2014年9月5日、トヨタは9月7日からアメリカ・ミシガン州で開催される「第21回ITS世界会議デトロイト2014」への出展に先立ち、安全運転支援に 向けた自動運転技術に関し、現在の開発の進捗状況を公表した。
ミシガン州のToyota Technical Center(以下、TTC)内に設置されている「先進安全技術研究センター」(Collaborative Safety Research Center:CSRC)において、先進安全技術の研究の取り組みを大幅に強化するため、3500万ドルの新規投資をすることも合わせて発表した。
この新規投資は、CSRCの2017年から2021年までの活動を支えるもので、今後自動運転技術や「つながる」技術などの開発から、近年注目されているのウェアラブル・デバイスの普及にともなう「クォンティファイド・セルフ」(センサー類などで人の行動や状態などを定量的に測定し、新たな知見などを得る取り組み)の領域など、より幅広く、複合的な次世代モビリティの可能性を探っていくとしている。
▲東富士研究所内での、自動運転技術実験車の走行シーン
▲東京都内(皇居周辺)での、自動運転技術実験車の走行シーン
今回公表された、現在開発中の主な高度運転支援システムと要素技術は以下の通り。
■オートメイテッド・ハイウェイ・ドライビング・アシスト(AHDA)
ITS世界会議で展示されるAHDAは、2013年のものとは異なり車車間通信技術は搭載していないが、アメリカの実際の道路環境にあわせて改良され、 時速70マイル(約110km/h)まで対応可能。このAHDAは、主に3つの技術により、高速道路で安全に車線・車間を維持しながら走行できるよう、ドライバーの運転を支援する。
・ダイナミック・レーダー・クルーズ・コントロール(DRCC)
フロントグリルに搭載された77GHzのミリ波レーダーで先行車を検知し、一定の車速および先行車との距離を確保する。
・レーン・トレース・コントロール(LTC)
前方カメラや77GHzのミリ波レーダーからのデータを用いて白線や前方車両を検知し、最適な走行ラインを算出し、自動的にステアリングや加減速を適切に調整。ドライバーが車線内で、走行ラインをより簡単かつ安全に維持できるよう支援を行なう。
・ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)
高度運転支援システムにおいてもドライバーが常に運転の主役であるべきとの考えで、手動運転と自動運転の切り替えがスムーズに行なえるよう、専用のHMIを採用。その例としてプレビューHMIは、走行中の道路状況やこれまでに蓄積されたセンサーの作動実績データをもとに、高度運転支援システムの利用が制限される場面でドライバーに事前に警告を発する機能を備える。また地図データ、GPS、カメラ、レーダー等を活用することで、現在走行している車線を把握し、より正確に警告を発することができる。ドライバーモニターやステアリング・タッチセンサーなどの技術により、 ドライバーの顔の向きやドライバーの手がステアリングに触れているかを検知することで、運転への集中度を判断し、必要に応じてドライバーに警告を出すといったシステムを採用している。
▲Toyota Research Institute North America周辺での、自動運転技術実験車の走行シーン
■AHDAのための技術
・車載用イメージングレーザーレーダー(SPAD LIDAR)
豊田中央研究所と共同開発したSPAD LIDARを初公開。SPAD LIDARは性能を向上させ、大幅な小型化、低コスト化を図り、コンパクトに車載することができるのが特徴。また、従来のミリ波レーダーとステレオカメラ両方の機能を1つで補えるため、障害物の位置や形状を高精度で検知でき、昼夜問わず外光にあわせて感度を調節する アクティブセンサーを搭載している。なお、2013年1月にネバダ州で開催された「2013 International Consumer Electronics Show」では研究中の自動運転技術の実験車を公開しているが、この実験車では大型のLIDARをルーフ上に搭載していた。
・3Dヘッドアップ・ディスプレイ(3D-HUD)
Toyota Info Technology Center, U.S.A.(トヨタのアメリカにおけるIT関連の調査・研究・開発会社)を中心に、人と車両の連携向上を目指して開発を進めている革新的なインターフェイス。車両の状態、標識や交通状況などの情報を、フロントガラス越しの道路上に重なるように3D表示することができる。