トヨタは2023年1月26日、4月1日付の役員人事と第119回定時株主総会日付の取締役の新体制を発表した。これまで代表取締役会長だった内山田竹志氏が退任して代表取締役になり、現社長の豊田章男氏が代表取締役会長に就き、新社長としてGAZOOレーシング・カンパニー、レクサス・カンパニーのプレジデントを務めていた佐藤恒治氏が執行役員・社長(CEO)に就任することになった。
もちろん第119回定時株主総会の承認を経て正式決定されることになっている。今回の役員人事では、初代プリウスの開発を指揮し、ハイブリッドの時代を切り開いた功績を持つ内山田竹志氏は76歳と高齢のため執行役員からはずれ執行権のない代表取締役になる。一方でこれまで代表取締役社長・執行役員(CEO)の豊田章男氏が内山田竹志氏の後任として代表取締役会長に就き、新社長の佐藤恒治氏はカンパニー・プレジデントからの昇任となっている。
今回の役員交代について、豊田章男氏は世代交代のためにバトンタッチする土台ができたと語っている。つまり現状のトヨタの収益体質、販売状況は安定していると認識していることを物語っている。
また、豊田章男社長の段階で経営陣は55歳から60歳代の執行役員を飛び越し、50歳代前半の年代へと世代交代を進めてきており、現在52歳の佐藤恒治氏へのバトンタッチは準備されていたと考えられる。
佐藤社長に対して豊田章男氏は、トヨタ流の継承と進化が課題であり、特に自動車メーカーからモビリティカンパニーへの変革を期待して起用したという。そのためには佐藤社長に新たなチームによる経営体制を求めるとしている。
これまで豊田社長は発信力のある強いリーダーとして経営を牽引してきたが、今後はその影は薄まる可能性も想定される。
とはいえ、豊田章男会長は経営会議の議長であり、またマスタードライバーとしてクルマの最終評価を行なうことになっており、院政といえなくもない。
その一方で、豊田章男氏は日本における自動車関連産業に携わる550万人の代表として、財界において発言力の弱い自動車メーカーの立場を強化し、政府に対する提言力、規制緩和に向けての発信を積極的に行ないたいという願望も見て取れる。そのためか経団連の次期会長を目指すのではないかという憶測も流れている。