【スズキ】スイフト試乗記 省燃費設計でもスイフトらしさがある新グレード レポート:髙橋 明

マニアック評価vol208

「スイフトらしさ」を損なうことなく燃費を向上させた

2013年7月にマイナーチェンジを受けてクラストップの26.4km/Lという低燃費をマークした、スズキ・スイフトに試乗したのでレポートをお届けしよう。

■楽しさと燃費向上の両立を目指した

排気量1.2L前後のガソリンエンジンは各社が凌ぎを削って燃費競争を繰り広げているが、ドライバビリティを損なうようなエンジンはユーザーにとっては受け入れがたい。クルマに詳しくない一般ユーザーにとって、レスポンスの悪い貧弱なクルマだとしても「こんなもんなんだ」と理解し、その結果クルマへの興味はどんどん薄れていってしまう。クルマとは移動のための道具以外の何物でもない、なんてことになりかねない。

従来のK12型をベースに燃費を改善。ポイントとなったのは燃料噴射ノズルをツイン化したこと

スイフトのエンジン開発には、「スイフトらしさ」を損なうことなく燃費をよくする目標があった。さらに、直噴化すると燃費は良くなるがその分コスト増となるので、「現状のポート噴射のままであっても、まだできることはある」という思いでこのエンジンを設計したと、四輪エンジン第一設計部の芹沢臣司氏が語っていた。

さて、従来のK12B型エンジンをベースに燃費改善を行なうには、エンジン本体のチューニングと車輌全体の見直しをする必要があり、その詳細についてはすでに報告している。コチラを参照。

そのトピックのメインとなるのがツインジェットと言われる、燃料噴射ノズルを2本に増やしたことだ。ちなみに、デュアルジェットになったエンジンも型式名に変更はなくK12B型となる。

奥に見えるのが2本になった燃料噴射ジェット

ひと昔前であればツインジェットにするのはパワーを出すときに、不足する燃料を補うためにツイン化するという手法であったが、燃費を良くするために増やすというのは、これまでとはまったく逆だ。考え方としては、1本のノズルから噴射されるより、2本の噴射のほうが1回あたりの噴射量、噴射時間が少なくでき、さらに燃焼室側に近づけることで燃料の壁面付着を少なくし、より均一な混合気を作りやすく燃焼もさせやすいということだ。

そのためには、燃焼室のコンパクト化を行ない、可能な限り球形状を目指したデザインにし、ピストントップもバルブリセス(窪み)を小さくし、圧縮比は11.0から12.0まで上げている。バルブタイミングは、低負荷時には大量のEGRを燃焼室に導入し、負荷が大きい場合には一般的な燃焼としている。

また、ジェットの位置としては燃焼室により近い位置へ変更している。位置的には吸気ポートの噴射位置を燃焼室側に近づけたのではなく、旧来と同じ位置で、より燃焼室へと近づけるという手法である。つまり、深く差し込まれた位置になったわけだ。さらにジェット配置もパラレルで、オートバイなどのエンジンにあるような燃焼室を挟み込むようなレイアウトとはしていない。

そして、クールドEGRの採用で、燃焼室内の温度を下げノッキング対策をしている。ピストンはオイルを噴霧し冷却、ウォータージャケットの形状も改良し冷却性能を上げているということだ。

EGRクーラーを採用して燃料室内の温度を下げてノッキング対策を実施

 

■燃費はリッターあたり5km以上も改善!

これらのエンジン改良とともに、スズキグリーンテクノロジーであるエネチャージや新アイドリングストップ、エコクールを導入し燃費向上を果たしている。ちなみに、これまでのスイフトの燃費は21.0km/Lであり、約5.4km/Lも改善されたことになる。

さらに、出力において馬力/トルク共に従来型と変更がなく、67kw(91ps)/118Nmというスペックだ。

ライバルとなるマツダ・デミオのスカイアクティブは1.3Lで62kw(84ps)/112Nm、来月発売(2013年9月)になるホンダ・フィットも1.3Lで73kw(100ps)/119NmというスペックでいずれもFFのCVT搭載である。

試乗したモデルは2WDのCVTでエコカー減税の免税モデル。26.4km/Lという最も燃費の良いグレードである。キーとなるのは、燃費を良くする改良をした結果、ドライバビリティを損なっていないか?ということだと思う。開発目標にも含まれるポイントだけに、市街地での通常の走り方をしたときにどうか?というフィールチェックをしてみた。

上記にあげたモデルとの乗り比べではないので、そもそもフィーリングでしか判断できないが、市街地での走りはいたって普通に走れる。何か特別際立つようなものはないが、スロットル開度に対する反応もナチュラルで、非力なモデルによくあるアクセル早開きとは感じない。踏み込んだ際にも、ある程度のトルク感はあり、遅いと感じる場面はなかった。

逆に新アイドリングストップが13km/hから止まるようになったので、節約感が伝わり好ましい。また、アクセルの踏みなおしでアイドリングストップ後の再始動も素早く、不安に感じることもなく素直に走れる印象だった。

タイヤサイズは185/55-16ということもあり、デミオの175/65-14、新型フィットの175/70-14などと比較すれば、スイフトらしいハンドリングが確保されているのがわかる。したがってよりエコ性能に振ったタイヤや空気圧などの設定を変えれば、もっと燃費を稼げるのかもしれないが、スイフトらしさを維持するための着地点ということかもしれない。

■スズキ・スイフト価格表

■スズキ・スイフト四面図

スズキ公式サイト

COTY
ページのトップに戻る