2017年9月13日、スズキは4代目となるスイフト スポーツを発表した。この新型スイフト スポーツは同日のフランクフルト・モーターショーでワールドプレミアされ、同時に日本でもベールを脱いだ。その走りのパフォーマンスは一層磨きがかけられ、世界に通用するBセグメントの本格的スポーツ・ハッチバックとして登場した。
新型スイフト スポーツのコンセプトは「Ultimate Driving Excitement」。ずばり至高の刺激的なドライビングを楽しめるスポーツ・モデルとされている。ボディはもちろん3代目スイフトをベースにしているが、今回のスイフト スポーツは全幅1735mmとなり、ベースモデルより40mm拡幅されている。したがって、先代モデルと比べても+40mmとなる。
ホイールベースはベース車と同じ2450mm(先代に比べ+20mm)で、全長はベース車より50mm長い。全長がベース車より長いのはノーズをやや前方に伸ばしたためで、全幅の増大はワイドトレッド化と左右フェンダーの張り出しに使われている。ボディはワイド化されたが、最小回転半径は5.1mmと従来より僅かに小さくなり、取り回しは抜群だ。
■ブースタージェットエンジンを搭載
搭載エンジンは、K14C型直噴ターボ「ブースタージェット」エンジンを搭載している。先代のM16A型自然吸気エンジンに比べ、1.4Lの直噴ターボはトルク、パワーは圧倒的に向上。このK14C型直噴ターボは最新のエスクードにも搭載されているが、新型スイフト スポーツ用はハイオクタン仕様とし専用チューンを加えることで、140ps/5500rpm、230Nm/2500-3500rpmとより高い出力を発生している。
エスクード用のK14C型はフラットトルク型だが、スイフト スポーツ用は低速トルクを向上させ、中速域でトルクを盛り上げることで、気持ち良い加速を実現している。そのため、より高いギヤで走行できるようになっている。
この直噴エンジンは7穴式インジェクターを装備し高微粒子の燃料を噴射し高速燃焼を実現。ターボは、ウエストゲート・ノーマルクローズ式を採用し、低負荷でもターボ回転数を高く保ち、より加速レスポンスを向上させている。
インタークーラーは前置きの空冷式だ。さらに冷却性能を高かめるためにラジエーターを大型化し、ダブル電動ファンとするなどし、放熱量は先代モデルより38%向上させている。
またエンジンのパッケージ・サイズは先代の1.6Lエンジンよりコンパクト化し、重量も88.8kgから88.6kgへと軽量化されており、これによりハンドリング性能も高められているのだ。
■6速MT&ATのトランスミッション
このエンジンに組み合わされるのは6速MT、6速ATだ。従来の2ペダル車はCVTであったが、今回からよりダイレクトでレスポンスの良い加速が得られるステップATを採用。パドルシフトも備えている。
6速MTはスポーツ走行に最適なクロスレシオを採用。途切れのない加速を実現している。また3速ギヤにはダブルコーン・シンクロを採用。シフト・ケーブルやレバー機構部もフリクションを低減。レバー部は先代より5mmショート化してクイックで滑らかな変速操作ができるようになっている。さらにターボが生み出す大トルクに合わせ、クラッチ容量も高め、滑らかにつながり、ペダルフィーリングも向上させている。
このパワートレーンの採用により、先代に比べ0-100km/h加速タイムはMTで20%向上、ATでは25%向上している。一方でJC08モード燃費は、MTで16.4km/L、ATで16.2km/Lとなり、先代モデルより大幅に向上している。
■ボディ&シャシー
スイフト スポーツの走りを支えるボディは、主要骨格に高張力鋼板、A、Bピラーやフロアの骨格部は980MPa級の超高張力鋼板を採用。軽量さと高強度、高剛性を両立させている。さらにリヤドアの開口部やテールゲート下部にはスポット溶接を追加し、ねじり剛性を向上。走りのために骨格を強化している。
また、フロント・サブフレームの結合部にも補強材を追加し、エンジンのペンデュラム(振り子)マウントも強化して、大トルクによる加減速Gに対応している。
サスペンションはベース車と同じフロントがストラット式、リヤはトーションビーム式だが、言うまでもなくスイフト スポーツ専用にチューニングされている。前後のダンパーは、先代から採用されているモンロー製を採用。フロント・ストラットは50mm径と大径化して横剛性を向上。フロント・ハブベアリングも強化されている。
リヤのトーションビームのトレーリングアーム部も大幅に剛性を高めた専用品で、先代のスイフト スポーツに比べ、トー剛性を1.4倍に、キャンバー剛性は約3倍と大幅に高められ、ビーム部もねじり剛性を高めてリヤのグリップ性能を大幅に向上。
もちろん前後のスプリング、フロント・スタビライザーもばね定数を高めたスポーツ・サスペンションとなっている。その結果、先代モデルに比べヨー応答性は10%向上し、ロール角は5%低減されている。
ブレーキもサイズアップされている。先代は15インチサイズだったが新型は16インチとなり、径、厚さともに1サイズ上げられている。また耐フェード性も高められているので、ハードなブレーキの繰り返しでもペダル・ストロークが増えにくくしている。
タイヤは16インチ、17インチという2種類の設定で、17インチは195/45R17サイズのコンチネンタル・スポーツコンタクト5というハイパフォーマンス・タイヤを装着。また17インチホイールはリム部をローラー加工して軽量化と強度をアップし、16インチ・サイズと同等の重量となっている。
新型スイフト スポーツのシャシーのチューニングは、ヨーロッパをベースにさまざまな道路を徹底して走り込み、ヨーロッパのテストドライバーの評価を参考にしながら熟成されている。つまりヨーロッパで通用するスポーツ性能、走りの質を目指し、鍛え上げられた本格派だ。
■装備
エクステリアでは、フロント・リップスポイラー、サイドスカート、リヤ・アンダー部はすべてカーボン・シボ仕上げで引き締まった印象だ。インテリアも専用デザインで、インスツルメントパネルやセンターコンソールの加飾パネルは赤/黒の艶のあるグラデーションで仕上げている。
メーターパネルも専用でタコメーターは赤色、メーターリングも赤色のリングとなっている。また2眼メーターの中央部はカラーのマルチインフォメーション・ディスプレイで、ブーストメーター、燃費、時計、Gセンサー、パワー/トルク、アクセル/ブレーキ操作などの表示を好みに応じて切り替え表示できるようになっている。
ステアリングホイールはDシェイプの本革巻き、ペダルはステンレス製プレートなど、スポーティさを演出。
シートも新しく軽量な骨格構造を採用し、先代より7.6kgも軽量化。そして座面やシートバック部の形状、ウレタンを見直し、より体にフィットするセミバケット形状としている。
■安全
新型スイフト スポーツは、単眼カメラ+レーザーレーダーを組み合わせた「デュアルセンサーサポート」を新採用。前方衝突防止ブレーキ、誤発進抑制機能(MT車除く)、車線逸脱警報、ふらつき警報先行車発進告知、ハイビームアシストといった機能に加え、スズキとしては初の車線逸脱抑制機能、ステアリングアシストが追加されている。
さらにオプションのセーフティパッケージを選択すると、ミリ波レーダーによるアダプティブクルーズコントロール(ACC)も装備される。
■まとめ
新型スイフト スポーツは、コンパクトなBセグメントのボディでありながら世界で通用するレベルのドライビングの楽しさを追求し、そのためにパワーユニット、ボディ、シャシーなど細部までこだわって専用チューニングされている。スポーティな走りを求める人にとっては今、一番気になるニューモデルということができる。