トヨタとパナソニックは2019年1月22日、車載用角形リチウムイオン電池事業に関し、合弁会社設立に向け、事業統合契約、および合弁契約を締結したと発表した。今回の合弁会社設立は、2017年12月にトヨタとパナソニックが、車載用角形電池事業の提携に合意したことが源流になっている。そして今回、リチウムイオン電池の開発、製造について合弁事業としてスタートを切る、という具体的な決定がなされたわけだ。
この合併の背景には、車両の電動化においては電池が最も重要な要素とされるが、車載用の電池にはコスト、エネルギー密度、充電時間、安全性などの高い技術力に加え、安定供給能力の確保やリサイクルなど、多岐にわたる対応が求められている。そのため電池メーカーや自動車メーカーがそれぞれ単独の力だけでは解決できない事業環境にあるという双方の思惑が一致したということがある。
トヨタとパナソニックは、車載用角形電池事業についての協業の可能性を検討することに合意して以来、性能、コスト面で業界ナンバーワンの高容量・高出力に対応した車載用角形電池を実現し、トヨタだけではなく他の自動車メーカーの電動車の普及に寄与するために、どのような協業とするかが検討されてきた。そしてこの契約締結により、両社の競争力のある電池の実現に向けた取り組みをさらに強化・加速さようとしているわけだ。
そして新たな合弁会社は、両社の経営資源・リソースを結集し、トヨタの「電動車のノウハウと市場データ、全固体電池等の先行技術およびトヨタ流モノづくり」と、パナソニックの電池メーカーとしての「高品質・高い安全性の高容量・高出力電池の技術、量産技術、国内外の顧客基盤」を融合することで、No.1の開発力とNo.1の製造力を実現することを目指す。
具体的には、トヨタだけではなく、マツダ、スズキ、スバル、デンソーなどが結集した「E.V.CAスピリット」社による車両の企画・構想段階から連携し、高容量・高出力電池の「開発の加速化」を進めること、製造力では、両社の生産技術リソースとモノづくりノウハウを共有し、高品質・低コストでの「安定供給体制を確立」することに加え、スケールメリットを活かした調達・製造コスト削減なども実現する。
メインはリチウムイオン電池か?
トヨタは2030年に、グローバル年間販売台数における電動車を550万台以上とする目標を掲げているが、これを実現するためにも新合弁会社は不可欠といえよう。
1996年にトヨタとパナソニックは、ニッケル水素電池を製造するパナソニックEVエナジー(現在の社名はプライムアースEVエナジー)合弁会社を設立し、電池の高性能化、低コスト化を実現。トヨタ・ハイブリッド普及の屋台骨を支えているが、今回の合弁会社はリチウムイオン電池のための合弁会社と位置づけられる。
しかもトヨタのための電池開発・製造ではなく、マツダ、スズキ、スバルなど「E.V.CAスピリット」に加わる自動車メーカーにも供給することを前提にして、スケールメリットの追求、リスクの分散を行なうことになる。
一方、パナソニックは旧サンヨーのリチウムイオン電池の技術を活かし、テスラに円筒形の18650型電池を供給し、リチウムイオン電池に関して大きな成果を生み出した。その成果を生かしてテスラの巨大リチウムイオン製造工場「ギガファクトリー」(ネバダ州)に1500億円を超える投資を行なっているが、周知のようにテスラは迷走状態にあり、ギガファクトリーの今後も予断を許さない状態にある。
また一方で、より高性能な角型リチウムイオン電池パックに関しては、トヨタと協業して業界リーダーになることも目指している。
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合併規模
今回のこの事業統合、合弁契約の具体的な内容は、2020年末までに合弁会社を設立すること、合弁会社の出資比率はトヨタ51%、パナソニック49%、合弁会社の事業範囲は車載用角形リチウムイオン電池、全固体電池、次世代電池に関する研究・開発・生産技術・製造・調達・受注・管理などだ。
トヨタは電池セルの開発・生産技術領域の設備および人員、パナソニックは車載用角形電池事業の開発・生産技術・製造(工場は日本、中国・大連市)・調達・受注および管理機能に関わる設備・その他資産・負債および人員等を、それぞれ合弁会社に移管することとなっている。
なお合弁会社に移管する対象事業に関わる両社の従業員数は約3500人で、開発、製造された製品は、原則としてパナソニックを通じて広く自動車メーカーへ販売することとなっている。
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