2010年12月22日、トヨタから3代目にあたる新型ヴィッツが発表された。
初代ヴィッツは1999年の発売で、ヒットを飛ばした。そしてキープコンセプトの2代目はプラットフォームを改良して2005年に発売している。初代はヨーロッパ向けの戦略車(欧州名:ヤリス)であるだけに、ヨーロッパのデザインセンターが車両デザインを担当し、ソリッドでダイナミック感のあるクラウチング・スタイルのデザインは、国内でデザインされた他のトヨタ車とは異なる存在感があった。そのクラウチング・スタイルとは、走者がスタートを切る時の姿勢をモチーフにしたもので、独特の個性あふれるものであった。
今回発表された3代目は、これまでのデザインコンセプトを一新し、躍動感や強めのプレスラインを用いた質感を表現している。複雑な面構成のフロントマスク、全体のシルエットなど、これまでの面影がなく無国籍なデザインになった感がある。さらに空力特性は2代目のCd=0・31から0.285と相当にレベルアップしているところも見逃せない。
車両開発コンセプトは、上質で躍動感のあるスタイル、室内スペースとユーティリティの向上、圧倒的な低燃費、コンパクトカーらしいバランスのよい走りだ。商品企画の狙いには、日本のマーケットにおいて、従来のヴィッツは女性ユーザーが多かったが、新型はダウンサイジング・ユーザーを含めたより幅広い層を狙っているという。しかし、その一方で女性ユーザー向けの訴求点も充実させ、紫外線カット99%というガラスをフロント、サイドウインドウに採用し、また、17色のカラーラインアップを揃え女性ユーザーを意識したグレード設定(ジュエラ)なども行っている。
グレードはベースの「F」、装備向上仕様の「U」、女性向けの「ジュエル」、スポーティ仕様の「RS」という4グレードで、それぞれに4WDも設定されている。搭載されるエンジンのラインアップはFとジュエラには1.0L・3気筒(1KR-FE)、1.3L・4気筒(1NR-FE)があり、UとRSには1.5L・4気筒(1NZ-FE)が搭載され、全部で3種類のエンジンがある。当然ながら販売のメインは1.3Lとなり、1.0Lは廉価版という設定だ。また、3種のエンジンの中でも1.3Lが吸排気VVT(可変バルブタイミング)など最新のスペックが与えられている。トランスミッションは4WDを含めCVTがメインで、RSにのみ5速MTまたは7速マニュアルモード付きCVTとされる。
なおアイドルストップ・システムは従来モデルにも設定されていたが、今回は1.3LのFグレードにスマートストップ・パッケージ(VSC=横滑り防止装置、TRC=トラクションコントロール含む)として設定され、標準仕様より6万円高となる。このパッケージ装備車が10・15モード燃費26.5km/Lを実現した燃費チャンピオンカーで、スマートストップ装備なしの1.0L車は23.0km/L、1.3L車は24.0km /L、1.5L車は20.0km/Lとなる。
スマートストップ・システムは、従来のシンプルなタイプを改良し、常時かみ合い式スターターギヤとワンウェイクラッチ付きドライブプレートを採用している。つまり、スターターギヤは走行中でも常にクランクシャフトを駆動するギヤと常時かみ合っている。そのフリクションロスを無くすために、クラッチつきのドライブプレートが採用されているというわけだ。これにより、再始動時の素早さを確保したうえで、エンジン停止シーンを最大限に拡大することができ燃費を向上させている。
パッケージングは、従来型と比べ全長はプラス100mmの3885mm、ホイールベースは50mm延長し2510mmにし、全高は20mm下げて1500mmとしている。これらの変更により、特にリヤシートの膝まわりのスペースとラゲッジスペースの奥行きを稼いでいる。インテリアは素材、仕上げの質感の向上に注意が払われており、この点でクラストップレベルに達していると思う。Uグレードにはソフトパッド表皮や専用シート生地が使用されている。
ボディは剛性向上、軽量化を行い、素直でしかもきびきびした走りを熟成したという。今やこのクラスの走りもヨーロッパメーカーのレベルアップが著しいため、新型ヴィッツもヨーロッパでセッティングを行い、しっかり感や車体の剛性感を高めたということだ。
今年は大幅なマイナーチェンジを行ったホンダ・フィット、フルモデルチェンジをした日産・マーチ、そして今回デビューしたヴィッツとガチンコ・ライバルが出揃った。いずれも各社の世界戦略車であるが、エコカー補助金が終了した日本のマーケットで今後激しい首位争いが繰り広げられることになろう。
文:編集部 松本 晴比古
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