11代目となるカローラ・アクシオ/フィールダーが登場したのは2012年5月で、今年(2013年)の8月にハイブリッドモデルを追加した。このほどこのハイブリッドモデルに試乗する機会があったので、改めて考察してみたい。
ここ最近はトヨタ車の国内での販売はアクア、プリウスのツートップが定位置を占めている。日本のマーケットではハイブリッド車がメインストリームだということを実証しているといえるが、かつて長らく国内販売の王座を独占していたカローラにハイブリッドモデルが追加されたのはある意味当然だろう。近年のカローラ・アクシオ/フィールダーは、ユーザー層の高齢化傾向が著しく、その一方で法人ユーザーが定着するというクルマとしては難しいポジションにあるが、ハイブリッドモデルを投入することで流れは変わるのだろうか?
実際に2013年8月6日にハイブリッドモデルが発売されてからの受注は、約1ヶ月で2万2000台ときわめて好調で、このままの勢いが続けばカローラ=ハイブリッドになってしまいそうだ。カローラ・アクシオ/フィールダーに搭載されたハイブリッドシステムは、アクアのコンポーネンツとまったく同じ。というより、そもそもカローラもアクアも「Bプラットフォーム」であり、カローラ・シリーズの開発段階からハイブリッドの採用は考慮され、いつでも発売できる準備はしてあったというのが実際のところだろう。
搭載するエンジンは1.5Lアトキンソンサイクルの1NZ-FXE型(74ps/111Nm)、モーターは45kW(61ps)/169Nm、システム総合出力は100ps。搭載されるバッテリーはニッケル水素電池で、これらのスペックはアクアとカローラはまったく同じだ。アクアとの相違点は、カローラの方がホイールベースが50mm長く、車両重量は約60kg重いという点だ。カローラ・ハイブリッドはガソリン車と比べると50kgほど重いが、いずれにしても1140kg前後で、アクア同様に驚くほど軽量にできている。
アクアとのサイズ比較では、カローラの方がホイールベースが長い分だけ後席の足元スペースにゆとりがあるわけだ。アクアもカローラもニッケル水素電池と燃料タンクはリヤシートの下側に収納しているので、リヤのラゲッジスペースはガソリン車と同等であることが特徴だ。このため、ガソリン車と比べるとリヤシートのクッションが薄めになっているのだが、通常はそこには気付かないはず。
カローラはハイブリッド化にあたり、スポット溶接の打点の増大などによるボディ剛性の向上、静粛性の向上を図っているという。またスプリング、ダンパーのチューニングも行ない、結果的に乗り心地、静粛、加速性能などすべての項目でガソリン車を上回っているという。
ステアリングを握って見ると、停止からの加速感などは確かにガソリンエンジン/CVT車よりトルク感があり、加速時の騒音も低い。市街地での動力性能は満足できるが、高速道路への合流加速、高速道路での追い越し加速などは100psというシステム総合出力の割りにはかなり遅く感じる。
乗り心地はガソリン車よりさらにソフトになった感じで、エコタイヤを装着しているにもかかわらず市街地では柔らかな感触だ。ただ、うねりが続くような路面や大きな段差では入力を抑えきれないシーもあった。
ブレーキはもはや停止寸前での制動フィーリングの変化もないが、ペダルの剛性感の低さ、踏力に対するリニアリティのない頼りなさ、停止時に奥までペダルが入ってしまうという独特のフィーリングは相変わらずだった。操舵フィーリングを含めドライビングプレジャーの要素はかなり薄い。またフットレストがないのもちょっと不満だ。
インテリアは、フィールダー・エアロツアラーは他のグレードより若いユーザー層が想定され、カーボン調のダッシュボードパネルが採用されているが、それ以外のグレードは平凡な印象だ。ハイブリッドモデルはメーターパネルがブルー基調の専用デザインとなり、タコメーターが備えられているが、メーターの視認性は良好だ。また運転席からの斜め左右前方の視界も優れている。
カローラ・ハイブリッドには限らないが、ハイブリッド車の最大のメリットは走行距離の多いユーザーにとってランニングコストが大幅に安いという点だ。これは燃費が良くてガソリン使用量が少ないという意味だけではなく、消耗品やメンテナンス代が圧倒的に安いということなのだ。言い換えれば、走行距離が多い法人ユーザーに最適だと思う。法人ユーザーの場合、購入決定者と実際にステアリングを握るユーザーは異なるが、購入決定者にとってランニングコストが安いということはトータルで見ると大きな魅力になるはずだ。カローラ・ハイブリッドはアクアのような2ボックス・ハッチバックではなくセダン(アクシオ)、ワゴン(フィールダー)というというボディスタイルもそういう点で存在価値がある。