2014年8月29日、トヨタは、経済産業省の高圧ガス保安法により定められている「登録容器製造業者」として、経済産業大臣の認可を取得したと発表した。これは、ガス系燃料タンクの中で、燃料電池自動車(FCV)用高圧水素タンクの自主検査により製造することができる「登録容器製造業者」として、経済産業大臣の認可を取得したということで、70MPa(メガパスカル:700気圧)の高圧水素タンク製造業者として認可を受けるのは自動車メーカーとしてトヨタが初となる。
経済産業省により1997年に法整備されたこの制度では、高圧水素タンクなど1MPa(10気圧)以上の圧力でガスを貯蔵する容器や付属品は全て、経済産業省の型式認証を取得した上で、製造過程において高圧ガス保安協会(KHK)の立会検査を受けることが義務付けられている。
トヨタのようにカーボン繊維製の高圧水素タンクを内製する場合、製造途中と完成時の2回の立会検査が必要であり、検査で合格するまでは次の工程に進めることができない。これまでトヨタは試作した高圧水素タンクは製造途中でKHK検査員の立会検査を受けていた。そのため完成時の検査を受けるには、タンクの検査待ち在庫管理、タンクの製造計画、FCVの生産計画を立会検査の日程に応じて調整する、といった対応が必要であった。
トヨタは、2014年度内からのFCV セダンの販売開始とするため、自主検査による高圧水素タンクの製造が可能となる「登録容器製造業者」の認可が必要であると考え、取得に向けて準備を行なってきたわけだ。
この認可を取得するためには、KHKが定めた「KHKS 0102容器等製造業者登録基準(2010)に合格し、「製造プロセスにおいて高度な品質管理体制を構築していると認められる事業者」であると認定される必要があるのだ。
トヨタは、194項目の詳細な「KHKS 0102」の基準に合致させるために、品質マネージメントシステムをベースに、品質マニュアルや容器検査規程等を整備し、関連部品会社を含めて文書体系化された品質マネジメントシステムを確立。2014年6月にKHK による高圧水素タンク製造ラインの現地確認において、「KHKS 0102 に適合」との判定を得ていた。
その後7月に、中部近畿産業保安監督部に経済産業大臣の認可を得るための申請書を提出し、基準を満たしていることが確認され、認可を受けることになった。
今回の認可取得により、今後は認可基準に沿って自社で検査員制度を制定し、そこで選定した社内検査員の自主検査による製造が可能となり、KHKの立会検査が不要で、高圧水素タンクの製造効率の向上、FCV の生産性向上、コスト低減にもつながるわけだ。