【トヨタ】新型ポルテ/スペイド試乗記  日常使いを徹底研究し満足度の高いモデル

マニアック評価vol131
新型ポルテは、より幅広いユーザーに購入してもらうために、販売店チャンネルを分けてあらたにスペイドという新型車も追加し発売することになった。

ポルテはトヨタ店、トヨペット店で、新型車のスペイドはカローラ店とネッツ店でのそれぞれ販売となる。最大の特徴は左右非対称のドアで、助手席側は大きなスライドドア1枚で、運転席側は、旧型で要望の多かったと思われる運転席だけの1枚ドアから、後席にも通常タイプのドアを装備するデザインとしている。

助手席 スライドドア

↑↑ 運転席                     ↑↑  後部座席

旧型ポルテは満足度の高いモデルということで、大型のスライドドアで室内が広く、外形サイズはコンパクトの2ボックというのが理想ではないか?という試みから誕生している。そして、さらにいいクルマを!ということを目指し、30代、40代の子育てママ、シニア、3列シートは不要というファミリー、独身の男女と幅広いターゲットを狙ったモデルとして新たにデビューした。

↑↑ ポルテ                     ↑↑ スペイド

2車にはその外観にも違いがあり、ポルテはスクエアオーバル形状を基調とした、シンプルなランプ類のデザイン、グリル、バンパーを持ち、親しみやすいデザインとしている。また、大きなサイドウインドウで広さを強調し、スライドドアハンドルとキャラクターラインを同一ライン上に配して、よりクリーンな印象にしている。

一方、スペイドはサイドのキャラクターラインをヘッドライトまで連続させ、より水平基調のデザインを強調し、張り出したランプとバンパーにより、ポルテよりワイド感を出し、そして低重心に、精悍さをもったクールなエクステリアデザインとしている。また、リヤビューもワイド感と低重心を感じさせる張りのあるフォルムになっている。

ポルテ/スペイドともに、地上から300mmという低床のフラットな床面をもち、乗り降りのしやすさをもちつつ、外形サイズはヴィッツ系のプラットホームを採用しているため、外形はアクアと同じ全長、全幅。しかしながら2ボックスとすることで、広い室内を確保し、高級セダンと同等サイズの前後シート長を持っている。もちろん、多彩なシートアレンジ、6:4の分割シートも可能だ。

Aピラーの工夫で死角を減らす工夫がある。運転席側、助手席側とも視界はいい。

そして、運転のしやすさという点では、斜め前方の視認性を高め、Aピラー、ドアミラーの取り付け位置や陰影でピラーが細く見える工夫がされている。実際の試乗でもAピラーによく死角が気になることはなかった。

搭載されるエンジン+CVTについて少し触れておきたい。この時代に求められる性能においては、レスポンスやパワーといった性能というより、このモデルの場合、やはり燃費を気にするユーザーが多いだろう。そのため、モデルラインアップ全車にスーパーCVTiが搭載され、エンジンも新型が開発されている。排気量は1.3Lと1.5Lがある。いずれも燃費改善に注力されたユニットだけに、ポイントは押さえておきたい。

スーパーCVTiとは、小型、軽量、低燃費化を目標に開発されたフル電子制御のユニットで、トルクコンバーターを発進時に採用している金属ベルト式無段階変速機である。1.3L用にはK411型、1.5LにはK312型(FF)とK310F型(4WD)が搭載される。特徴としては旧型の4速ATより変速比幅が広く、エンジン回転数を低く抑えることができる。

100km/h巡行時、1.3Lの旧モデル(2NZ-FE&U441E型)が約2850rpmに対し、新型1.3L(1NR-FE&K411型)は約2100rpm、同じく1.5Lの旧モデル(1NZ-FE&U340E)が約2650rpmで、新型1.5L(1NZ-FE&K312型)は約1900rpmとなっている。

一方エンジンだが、1.5Lの1NZ-FEは先のカローラのタイミングで搭載された新型エンジンで、旧型と同じエンジン型式のため、その違いが分かりにくいが大幅な変更が加えられたエンジンとなっている。ポイントとして、圧縮比が10.5から11にアップされ、燃焼の改良がある。これを可能にしたのが外部EGRの冷却効率を大幅にアップしたことにより、耐ノック性が向上でき圧縮比をあげることが可能になっている。従来の2重管構造をフィン付きの強制クーラーに変更し、当然、EGRを戻す量も増えている。

そしてタンブル強化(縦渦)として、バルブシート形状を工夫することで、タンブル流を強くし燃料と空気の混合を促進でき、燃焼限界を延ばすことができたという。そして、バルブタイミングもアトキンソンサイクルとし、吸気バルブの遅閉じ設定がされ、下死点後72度を82度まで開き、ポンピングロスの低減につなげている。吸気バルブが開いている時間が長いほど、吸気された空気は押し戻されピストンでの圧縮抵抗が減り、吸気抵抗が減るというわけだ。ただし、過給器やモーターなど補器を持たないため、スーパーチャージャーを持つ日産新型マーチの下死点後100度ということにはならない。また、フリクション低減では、オートテンショナー、オルタネーターのワンウエイクラッチ、カムリフト量を減らしてスプリング荷重を減らすことなどが行われている。

1.3Lはダイハツで設計開発、製造(現在はトヨタと双方で製造)されたエンジンで、2NZから1NRへと変更された。11.5の圧縮比を持ち、耐ノック性のために冷却系を強化している。それは細型プラグの採用、ウオータージャケットの追加など本体改良が加えられたエンジンになっている。

この1NR-FE型はグローバルで展開するモデルに搭載されるエンジンであるため、どんな環境でも始動性がよくある程度の燃費と耐久性も持ち合わせなければならない役目を持っている。そのため、アトキンソンサイクルのような技術は使われず、閉じ角69度で制御されている。もっとも吸排気で可変バルブタイミングとなるVVTは装備され、EGRも還元されている。フリクション低減アイテムとしては直打式のカムからローラーロッカー式を採用しているエンジンとなる。

ちなみに、1.3Lには全車アイドリングストップが採用され、常時かみ合い型のセルモーターとなっている。1.5Lはオプション設定で、通常のセルが飛び出すタイプのアイドルストップで両者は違った方式となっている。

最初に試乗した1.3LのXグレードは1NR-FE型エンジンを搭載し、165/70R-14サイズのタイヤを装着。スタート&ストップ装置は標準装備されているモデルだ。シートタイプがベンチシートタイプなので、車両価格(155万円)からも人気の高いモデルだろう。

インテリアは明るいベージュ系とオレンジ系のアクセントカラーでデコレーションされていて、ポップな好印象のインテリアだ。座ってみるとキャビンフォワードされたAピラーによる死角は、ドアミラーが後方へ移動してあるため、気になるレベルではなかった。着座位置も高く、視界は広いという印象。短いノーズのため、車両の見切りも良かった。こういったポップなインテリアデザインを持つモデルの場合、スピードメーターなどもポップにデザイン主張している場合が多いが、ポルテ/スペイドともに、サイズは小ぶりで、メーター内文字盤デザイン違いがある程度だった。

走り出してみると、エンジン音はそれなりに聞こえるものの、車速に比例して大きくなるので、それほど気にならない。また、音質的に気になるものではないという話が開発陣から聞けた。ステアリングは軽く、車庫入れなどでも苦にならない操作性で、車速があがれば手応えも増すようになっているので、安心感もあった。また、デザインでもステアリング底部がフラットに近い形状にしてあり、流行をいち早く取り入れてあった。

試乗したスペイドの1.5Lモデル Gグレード

1.5LモデルはスペイドのGグレードを試乗した。もちろん、ポルテとスペイドはエクステリア、インテリアの相違であり、エンジンなどのユニットには違いはなく、運転フィールは同じと考えていい。その1.5LGグレードは遮音の最適化が行われており、明らかに他のグレードとは異なっている。走行音やエンジン音など車内で聞こえる音は抑えられ、また、アタリのやわらかい乗り心地と相まって、上質な印象を持った。

広い室内をもつモデルだけに、エアコンの効きが気になるところだが、猛暑日の続く東京の臨海エリアでの試乗にも関わらず、車内は冷気を保っていた。また、試乗車には14インチと15インチが用意されていたが、その違いは感じるものの、どちらも乗り心地は良くコストパフォーマンスからは14インチをチョイスしたくなる。

CVTは無段変速なので、エンジンブレーキは効くのかという疑問を持つ方もいるだろう。新型ポルテ/スペイドにはSモードBモードというのがシフトゲージに刻まれていて、「S」表示はソフトなエンジンブレーキということだ。「B」は文字通りブレーキなので、強いエンジンブレーキがかかる。Sモードは発進時に使えばスポーツモードのように、回転があがり加速力もあがるが、アクセルを緩めても高回転を維持するので、いわゆるスポーツモードとは少し異なる設定のようだった。使い方としては「S」「B」ともに、減速用のモードと理解し、強い加速が欲しいときにはSが併用可能と理解するのがいいだろう。

トヨタ ストップ&スタートシステム(アイドルストップ)は1.3Lと1.5Lでは、その機構が違うのは先に触れたが、実際の使用勝手では、その違いは分からない。まず、停止に関しては「頻繁に止まる」という印象で、再スタートではどちらも「滑らかにすぐかかる」という印象だ。信号機のない交差点で「とまれ」でもアイドルストップし、すぐに再始動できる。その際、車体への振動もすくないので、気になることがない。以前、輸入車で体験したとき、振動が大きいタイプだったため、頻繁に停止と再始動を繰り返されると、わずらわしく感じたことを思い出したが、このポルテ/スペイドでは頻繁にとまることが歓迎できる機能と断言できる。

新型ポルテ/スペイドは実によく使い勝手が考慮されたモデルであることが実感できた。大きなスライドドア、広い室内、シートアレンジの多彩さ、収納類、エアコンの効き具合、アイドリングストップの制御など日常使いを徹底的に研究し、その結果、満足度の高さに繋がるモデルだろう。また、走行面においてもアタリのやわらかい乗り心地と操作が軽いハンドル、手応えの増してくる味付けとコスパに優れたモデルという印象だった。

 

トヨタ ポルテ 公式サイト

トヨタ スペイド 公式サイト

COTY
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