2017年2月1日、スズキは6代目となる新型ワゴンRシリーズを発売した。新型ワゴンRシリーズはさらに出力を向上したマイルドハイブリッドを採用して燃費を向上させるとともに、従来の標準モデル、スティングレーという2機種の展開から、FX、FZ、スティングレーという3機種に拡大し、それぞれ独自のデザインを採用している。
ワゴンRは、スズキの軽自動車のラインアップの中でも重要な車種で、機能性、使い勝手のよい軽自動車ワゴンであり、年齢、性別を問わないマーケットのど真ん中を狙ったモデルだ。しかし、6代目はユーザー層の価値観や生活環境の多様化に適合させるために、新たに機能性とデザインの両立をコンセプトとし、より個性を強めた3タイプのデザインを展開することになった。
新型ワゴンRシリーズのアピールポイントは、機能とデザインの両立、ISGモーターだけで走行できるマイルドハイブリッドの搭載、デュアルセンサーブレーキサポートなど、運転支援システムの採用、新世代プラットフォームを採用し、軽量化、高剛性化、No1の室内長を実現するなどパッケージングの改良という4点だ。
グレード展開は、標準シリーズはシンプル装備に徹したエントリーモデルのFA、マイルドハイブリッドのFX、FZ、スティングレーはベース車のL、ハイブリッドのX、ハイブリッド+ターボのTという3グレードとしている。
■デザイン、パッケージング
これまでのワゴンRは標準モデルとスティングレーという2機種をラインアップしていたが、新型は誰からも愛される定番スタイルの「FX」シリーズ、スポーティで上質感のあるスタイリッシュワゴン「FZ」シリーズ、強い個性と存在感を持つ「スティングレー」という3機種のラインアップになった。つまり、より多様なユーザーの多様な嗜好に適応できるようになったわけだ。
インテリアも、FXシリーズは明るくシンプルなベージュをメインに、FZシリーズはスポーティさ、スティングレーはダイナミックさと上質さを強調したデザインに。
全体のデザインは水平基調で、明快で端正で、安定感を訴えているが、Bピラーは個性的な形状のデザインを採用し、機能とデザインの両立のシンボルとされている。ストロングさをアピールするスティングレーだけはバンパー、グリルだけでなく専用のボンネットを採用し、より強い個性を強調。
パッケージは、アルトから導入された新プラットフォームの採用により、ロングホイールベースを生かし、室内長を従来より285mm延長して軽自動車ナンバーワンの長さになっている。また前後の乗員間距離も35mm、室内幅も60mm拡大。フロントの着座位置は15mm低下するなど乗り降りがしやすくし、居住性、視界などを改善している。
リヤシートは従来通り160mmの前後スライドができ、リヤシートバックを倒すとほぼフラットなラゲージスペースとなる。またリヤシート後方のラゲッジスペースは、アンダーボックスを拡大することで、ベビーカーを立てた状態で収納できるようになっている。さらにリヤドアの左右には軽自動車で初となる傘立ても装備されている。さて、次にマイルドハイブリッドシステムをみてみよう。<次ページへ>
■エンジン、ハイブリッドシステム
搭載されるエンジンは全モデルがR06A型で、エントリーグレードにはハイブリッドシステムない。それ以上のグレードにハイブリッドシステムを採用している。R06A型の出力は52ps/60Nm。加速時にエンジンをアシストするISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)は3.1ps/50Nmの出力だ。またスティングレー・ハイブリッドTのみはR06Aターボを搭載し、64ps/98Nmを発生する。
組み合わされるトランスミッションは全車が副変速機付きCVT。FFと4WDを設定。JC08モード燃費はハイブリッドFFモデルで33.4km/L、4WDモデルで30.4km/Lと従来型より0.4km/L向上させ、軽自動車ワゴンでトップの低燃費を実現している。
なお今回のワゴンRから、スズキは回生と駆動、スターターの働きをするISGとリチウムイオン電池によるエネルギー回生+駆動システムを「マイルドハイブリッド」と呼称する。これまでは「エネチャージ」、「S-エネチャージ」と呼んでいたが、今回も基本的なシステム構成は同じだ。
だが、ISGの出力がS-エネチャージの場合は2.2ps/40Nmであったのに対し、今回からは3.1ps/50Nmと出力をアップ。また従来同様のデンソー/東芝製のリチウムイオン・バッテリーはS-エネチャージまでは36Wh/3Ahだったが、今回からは120Wh/10Ahに容量をアップしている。
このため新型ワゴンRからは、停止状態からブレーキペダルを離すと最長10秒間はエンジンが停止したままISGの駆動だけでクリープ走行ができ、発進、加速時には最長30秒間のモーターによるエンジン・アシストを行なうなど、ISGの働きが拡大されている。このため、名称も「マイルドハイブリッド」となっているわけだ。なお減速回生は13km/h以下で行なわれ、この間にブレーキを離し、アクセルも踏まない渋滞時などの場合もISGによるクリープ走行ができる。
■デュアルセンサーブレーキサポート(DSBS)、HUD
1月に発売された新型スイフトで採用された単眼カメラ+赤外線レーザーレーダーを組み合わせたコンチネンタル製のセンサーユニットがワゴンRにも搭載されている。
赤外線レーザーとカメラというデュアルセンサー式のため、クルマだけでなく歩行者や道路の車線も認識できるようになっている。このため、前方衝突回避自動ブレーキ、誤発進抑制機能、車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車発進告知、ヘッドライトのハイビームアシストと幅広い運転支援ができるようになった。
またデュアルセンサーブレーキサポートとセット装備で、軽自動車初となるヘッドアップディスプレイも装備される。表示項目は、車速、デュアルセンサーブレーキサポートの作動関連情報、シフトポジション、路面凍結警報、クルーズコントロール表示(スティングレー・ハイブリッドTのみ)、ナビ装備車は交差点ガイド表示という合計7項目だ。
なお、デュアルセンサーブレーキサポートはスティングレー・ハイブリッドT、Xは標準装備、それ以外のグレードではセーフティパッケージの名称でメーカーオプション扱いとなる。ハイブリッドFX用は9万6120円、ハイブリッドFZ、スティングレーL用は5万9400円。エントリーグレードの「F」にはセーフティパッケージは追加できない。
■ボディ、シャシー、NVH
新型ワゴンRは、アルトに続き新世代プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用している。新プラットフォームの採用により軽量化とボディ全体の剛性を大幅に向上。
ただ、アルトは徹底した軽量化を行なっているが、新型ワゴンRはワゴンボディの骨格補強や振動騒音対策も重視したため、軽量化は約20kgとなっている。
ボディ骨格は従来型の2倍(重量比で17%)となる超高張力鋼板を使用するなど、ボディ全体で45%の高張力鋼板を採用し、軽量化と剛性を両立。
サスペンションは、新プラットフォーム導入に合わせ、フロントがストラット式、リヤは新たにトーションビーム式(4WDはITL式)を採用。軽量化はもちろん取り付け部の剛性が向上され、さらにサスペンションのストローク量もアップされ、乗り心地、接地性を向上させている。
また、今回軽量化は20kgに留め、その代わりに吸音、遮音材を追加して、キャビンの静粛性を大幅に向上させている。ピラー内部やダッシュサイドに発泡式遮音材を採用、ダッシュパネル内部に2層サイレンサー、3層構造のフロアカーペット、吸音ルーフライナーなどを採用し、小型車からのダウンサーザーも納得できる快適性を実現しているという。