出力タイプのハイブリッドユーザーも取り込むことが可能だ。
ハンドルを握るフィールとしては、全体的に先代よりも引き締まった印象がある。これがこれまでのマジェスタと異なるポイントだ。試乗コースが横浜の市街地、首都高速という範囲なので、ワインディングでのコーナリング性能などは試せなかったものの、カーブを曲がる際のロール感やヨーモーメントの感じ方などは、俊敏な方向へシフトしている。そのため、運転しても楽しく、快適な印象を持った。
サスペンションではロイヤル、アスリートと同じく開断面のロアアームを採用するなど、繰安と乗り心地を追求したものになっている。また3.5LのV6型を搭載するアスリートにしか採用していない、走りのデバイスである制御式ダンパーをマジェスタにも採用し、走りと乗り心地を追及している。さらに電動式パワーステアリングにもギヤ比可変式のVGRSを採用。車速に応じてギヤ比が変化し操舵角が変化するが、それと気づかされない制御が心地よい。
また、安全装備ではミリ波レーダー式プリクラッシュセーフティを標準装備し、先行車や対向車に対して照射範囲を自動調整するアダプティブハイビームなども装備している。
新型マジェスタはこれまでの法人需要を、より高いレベルで満足させるだけの後席の乗り心地と上質さを磨き、ドライバーズカーとしての一面も加えてきたと言える。マジェスタにしかできないもの。それはロイヤルの乗り心地とゆったりした空間、アスリートのもつ俊敏さ、若々しさなど、それぞれのいいところをさらに延ばしてきたのがトップ・オブ・クラウン新型マジェスタなのだ。
■クラウン・マジェスタ 諸元&価格