アクア・クロスオーバー試乗記 市街地の日常使いで強みを発揮

マニアック評価vol544
2017年6月にアクアはマイナーチェンジを受け、X-URBANを新たなグレード「CROSSOVER」として設定した。エクステリア、インテリアをはじめ多くの改良が行なわれたアクア・クロスオーバーに試乗したので、詳細をお伝えしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 フロントイメージ
アクアX-URBANがクロスオーバーとなってマイナーチェンジ

ハイブリッド専用モデルのアクアは、このマイナーチェンジでエンジンの改良、ハイブリッド制御の見直しなどを行ない、クロスオーバーグレードの燃費はJC08モードで34.4km/Lとなっている。搭載するエンジンは1.5LのNZ-FXE型でアトキンソンサイクル、EGRを採用するなど、エンジンの高効率を目指すエンジンだ。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 サイドイメージ
黒の樹脂モールでクロスオーバーらしいエクステリア

出力は74ps/111Nmで、これにモーター駆動のハイブリッドシステムTHSⅡが組み合わされている。モーター出力は45kw/169Nmでリダクション機能付きの無段変速機を搭載している。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 エンジンルーム
1.5Lガソリンエンジンにモーターが組み合わされたTHS2ハイブリッド

また、このマイナーチェンジではボディ剛性のアップや装着タイヤのサイズアップ、サスペンションの見直しにより、乗り心地の改善といったところまで変更されている。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 16インチアルミホイール
16インチ専用アルミホイールを装着

エクステリア、インテリアのデザインにも変更があった。フロントデザインでは、ヘッドライトやフェンダー、フード、バンパーなどのデザインが変更され、洗練されたイメージに変化している。リヤはコンビネーションランプ内のデザイン変更とともに、リフレクターをバンパー下部に新規設置し、安定感のあるデザインにしている。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 コックピット

インテリアでは、センターメーターにTFTマルチインフォメーション・ディスプレイを標準装備。センタークラスターは一体となった面構成とし、新たにソフトレザー(合皮)のシートを採用するなど、先進かつ上質な印象となるよう変更されている。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 インテリア
ソフトレザーを新たに採用し上質な印象

■試乗レポート

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 高速道路走行風景
高速道路も含めた長距離ドライブをしてきた

今回の試乗は合計走行距離927.1kmで、高速道路、市街地を中心に走行した。燃費に関しては特に意識した走行とはせず、また、ワインディングは走行していないので、スポーティな走行ということもしていない。あくまでも通常の乗り方で測定した結果、23.2km/Lという燃費だった。全体に高速道路の割合が多かったため、予想よりは燃費が伸びなかったということだろう。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 インフォメーションディスプレイ
エコ運転を意識させる表示もアイディア満載

メーターには、全走行に対してEV率が表示されたり、「エコウォレット」という、今いくら消費したのかを円に換算して表示するモードも備えるなど、燃費を意識しやすい表示が多い。ちなみに、927kmの走行に対して5194円消費と出ている。またEV率は14%で、高速走行の多さを物語っていた。ガソリンはもちろんレギュラー仕様だ。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 ナビゲーションモニター
ナビの角度なのか、日が差し込むとモニターが光って見えない状況が続く

アクアというクルマのキャラクターは、日常のご近所使いというのがメインではないだろうか。稀に高速道路を使って長距離にも出かける、というキャラをイメージする。

そのイメージからすると、じつに使い勝手を考慮した造りになっていることに感心する。ポジションとしてはあくまでも実用車であるのだが、アームレストが欲しいなぁと思ったら、付いていた。サングラスやスマホなどモノを置く場所は?とみるとスッとおけるトレイがたくさんある。バニティミラーがあればいいなぁと思ったら、これも付いている。というように、至れり尽くせりと言ってもいいだろう。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 タッチパネル式モニター
ナビの使い勝手はいいが、タッチパネルを左手で操作するのが難点

また、ナビの賢さも評価が高い。トヨタ車全体に言えるのだが、インターフェイスの分かりやすさや、リルートをはじめ「変更」に対する適応能力が高いと感じる。しかも検索スピードが速いのでストレスを感じることも少ない。さらに試乗車のナビは音声にも対応しており、上級車用の装備と言ってもいいだろう。

一方で、今回の試乗はこうした日常的に1日の走行距離が30km未満というような使い方ではなく、2日間で1000km程度を走行するハードな使い方だった。そのため、日常では感じないところも顔を出していた。

ハイブリッド専用のアクアはやはり燃費重視のモデルだけに、高速連続走行は苦手だ。東名高速の牧之原付近の長い上り坂では、エンジンは唸り速度も乗らない。追い越し車線を走れる速度まではかなり全開で踏み続けなければならず、物足りなかった。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 EVモード切り替えスイッチ
EV走行モードも選択できる

100km/Lでの静粛性ではエンジン音は聞こえず、フロアからのロードノイズだけが聞こえ、まずまずだ。これもBセグメントの量販モデルを考慮すれば、セグメントレベルという言い方になる。が、市街地での静粛性は高い。もちろんEV走行の場面もあるし、加速時に穏やかなアクセル操作であればエンジンが唸ることもないからだ。

ハンドリングでは高速走行時の直進の座りがもう少し欲しいが、これもメインの使い方が日常ということを考えると、操舵感が重くなるより、軽めのほうが好ましいという判断だと思う。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 リヤイメージ
乗り心地は改善したというが、もう少し上級なダンパーが欲しい

乗心地では、市街地、高速ともに不満が残った。ピストンスピードの遅い細かな動きの時はダンパーが突っ張ったようなフリクションを感じ、高速走行や大きい入力などピストンスピードの速い時でも減衰が速いとは言いにくい。もう少し高価なダンパーが欲しいという印象だった。

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 ペダル
ブレーキペダルの左にある膨らみがフットレストのようには使えず、邪魔なでっぱりだ

ドライビングポジションでも長距離だと気になるポイントがあった。つまり、長時間同じポジションでの運転姿勢が取りにくく、上半身をひねったり、肩に力を入れてみたり、左足を畳んでみたりと、何かしら身体を動かしたくなるのだ。特に左足の置く位置で落ち着きがなく、伸ばしたり、畳んだりを繰り返していた。シート自体も座面の傾斜なのかサイサポートが強く、ファミリーカーとしては珍しいかもしれない。

これらの気になったポイントも高速道路を連続長時間という状況であったため、顔を出したと思う。前述のようにクルマのキャラにあった、日常使いの短距離、短時間利用という状況だと、使い勝手の良さが目立ち、クルマの性格にあった使い方をするのがベストだと感じる試乗だった。

■価格

トヨタ アクア クロスオーバー 試乗 価格表

COTY
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