トヨタ自動車の豪州製造・販売事業体であるToyota Motor Corporation Australia Ltd.(以下、TMCA)は、10月3日、豪州での54年にわたる生産を終了した。
アルトナ工場で行われた生産終了式典には、在籍する従業員だけでなく、元従業員、仕入先、販売店、トヨタ関係者など約3000名が出席。TMCAのデイブ・バトナー(Dave Buttner)社長は、「皆さんの長年の努力のお蔭で、トヨタはオーストラリアでトップの自動車生産会社となり、ここで生産したクルマは、豪州だけでなく中近東など海外にも輸出され、世界に通用する品質、信頼性を得ることができた」と感謝の気持ちを語った。
また、TMCAの安田政秀会長は式典の場で、生産終了後も継続的に豪州地域に貢献するため、豪州トヨタ財団(Toyota Community Foundation Australia Pty Ltd.)の設立を発表した。財団は3200万豪ドル(約28億円)の基金をベースにスタートし、将来を担う人材を育成するための支援を行っていく。まずはアルトナ工場が所在するメルボルン西部地区を中心に、経済的困難を抱える学生への奨学金支給や教育環境に恵まれない学校への支援などを行う予定である。安田会長は「オーストラリアの若者に、更なる勉学やキャリアを続ける機会を提供し、若者の夢を応援していきたい」と述べた。
トヨタの豊田章男社長は、ビデオメッセージで登場。8月末にアルトナ工場を訪問し、従業員らを激励し感謝の気持ちを直接伝えた際の映像を背景に、「これまでオーストラリアでの生産活動を支えてくださった従業員、お客様、仕入先、販売店、政府関係者、地域社会の皆様のご尽力に心より感謝申し上げます。生産事業は本日で終了することになりますが、ここオーストラリアの地で皆様に一層愛され、従来にも増して応援いただける会社となるべく更なる努力を続けて参ります」と述べた。
TMCAは2018年より、現在シドニーにある販売・マーケティング機能をメルボルン本社に集約し、販売会社として新たなスタートを切ることになる。またアルトナ工場は、これまでのモノづくりで得た改善などのノウハウを今後の人材育成や商品・サービス向上に活かすべく、教育機能や商品開発機能を有する施設として活用していく。なお、生産終了決定以降、再就職支援センターをTMCA社内に立ち上げ、3年間にわたり再就職に向けた個別相談、求人情報提供、ジョブフェア開催、職業訓練実施など、きめ細かな支援を行ってきたが、これら活動は2018年央まで継続していく予定という。