マニアック評価vol32
北米で人気のFJクルーザーがついに国内デビューを果たした。2003年のデトロイトモーターショーでコンセプトモデルを発表し、05年のシカゴオートショーでプロトタイプを発表。06年から北米で販売という経緯をたどったFJクルーザーは人気を博し、日本国内での販売を望む声も多かったという。そしてファンが待ち焦がれた2010年12月についに販売となった。
↑FJクルーザー桂伸一試乗インプレ動画
かつてのFJ40からの系譜をイメージするようなデザインだが、コンセプトは全く異なりSUVコンセプトを持っている。実際試乗してみると、その乗り心地はSUVのそれであり、クロカン的な乗り心地ではない。しかしながら、ルックスではFJ40に共通するハードなスタイルであり、見る楽しみがあるデザインだ。ただし、車両の大きさはかつてのFJ40のようにコンパクトではなく、大型のSUVクラスになる。
そのハードなデザインのFJクルーザーは、プラドと同じシリーズの骨格をもち、ラダーフレーム構造となっている。フロントがダブルウイッシュボーン、リヤが4リンクというレイアウトで、オプションでビルシュタインのダンパーが使用できる。駆動システムは、パートタイム式の4WDである。最近ではスポーツ4WDが増えてきたため、フルタイム4WDが当たり前のようになっているが、この手の車種では転がり抵抗などのフリクションが大きいため、通常走行する場合には2WDを選択する必要があるのだ。
搭載するエンジンは1GR-FEのV型6気筒4.0Lガソリンで、5速ATとなっている。このエンジンには吸排気バルブの開閉タイミングを最適に制御するデュアルVVT-iを採用し、省燃費への配慮をしている。排気ガスについは平成17年基準排出ガス50%低減レベルの認定であり、燃費も10・15モードで8.4km/L、CO2排出量276kg/mを実現している。
このパワフルなユニットはアプローチアングル34度、デパーチャーアングル27度という本格的な走破力を持ち、オンロード、オフロードを問わず、高い走行性能が自慢のモデルである。
インテリアでは、高いアイポイントで視界が広い。直立したフロントウインドウは横に広く、3本のワイパーアームがワイルドさに磨きをかけている。シートは防水・撥水シートで、実用面でもヘビーデューティな使用が可能だ。
走行時のノイズは、外見のスタイルからは想像できないほど静かで、タイヤのロードノイズが気にならないほどである。ハンドリングは独特の世界観で仕上げてある。つまり、リニアであることを良しとする乗用車のように仕上げてしまうと悪路ではとても操作できなくなるため、路面からの反応を鈍くしてある。だからハンドルを切った際のレスポンスにもタイムラグがり、それがまた、FJを操っている満足感にもつながるのだ。
観音開きでのリヤシートへのアプローチは実用的ではないが、そこをあれこれ言うレベルではない。ただ、乗降はしづらいとだけ付け加えておく。しかし乗ってしまうと後席の居住性は思ったほど狭くない。大人4人での乗車移動は問題ないだろう。リヤシートでの乗り心地もピッチングや突きあげもなく、SUVの乗り心地と言っていいだろう。
都会で乗れば、個性の主張につながり、アウトドアで使えば、ユーティリティに優れたヴィークルとなり、クルマに興味を失った人たちからも受け入れられる間口の広いモデルなのかもしれない。
文:編集部 高橋 明