トヨタ アクア試乗記(Zグレード 1.5Lハイブリッド E-Four)10年先もハイブリッド

トヨタ アクアが10年ぶりにフルモデルチェンジを行ない、10年先を見据えたとする新開発のハイブリッドで誕生した。早速試乗してきたのでお伝えしよう。

トヨタのプレゼンテーションでは、デザイン、安心安全、進化した走り、そしてもしものときの防災を視野にいれた装備という4点をポイントに説明していたが、具体的に強調されたのは新型ハイブリッド用バッテリー、快適ペダルによるドライブフィール、静粛性の向上、安全装備の標準化といったところだ。

今回の試乗は高速道路と一般道で、どんな進化が感じられるのかをテストドライブしてきた。

滑らかな乗り心地

最初に感じることは静粛性となめらかな乗り心地だ。試乗車が最上位グレードの「Z」であるため、スイングバルブを搭載したダンパーを装着し、微低速域でのなめらかな乗り心地になっている。路面状況が綺麗な場所では、クラスを超える滑らかさがあり静粛性も高いので、従来のアクアとの違いを大きく感じる場面でもあった。一方、路面状況が悪い場所では音と振動がそれなりに出るクラスレベルという印象だった。

もっとも、その良いときと良くない時の差が大きく、全体の引き上げを期待したくなるというのが素直な印象。もうひとつ気になるポイントとして、ステアリングに微振動が常に伝わってくることがあった。やはり路面がキレイであればあるほど、ステアリングの微振動は気になってしまう。

新規開発したバイポーラ型ニッケル水素バッテリーだが、簡単に説明すると集電体の表と裏に(正)(負)電極を設置しているのが特徴。従来型ニッケル水素バッテリーは集電体をいくつも重ねたセル同士をリード線で接続していたが、面と面で通電するのでコンパクトにでき、通電面積が広くなるので電気抵抗が低減され大電流を流すことができる。さらに部品点数が少なくコンパクトになるため、より多くのセルを搭載できるという特徴がある。

つまり実用面でいうと従来型アクアのニッケル水素電池よりスペース効率が向上しより多くの電池セルを搭載することで、約2倍の出力を得られるようになり、EV走行の可能速度域の向上というメリットを生んでいる。もちろん省燃費にも貢献し35.8km/Lというコンパクトカークラストップレベルの低燃費としている。さらにトヨタ初搭載となる「パワープラス」モードで「快適ペダル」運転ができるようになった。これはアクセルペダルをオフにしたときの減速Gを強くしており、ワンペダル運転がしやすくブレーキペダルとの踏み変え回数が少なくすることができる機能だ。

こうした走りの進化は、実際に加減速の扱いやすさや思い通りの加速、スムースな走り、上質な加速といったことに繋がるわけだ。

これが実用面であれば、意図しない加速度変化やギクシャクする加速などがなく、滑らかに走れるということになる。さらに踏み込めば思い通りの、力が湧いてくるような、後押ししてくれるような加速感があり、爽快な気分で走行できることを体感する。

ボディはTNGA-Bでヤリスと共通のプラットフォームだが、クルマの性格としては、ヤリスは走りを意識した俊敏な動きと高剛性ボディによるしっかり感が特徴だ。一方、このアクアはその高剛性ボディを上質さと安心感に寄与させているモデルといった感じだ。

走りの上質さは状況によってクラスを超える上質な乗り心地が提供され、しっかりしたボディは安心感につながっていると感じる。

パッケージでは全長4050mm、全幅1695mm、全高1485mm、ホイールベース2600mmで従来型に対してホイールベースを+50mm延長している。そのスペースは後席のスペースに生かされヤリスの後席に不満があればアクアで解消できるというわけだ。

インテリアはかなり上質な印象を受けた。トップグレードということもあるが、ソフトパッド素材を多用し樹脂むき出しの部分は皆無。樹脂そのままだとしてもシボ加工などが施してありチープさが消えている。また「Z」には10.5インチサイズのディスプレイが標準装備されており、そうした視覚からも好印象を受ける。

運転席からの視界では、ワイパーブレードの停止位置を下げることでスッキリとしたフロントウインドウの視界があり、Aピラーは細く、サイドミラーを後退させ三角窓を拡大することで右左折時の視界確保など、よく見える視界で好印象だった。反面後方視界では見にくいエリアはあった。

安全装備では最新の「トヨタ セーフティ センス」を全車に標準装備している。実際にテストする場面はなかったがワーニング系は実体験できた。さらにアドバンスドパークも装備されており、自動で駐車するシステムの進化はすごかった。

試した場面は白線のある駐車スペースで後退で止める場所。スイッチで起動させると後はハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジも全て自動で操作され枠線内に素早く駐車していた。運転に慣れている人であれば、気持ちよく自動で駐車したという印象になるだろが、運転に不慣れな人だとあまりのスピーディさに驚くことになるだろう。つまり、自分で操作するより素早く操作され、スピーディに駐車されるためだ。それほど実用性が高いパーキング機能だと感じた。

ちなみに試乗車はE-Fourで、発進時のアシストをする生活四駆を装備していた。メーカーによっては後輪の駆動力にこだわり生活四駆を嫌う傾向のある車両もあるが、アクアでは発進アシストで十分という答えを出しているようだ。そのため、日常の走行エリアでE-Fourのフィーリングはほぼ感じられる場面はない。

アクアはエコカーを普及させる目的で10年前に発売され、今回の2代目は10年先を見据えたハイブリッドカーとしている。トヨタは温室効果ガス削減に対し、走行中に排出されるCO2だけに注目してEVがベストという結論は早計だとしている。クルマの製造や発電にともなうCO2排出もあるため、ライフサイクルで考える必要があると訴えているのだ。

そのため、新型アクアとEV車をライフサイクルで比較した場合、同等の温室効果ガス排出量になるとトヨタは説明している(試算の電源構成等不明)。したがって10年先を見据えたハイブリッド車という位置づけにしているということだ。<レポート:髙橋明/Akira Takahashi>

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