【トヨタ】本社敷地内に新設備「パワートレーン共同開発棟」、「新型風洞」が稼動開始

雑誌に載らない話vol66

 

本社テクニカルセンター内に建設された大型の回流式の新風洞実験棟

2013年3月27日、トヨタは、近年の開発の命題になっている「もっといいクルマづくり」をさらに加速するため、本社工場内に次世代パワートレーンユニット開発拠点となる「パワートレーン共同開発棟」、本社テクニカルセンター内には空力性能の向上を追求する「風洞実験棟」をそれぞれ完成し、稼動を開始したと発表した。

・パワートレーン共同開発棟
この開発棟は、世界に通用する競争力の高いパワーユニットの開発と、迅速な製品化の実現のための新組織「ユニットセンター」が4月1日に設置されるのに対応したもの。パワートレーンユニットの開発についても、ロケーションが点在していた従来の研究・開発と生産技術の両機能を、トヨタ創業の原点である本社工場敷地内に集約した。クルマの中核となる次世代パワートレーンユニットの開発拠点として2013年2月から運用を開始している。

開発効率、速度を高めるため本社工場内に完成した新しい「共同開発棟」

この開発拠点は、研究・開発と生産技術が一体となる、新技術や新工法を開発するための開発業務プロセスを変革すると同時に、新しいパワートレーンユニットの開発と、迅速な製品化の実現を図る目的で建設された。オフィス内には研究・開発と生産技術の開発者が図面や部品、車両を一緒に見ながら議論できる場を多く配置し、そのためのスペースを十分確保するために、個人の席をなくして執務エリアを自由に使用できるオフィスのフリーアドレス化や、書類の電子化によるペーパーレス化などを新たに導入している。つまり開発の速度アップと効率化を狙った統合施設といえる。

パワートレーン共同開発棟は、地上12階、延べ床面積約10万m2で、研究・開発、生産技術開発の一体開発オフィス(7〜9階)を中心に、上層部に試作、工法開発、部品などの機能評価エリア(10〜12階)、下層部にユニット、車両評価を中心とした評価、適合エリア(1〜6階)で構成され、同一建屋内で一連の業務を完結させることができる。なお、通常稼動時には約2800人の従業員が勤務する予定。

・新風洞実験棟
車両の燃費向上、運動性能や静粛性を一層向上させるため、本社テクニカルセンター内にエアロダイナミクスに関わる車両技術開発を強化、推進する新しい「風洞実験棟」を建設した。

3月から運用を開始した風洞実験棟は、大型送風機を持つ回流型風洞と実車走行状態を再現できるムービングベルトシステムを備え、250km/h走行時までの風環境を再現し、市街地から高速走行時までの空力特性を高精度に評価できるようになった。また、風洞内の壁や床に吸音材を適正配置することで低騒音化を図り、空気の流れによる騒音(風切音)評価も可能としている。

大きなブロックゲージ比の測定エリアであることがわかる

また風洞実験棟を本社テクニカルセンター内に設置することで、デザインや設計・実験部署とのより密接な連携で効率的な開発が可能となり、一段と魅力的なデザイン、静粛性、操縦性、走行安定性の向上にも結びつけることができるという。なお、トヨタの実車風洞施設としては1969年に建設された初代風洞施設導入以来初のリニューアルとなり、近代的で、より精度の高い空力性能を追求することができるようになったといえる。

超大型送風機。人との比較で大きさが分かる
広い測定部とムービングベルトで高精度な測定が可能

 

高速走行中の燃費性能向上には空気抵抗の低減が極めて有効であり、100km/h走行時の走行抵抗の約70%は空気抵抗であることからわかるように、高速燃費を低減するためには空力性能の向上はきわめて重要なのだ。

トヨタは、燃費向上による省エネルギー、電気や水素をはじめとした代替エネルギーの利用促進による燃料の多様化を基本方針として環境技術開発を進めているが、風洞実験棟の本格稼働により空気抵抗低減への取り組みを強化し、世界レベルの環境性能の向上を目指すとしている。

トヨタ公式サイト

COTY
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