6年半振りに登場した新型大型ミニバンのアルファード/ヴェルファイアは、単なる大型ミニバンではなく、新しい高級車の概念を創造するというテーマのもと「大空間高級サルーン」と再定義してリリースされたモデルだ。まずは実車に触れての詳細を解説しよう。試乗レポートはこちらの記事を参照してほしい。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>
このフルサイズミニバンのカテゴリーは、トヨタのアルファード/ヴェルファイアと日産・エルグランドという2強対決が続いている。こうした背景のもと新型アルファード/ヴェルファイアは、ミニバンというより高級サルーンという側面を強調したわけだが、価格が320万円~700万円で中心価格帯は400万円ということを考えると、高級であることを前面に押し出すのも理解できる。
トヨタのラインアップの中でいえばアルファード/ヴェルファイアは、セダンのクラウン・ロイヤル/アスリート、クラウン・マジェスタと同格で、もうひとつのフラッグシップカーである。想定される顧客層も、大型ミニバン愛好者からVIPカーとして所有する法人までと幅広い。
アルファード/ヴェルファイアのボディサイズは、全長4915~4930㎜、全福1850㎜、全高1850~1950㎜、ホイールベース3000㎜で、セダンでいえばDセグメントのフルサイズだ。そして1800㎜オーバーの全高を持ち、室内空間のボリュームはセダンとは比較にならない。この大きな空間に価値を見出すかどうかが、このクルマの存在理由である。
アルファード/ヴェルファイアは販売チャネルが異なり、販売店のキャラクターに合わせてデザインは、アルファードは大胆、押し出しの強い表情で、華麗さを訴求したという。ヴェルファイアは威圧感があり毒気を含み、スポーティさも備えた迫力を表現しているという。いずれにしても、道路上での強い主張、存在感を前面に押し出しているが、こうした点は高級サルーンと同格ではあっても、まったく別物の表現方法だ。
なお、エクステリアに関してはそれぞれのベース・デザインのモデルに加え「エアロボディ」が設定されている。ヘッドライトが作る表情、バンパー形状がよりアグレッシブになっており、このエアロボディが販売上は中心になる。
インテリアは、もてなしを意識して手の込んだ作りにより、高級感を表現している。ミニバンであるためインスツルメントパネルのボリュームが大きく、その見栄え、作り込みでどれだけ高い質感を表現できるかがポイントだが、樹脂による木目表現やトリムの作り込みは高いレベルにある。さらに横幅のある室内だが、フロントシートに関しては意外にタイトに感じる。その理由はセンターコンソールの幅を思い切り大きくしてあるからだ。
センターコンソールの大型化は、広い横幅で室内がガランとするよりも、重厚感のある大型センターコンソールを配置したほうがより高級感が演出できるという理由だ。
このクルマの重要なポイントでもあるセカンドシートへ話を移そう。クルマのキャラクターからフロントよりセカンドシートの方が重視されているのは当然で、最上級グレードのエグゼクティヴラウンジなどは運転手付きが前提のモデルという位置付けとなっている。そのため、高級セダンを超えるエグゼクティブラウンジシートを採用する。イメージとしては飛行機のファーストクラスシート、いやそれをさらに高級にした感じで、通常のエグゼクティブパワーシート、リラックスキャプテンシートよりもサイズを拡幅。左右席の独立感の強いデザインとなっている。これが、プレミアム・リムジンと大きく違う点だ。
その他のグレードでは、エグゼクティブパワーシート、リラックスキャプテンシート、8人乗り仕様は60:40分割式のベンチシートが設定されている。サードシートは50:50分割で、左右に跳ね上げ収納できる。
なお、リラックスキャプテンシート仕様は、フロントの助手席シートとセカンドシートのレールが共通化され、助手席は最大1160㎜移動できるスーパーロングスライドシートとなる。このメリットは助手席を後退させることで、セカンドシートの子供の世話をしやすいといったケースだという。ただ、このロングスライドは電動ではなく手動なのが意外なところだ。セカンドシートもスライドは電動ではない。車格からいって、フロント、セカンドシートのフル電動化は必須だと思うのだが…。
搭載エンジンは、直4・2.5L(182ps/235Nm)、V6型・3.5L(280ps/344Nm)、直2.5L+ハイブリッド+E-Four(システム総合197ps)の3種類で、トランスミッションは2.5LはCVT、3.5Lは6速AT、ハイブリッドは電気式無段変速となる。なお2.5L車のみアイドリングストップを装備する。実際の販売では、個人は2.5Lモデルがメイン、次いでハイブリッドとなり、V6モデルやハイブリッド、V6エンジン車に設定されるエグゼクティブラウンジは、やはり法人がメインユーザーだろう。