「アクア」が改良を受け、2013年12月から発売。この改良でJC08燃費は37.0km/Lとなり、9月にホンダ・フィットが達成した36.4km/Lを破り、PHEVを除くハイブリッド車のカテゴリーでNo1のポジションを奪還した。アクアの開発担当者は「フィット対策で今回の改良をしたと思われていますが、デビューから2年目のランニングチェンジは当初から計画されていたのです。そう言っても信じてもらえませんけど」と語っている。
今回の改良は、1.5Lの1NZ-FXE型エンジンの摩擦抵抗のさらなる低減、ハイブリッド制御システムの改良により、これまでの燃費を1.6km/L上回る37.0km/Lを達成したのだ。
アクアは2013年1月から12月の1年間で26万2367台が販売され、プリウスを上回って国産車No1のベストセラーカーとなっている。中心価格帯が190万円のアクアは、手頃な価格のハイブリッド車としての強みを発揮したと考えて良いだろう。
さて改良されたアクアの走りはどうか。
言うまでもなく燃費が改良されたからといって走りの違いを体感できるわけではない。身体で実感できるのはサスペンション、ボディに手を加えたことで、乗り心地がマイルドになり、ボディ全体の質感が向上したということだ。言い換えれば乗り心地に安っぽさがないということだ。
加速感はこれまでと変わりなく、発進加速はモーターのトルク感があり、緩やかな加速でもアクセルを大きめに踏み込んだ加速でも不満はないが、やはり60km/h以上からの追い越し加速は、アクセルを大きく踏み込んでも物足りない。単純に1.5Lのガソリンエンジン車と比較しても高速域の追い越し加速は鈍い。この高速域での伸び、追い越し加速に関してはフィットの方が上回っている。
この動力性能はやはり燃費を最優先した出力特性、スロットル特性によるところが大きい。アクア=ハイブリッド車=燃費という構図の影響があるといえる。
ステアリングは軽めで滑らか。乗り心地も、静粛性などのバランスは良好でハンドリングは軽快だ。これはアクアの持ち味だろう。
ステアリングを握っていて一番気になるのは、やはりインテリアにチープ感があることだ。これは採用されている素材の問題ではなくデザインによるところが大きく、このあたりは次期モデルの課題だと思う。
■G’sアクア
改良版アクアとほぼ同時期となる2013年12月9日から、アクアのスポーツ仕様となる「G SPORTS アクア」(通称はG’sアクア)も発売された。「G’s」シリーズは、マニア向けというよりもっと幅広いユーザー層向けのスポーツ仕様車という位置付けで、価格も+40万円程度とされている。
「G’s」の名称が付けられたクルマは、GAZOOレーシングのドライバーが主としてシャシーをチューニングしている。それ以外にエクステリアやインテリアにアクセサリーパーツを装備し、標準モデルとは異なる個性を主張したモデルだ。
今回試乗したモデルはアクアのGグレードをベースに、コイルスプリング、ダンパーを専用チューニングしたサスペンションを採用。さらに、ボディに補強材や溶接スポット打点を追加するなどボディ剛性を向上させ、専用17インチアルミホイールや高性能タイヤを採用している。一方でハイブリッドのパワートレーンはノーマルのままだ。
エクステリアは専用デザインのブラックにメッキを加えた前後バンパーを採用し、「G’s」エンブレムを追加。フロントにLEDイルミネーションビームやブラック加飾のヘッドランプなどで違いを演出している。
インテリアでは「G’s」ロゴ付の専用スポーティシート、本革巻きステアリング、赤色のシフトセレクターノブ、アルミ・ペダルなど定番パーツも備えている。内外装ともにデザイン的には派手で若いユーザーを意識しているのだろう。
ステアリング握って走り出すと、確かに固めのサスペンションだが、意外なほど路面の継ぎ目などのハーシュネスはマイルドで、乗り心地は悪くない。しかし、もう少しスピードが高くなると固められたサスペンションという感じが実感できる。またボディが明らかにベース車よりしっかりしているので、ステアリング操作に対して一体感がある。こうしたサスペンション、よりハイグリップなタイヤを備えているのに対して、動力性能は標準そのままのため、この点は物足りなさを感じたのが正直な感想だ。
しかし、「G’s」のコンセプトは、軽快さのあるこのアクア・クラスのクルマが一番マッチしていると実感した。