【試乗記】トヨタアルファード・ヴェルファイア 高級感溢れるショーファーとドライバーズカー

2023年6月にトヨタの高級ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」がそれぞれ4代目、3代目へとフルモデルチェンジした。その詳細は既報しているが、試乗する機会があったのでお伝えしよう。

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今回のフルモデルチェンジのコンセプトは「快適な移動の幸せ」で、乗員全てが快適な移動をできることをコンセプトにしている。そのため、プラットフォームの刷新、ボディ骨格の見直し、ノイズ、振動、乗り心地などの徹底した改善といったことが施されている。

新型アルファード Executive Lounge(ボディカラーはブラック)

もうひとつ特徴的なのはアルファードとヴェルファイアの明確な違いを持たせたこともポイントのひとつだ。そのためにパワートレインをアルファードとは別にして、ヴェルファイア専用のエンジンを搭載していることもチェックしておきたい。

そのパワートレインでは3つのタイプが用意された。メインになるのはハイブリッドユニットで2.5LのガソリンエンジンにTHSⅡのハイブリッド。A25A-FXS型で41%の熱効率を持つトヨタの最新の環境エンジンダイナミックフォース・エンジンを搭載している。これはアルファード、ヴェルファイアに搭載している。

それとエントリーグレード用に2.5Lの自然吸気エンジン2AR-FE型を設定。このエンジンは前型からのキャリーオーバーだ。こちらはアルファードだけに設定されている。

新型アルファードのみの設定となるZ(ボディカラーはプレシャスレオブロンド)

そしてヴェルファイア専用に2.4Lターボ+8ATを設定している。T24-FTS型は現行のクラウンRSやNXにも搭載しているパフォーマンスタイプの環境型ダイナミックフォース・エンジンなのだ。つまりドライバーズカーとしての要素を持たせたのがヴェルファイアということになる。このパワーユニットを搭載しているのは新設定されたZ Premierグレードになる。

そしてこれら3タイプのエンジンにもFFと4WDが選択でき、ハイブリッドモデルの4WDはE-Fourで電動モーターを搭載した4WD。ガソリン、ターボモデルは機械式の4WDを搭載している。

新型のアル・ヴェルのボディサイズはEセグメントサイズで、世界基準の高級ミニバンを目指しており、全長4995mm、全幅1850mm、全高1945mm、ホイールベース3000mmで、全幅がやや狭いのは国内での駐車場環境を考慮してのサイズだ。また海外生産も計画されているので、全幅は違ったサイズになるかもしれない。

新型ヴェルファイアのExecutive Loungeは19インチアルミホイールが標準装備

アルファードのハイブリッドモデルに試乗したが、非常に静粛性が高く滑らかに走ることで高級車に乗っている満足感が生まれてくる。一般道と首都高速という環境で試乗したが、高速域になってもその静粛性と滑らかさは継続され、道路の継ぎ目を高速で通過した際の、いなしが良い。固く、強い入力はなく、丸くいなす乗り心地は高級車らしいと感じる。

その静粛性の高さから、室内の会話明瞭度もよく、日常会話の発話音量で全席会話ができるほどだ。また試乗車は「エグゼクティブラウンジ」グレードで、2列目のキャプテンシートは豪華仕様だ。イメージはプライベートジェットのキャビンで、キャプテンシートとスーパーロングオーバーヘッドコンソールがその雰囲気を作り出している。

おもてなし空間を満喫するFMヨコハマ「THE MOTOR WEEKLY」DJの山下麗奈さん

オーバーヘッドコンソールは操作系スイッチが集約されており、例えば、左右のサンシェードやルーフサンシェード、イルミネーション、後席の空調などのスイッチがある。また手元で操作するための脱着可能なスマホ型コントローラーも装備され、オーディオやエアコン、室内灯、シート、サンシェードの開閉ができる。シートは言わずもがな、電動リクライニングにオットマンが装備され、快適なくつろぎ空間が広がっているのだ。

ショーファーカーとしてのアルファードは、その高級感、乗り心地、静粛性など申し分なく、また顔のデザインも主張が強くVIPカーとしての存在感が主張されているのだ。

この快適な移動空間を作るためにプラットフォームはMC型からGA-K型に変更した。GA-K型は大型のFFモデル用のプラットフォームでレクサスRXやカムリ、クラウンなどが採用しているものだ。このGA-Kにリヤ床下にV字型ブレース補強を入れ、ボディを環状骨格構造にし、構造用接着剤も剛性を上げるタイプと減衰特性を持つタイプとを併用し、ボディ全体の剛性アップと振動吸収を両立しているのだ。これは前型が5m使用だったのに対し10倍の50mも採用している違いがある。

またダンパーにも周波数感応型を採用。これは日立アステモ製の製品を、アルファード・ヴェルファイア用のデータに変更して搭載している。主に後席への不快な高周波(微振動)を減衰し乗り心地を良くしている。そして旋回時の低周波入力時には高減衰でしっかり踏ん張るようにセットしたダンパーになっている。

そして気になるヴェルファイアの専用エンジン搭載グレードZ Premierにも試乗した。これはガソリン・ターボ車なので、フィーリング的には慣れ親しんだもので、すぐに馴染むことができる。エンジンは279ps、430Nmとパワフル。ハイブリッドは190ps、236Nmなので、その違いは明確だ。

新型ヴェルファイア Z Premier(ブラックスパッタリング塗装の19インチアルミホイールが標準装備)
内装色はサンセットブラウン
Z Premierも十分な快適さだ

またステアリングのEPS制御も異なり、手応えはしっかりしたフィールに仕上げている。アルファードは全体に軽い操作系に仕上げているが、操舵フィールの違いでもヴェルファイアはドライバーを意識した仕上げだと感じる。またボディ構造でもヴェルファイアのZ Premier専用の構造部材も使っており、それはラジエターフレームとサイドフレームを繋ぐブレースバーを搭載し、フロント周りの剛性感の違いも作っているのだ。

もちろん、フロントフェイスもアルファードとは別のデザインとしており、ヴェルファイアの個性が際立つデザインに仕上げている。

新型アルファードはショーファーカーとして、VIPカーとしてエクステリアを含め存在感が強く、高級ミニバンであることが主張され、ヴェルファイアはドライバーも運転が楽しいと感じられる仕様に仕上げているというのが、新型アルファード・ヴェルファイアということになる。どちらが好みかは使い方で自ずと決まりそうだが、運転好きなユーザーでもアルファードの豪華さは捨てがたいと思う。ぜひ比較試乗してみてほしい。

アルファード諸元

アルファード価格

ヴェルファイア諸元

ヴェルファイア価格

FMヨコハマ「THE MOTOR WEEKLY」Podcast

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