2017年7月10日、6年振りのモデルチェンジを受け、10代目となる新型カムリが発売された。XVH70型となった新型カムリは、セダンの復権を目指し今回からトヨペット店、カローラ店、ネッツ店(東京地区はトヨタ店も)という3チャネル販売体制としている。
■エンジン、プラットフォームなどをすべて一新
XV(H)70型は、2017年1月のデトロイト・モーターショーでワールドプレミアを行なった。カムリはトヨタにとって世界100ヶ国以上で販売され、特にアメリカ市場では年間38万台を販売する基幹車種であり、中国でも10万台以上販売されるなどカローラとともに双璧をなすグローバルカーだ。
このグローバル・ミッドサイズセダンのカムリは、ミッドサイズ・カンパニーが開発を担当し、今回からTNGA-Dプラットフォームを採用。さらにエンジンも「ダイナミックフォース・エンジン」と名付けられた、最新世代を搭載し、電装系も一新するなど、プラットフォームからパワートレーンまですべてを刷新した画期的なモデルだ。
なお、日本では2.5Lのダイナミックフォース・エンジン+THS-Ⅱというハイブリッドモデルのみの販売だが、その他の諸国では2.5Lダイナミックフォース・エンジン+8速ATの組み合わせも販売される。
新型カムリの開発スローガンは「前例のない変革」とされ、開発コンセプトは「官能へと、極まる」とされている。走りや乗り心地などを大幅に高め、先進技術を積極的に投入し、質感の高い、気持ち良い走りを目指し、さらにデザインもセダンとしての美しさを改めて定義している。
TNGA-Dを採用したことで、低重心で、重心位置もよりドライバーの近くに移され、走りの基本性能を高め、優れた乗り心地や静粛性、意のままのハンドリングを実現。また運転のしやすさ、ラゲッジ容積の大きさ、トップレベルの安全性能などを備え、グローバル・ミッドサイズセダンにふさわしい作り込みを目指している。
■デザイン、パッケージング
デザインはクーペ状のルーフを持ち、低く流れるようなラインと、ロングホイールベース、ショート・オーバーハングのしっかりとしたフォルムを組み合わせ、低重心のシルエットでワイドスタンスで走りのポテンシャルをアピールする。
フロントマスクはキーンルックを基調に、遠くからでもカムリと識別できる印象的な顔つきとなっている。またルーフはリヤ部分を引き伸ばすことでリヤ席の居住スペースを確保するなどパッケージングを確保しながら、クーペ状に見せる配慮を加えている。
ボディサイズは、全長4885mm、全幅1840mm、全高1445mm、ホイールベース2825mmで、グローバル・ミッドサイズセダンに合致しているが、日本では全長はクラウンとほぼ同等だが全幅はカムリが40mm上回っている。
インテリアは「官能的な動感」と「知的な洗練」を両立させ、サテンメッキ材やピアノブラックパネル、本革風のソフトパッド材を駆使することでプレミアムクラスに匹敵する仕上げとなっている。またTNGAプラットフォームを採用したことで、インスツルメントパネルの高さを抑え、前方視界を向上。そのために新たにコンパクトなエアコンユニットなどインスツルメントパネル内のユニットも新設計となっている。
またメーター類は、T-Connect SDナビゲーションシステム(8.0インチTFTカラー)をインスツルメントパネルのセンター上部に、マルチインフォメーションディスプレイ(7.0インチTFTカラー)とカラーヘッドアップディスプレイをドライバー正面に配置。メーターは2眼の自発光式としている。
トランクのラゲッジ容積は524Lと大きく、このクラスにふさわしい容量となっている。ハイブリッドでこの容量を実現するために、ハイブリッド用バッテリーはリヤ席の下側に配置し、補助バッテリーもトランクルームの床下に収納されるレイアウトになっている。
■パワートレーン
新型カムリは、日本ではハイブリッドモデルのみの設定で、新開発の2.5L A25A-FXS型4気筒エンジンを搭載する。ダイナミックフォース・エンジンと名付けられたこのエンジンは、高効率と高出力を両立させることをコンセプトに、トヨタの最新スペックを盛り込んだエンジンだ。
A25A型は最適なボア×ストローク比(87.5×103.4mm。ボア・ストローク比1.2)、高圧縮比、D4-S(直噴・ポート噴射のデュアル噴射)、吸気側カムは電動可変バルブタイミング、電動ウォータターポンプ、電動サーモスタット、可変容量オイルポンプ、大量EGRなどを備え、低負荷運転時には吸気遅閉じのアトキンソンサイクル運転を行なう。
バルブ挟み角は従来より拡大した41度で、これに合わせてストレート吸気マニホールドとし、充填効率を高めてパワーを追求。また吸気ポートの燃焼室側はレーザークラッド加工により吸気流を利用して強いタンブル流を発生させて燃焼速度を速めている。
ハイブリッド用のFXSは、さらに常時アトキンソンサイクル運転で、圧縮比は14としている。この結果、最大熱効率は世界トップレベルの41%を達成している。
THS-Ⅱは、プリウスと同様の平行軸ギヤ配置としてユニットの左右幅を短縮しているが、ユニットそのものはプリウスよりトルクが大きいためワインサイズ大きくした高トルクタイプを採用。また出力を重視した新エンジンとの組み合わせにより、リニアでレスポンスの良い加速を実現している。また従来からの電気的無段変速に加え、擬似的にステップ変速する6速シーケンシャルモードも備えている。
バッテリーは、新開発の小型化されたリチウムイオン・バッテリー(4.0Ah/259V)を採用。リヤシートの下側にレイアウトしている。
■ボディ&シャシー
ボディは新たに環状骨格構造を採用し、フロントのバルクヘッド上部のカウルを閉じ断面構造に、リヤウインドウ下側のトランク開口部は環状構造とするなどボディのねじり剛性を大幅に向上させている。
また前後のサスペンション取付部には補強材を追加し、路面からの入力に対して高剛性化。さらにレーザースクリュー溶接や構造用接着剤を多用することで、剛性や質感を高めている。高強度のホットスタンプ材はルーフサイドレール、Bピラー、フロントフロアクロスメンバーに採用している。
サスペンションも新開発され、フロントはストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式となっている。TNGA-Dプラットフォームの採用により、低重心化されるなどシャシーの基本資質の高さと新型サスペンションにより意のままのハンドリングを実現しているという。
電動パワーステアリングはレクサスLCに続き、新開発のラック平行式電動パワーステアリングを採用。ベルト駆動+ボール・スクリュー式ラックギヤ構造により切り始めのレスポンスが軽快で、操舵応答に優れたステアリングフィールとしている。
セダンならではの高い次元の静粛性も追求され、エンジンマウントは4点とも液封式を採用。さらに大型のフロアサイレンサー、差厚フロアパネル、厚みのあるダッシュサイレンサーの採用、ボディ骨格の振動特性の向上などにより、徹底した静粛性向上対策を採用している。
■ドライバー支援システム
新型カムリはトヨタ・セーフティセンスPを採用している。ミリ波レーダーと単眼カメラを用い、プリクラッシュセーフティ、レーンデパーチャーアラート(ステアリング制御付き)、全車速追従機能付きレダークルーズコントロール、オートマチックハイビームという、これまでのセーフティセンスPの機能に加え、死角の車両検知・警報するブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックアラート、インテリジェントクリアランスソナー(自動ブレーキ付き)という3つの機能を新たに追加している。
カムリというブランドはトヨタにとっては、セリカ/カムリからスタートし、カムリは1982年にFF最上級セダンと位置付けられ、現在ではトヨタの屋台骨を支えるグローバル・セダンに成長している。
しかし日本国内ではしだいに存在感が薄れつつあったが、今回の新型カムリでは改めて上級セダンの復権を目指し、販売体制も強化。大型セダンならではのワイド&ローのスタイル、走りと燃費を両立させたハイブリッド・システム、意のままのハンドリングなどクルマ本来の魅力を訴求している。果たして大型セダンの復権は実現できるのか?
今後に注目したい。