スズキ 新型スイフト試乗記 グローバル市場で戦う高い資質を評価したコンパクト・ハッチバック

マニアック評価vol506

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1.0Lターボ、6速ATを搭載する「RSt」

2016年末に発表されたグローバルモデルとして3代目となる新型スイフトが、2017年1月4日に発売された。スズキの新世代プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)-B」を採用し、驚異的な軽量化を果たした注目のニューモデル、新型スイフトを試乗した。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

■スイフトのポジショニング
新型スイフトは、最新プラットフォームを採用し、最大120kgというこのクラスでは驚異的な軽量さをアピールしているが、同時に剛性の向上や走りの質感を高めるなど、スズキの新しいクルマ造りを象徴するクルマだ。

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スズキは同じBセグメントのグローバル・モデル「バレーノ」を2016年春に一足早く発売している。このバレーノも新世代プラットフォームを採用し、新型スイフトと同じく1.2Lの自然吸気エンジンと1.0Lのブースタージェット・エンジンをラインアップし、スイフトと兄弟関係にあるのだが、バレーノのコンセプトはファミリーユースで、ロングツアラー、上質さをアピールしている。

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それに対してスイフトは、俊敏な走りを追求したドライバーズカーという位置付けだ。そのため同じ新世代プラットフォームながら、バレーノのホイールベースは2520mm、ボディ全幅は1745mmだが、スイフトはホイールベース2450mm、全幅1695mmとやや小さく、5ナンバーサイズを守っていることにもコンセプトの違いを見て取ることができる。

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1.2Lデュアルジェット・エンジン、CVTを搭載するハイブリッドRS

スイフトは、グローバル戦略車であるが、日本ではスズキの小型車シリーズの中で柱となるコンパクトカーの象徴的なモデルだ。そのため新型スイフトは歴代のモデルのデザイン要素をうまく生かしながら、新たなデザインを生み出していることは評価したい。

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エクステリアの印象は、コンパクト・ハッチバックらしく贅肉のない引き締まったフォルムで、走りをイメージさせる動的な力感もうまく表現されている。

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■グレード展開
グレードは、従来モデルから引き継いだML、XL、XGと、新たに設定されたRS/RStが展開される。搭載エンジンは1.2Lのデュアルジェット・エンジンと、RStのみに搭載される1.0Lのブースタージェット・エンジンの2種類だ。そしてML、RSには1.2Lエンジン+マイルドハイブリッドが設定されている。

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そのため、新型スイフトは1.2Lモデルがメインで、1.0LターボのRStがスポーティ・モデル。そして後から出てくるスイフト・スポーツがスーパースポーツ・モデルというラインアップ展開となっている。

■試乗レポート
RStとハイブリッドRSの2車種と、短時間ながらハイブリッドMLに試乗した。RS系はヨーロッパの各地を走り込んでチューニングしたシャシーを持つスポーティ仕様で、ヨーロッパに輸出されるモデルはこれが標準仕様とされる。現地で参考にしたのは同じセグメントのフォード・フィエスタ、プジョー208などであり、スイフトの志は高い。

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一方、ハイブリッドMLなどの標準モデルは日本市場にターゲットを合わせたシャシーチューニングになっているのが特徴で、こちらは日本の女性ドライバーも視野に入れたスペックといえる。次ページに

まずは最もスポーティなRStのステアリングを握る。今回から電動パワーステアリングも、より上級のユニットに変更され、ヨーロッパ仕様にふさわしく手応え感を重視した設定になっている。そういう意味で従来より大きく進化したといえるが、直進のニュートラル部分から左右2cmほどがフリクション感があり、ここだけはやや人工的な味付けと感じられた。しかし、もっと舵角が大きくなると、ステアリング系の剛性感やリニア感が感じられ、すっきりとした操舵フィーリングになる。

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乗り心地は、フラット感があり、締まったフィーリングで安定感がある。試乗車はまだ走行距離も短く、微低速域では少しフリクション感も感じられたが、車速が上がるとそれも消える。

またリヤ席での乗り心地も思いのほか良好で、ピッチングがよく抑えられている。ただ、舗装の表面が粗い路面ではフロアの微振動、ごろごろ音が伝わり、特にリヤシートでは少し気になった。

■クラストップレベルの1.0Lターボと1.2LNAエンジン
3気筒1.0Lターボのブースタージェット・エンジンは、低速トルクが強力で、シフトの速い6速ATとのマッチングもよく、加速も気持ちよい。バレーノに搭載されるブースタージェットはハイオク仕様だが、このスイフトはレギュラー仕様という点が違っている。

バレーノのエンジンも低中速トルクを重視したチューニングとなっていたが、このスイフトは、その点がさらに強調され4500rpm以上のゾーンになると伸びが頭打ちになる特性だ。

4気筒1.2LのハイブリッドRSはCVTとの組み合わせで、こちらも実用上の低中速トルクは十分ある。これもボディの軽量さがうまく生かされている感じがした。CVTも常用域では滑り感を抑えて扱いやすくなっているが、やはり中間加速でアクセルを大きめに踏み込むような場合にはリニアさが少し失われる。一方で巡航時の滑らかさ、100km/hで1900rpmという回転数の低さなど、走りと経済性のバランスはよい。

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3気筒1.0Lターボ(左)と4気筒1.2Lマイルドハイブリッド・エンジン

もう一つ、特質すべきは加速時のエンジンのメカノイズが巧みに押さえられていることで、不快な高周波の音や機械的な騒音がカットされていることだ。3気筒ターボ、4気筒1.2Lエンジンともに、このBセグメントのハッチバックではトップレベルの仕上がりといっても過言ではない。

ハイブリッドMLは走り出した瞬間から、RS系とは違うフィーリングだ。ステアリングの操舵力が軽く、サスペンションが初期からしなやかに動き、乗り心地を重視していることが感じられる。つまり、RS系と標準モデル系はうまく造り分けされているのだ。スイフトに興味を持った人はどちらが自分の好みなのか、乗り比べをお勧めしたい。

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XGのみは175/65R15、それ以外は185/55R16サイズのブリヂストン・エコピアEP150を装着

■パッケージング
パッケージングはフロントシートに座った状態では快適で、斜め前方の視界も十分に確保されている。またリヤシートの居住性も外観からの想像よりも快適で、閉じ込められたような閉塞感はない。リヤ席の足元スペースは従来型より10mm伸ばされ、着座位置は45mm低められ、ヘッドクリアランスも十分だ。

前後のシートも前後長がしっかり確保され、このクラスの中でもしっかりとした作りだ。ラゲッジスペースも、従来モデルより開口部が広げられ、奥行きも拡大されて使い勝手が向上している。

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拡大され、使い勝手も向上したラゲッジスペース

運転支援装備は、新たにカメラと赤外線レーザーを組み合わせ、歩行者、クルマ、車線を検知できる「デュアルセンサーブレーキサポート」を、フル・エアバッグなどとセットにしたセーフティパッケージとして設定(9万6120円)している。

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カメラと赤外線レーザーを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポート」のセンサー部

新型スイフトは、同クラスでもトップの軽量さを生かした走りはもちろん、しっかりとしたボディ骨格がもたらす剛性感や安定感、合理的なパッケージングなどによりBセグメントの王道を追求したクルマで、強豪がひしめくグローバル市場で戦うことができる資質を持ったクルマだということができる。

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