4代目となった新型ジムニーが2018年7月に発売され、気になる大人たちが増えている。実際に乗ってみると、その見た目や走りで林道を走りたくなったり、敢えて険しいルートを選びたくなる衝動に駆られる。そのパッションはどこから来るのか?今回はエンジン、ミッションから検証してみた。
軽自動車のジムニーと登録車のジムニーシエラがあるが、軽自動車のジムニーには660ccのエンジンが搭載されている。
このエンジンはアルト・ターボRSに搭載しているエンジンをジムニー用に改良したもので、軽のスポーツモデルにも使われているエンジンなのだ。
型式はR06A型で吸気VVT(連続可変バルブタイミング)付きのターボエンジン。同じ型式のNAエンジン(自然吸気)のシリンダーヘッドを改良して搭載している。特徴としては低中速域での燃焼速度を高め、ノッキング回避を狙った高タンブルポートを採用している。圧縮比は9.1で64ps/96Nmと軽自動車自主規制値になっている。
タービンはエキゾーストマニホールド一体型シリンダーヘッドに直付けされ、燃焼室からの排ガス通路を短くして、排ガスエネルギーをよりダイレクトにタービンに取り込めるようにしている。タービン側は排ガス通路面積を縮小してレスポンスの向上を図り、ターボラグを感じさせないセッティングになっている。
また悪路走破を想定し、耐水性能、耐雪害性能を考慮した吸気レイアウトとし、エアクリーナーもエンジン上部に設置している。また、インテークマニホールドを小型化してエンジン幅を60mmコンパクト化も行なっている。
一方、5ナンバーのシエラは旧型の1.3Lから1.5Lに排気量アップされている。搭載するエンジンはK15B型の直列4気筒DOHC自然吸気タイプだ。こちらはオーソドックスなエンジンでポート噴射タイプ。スズキが持つツイン・インジェクターのデュアルジェットの技術は投入されていない。出力は75ps/130Nmで先代の1.3LだったM13A型より10ps/12Nmほど出力はアップしている。
これらのエンジンに組み合わされるトランスミッションは、5MTと4ATだ。イマドキ4ATなのだが、これはコンベンショナルな1.5Lエンジンの採用も関係してくるが、まず、グローバルで販売されるのがシエラだ。特に新興国やアジア圏でも人気が高く、ガソリン品質の問題が出てくる。ガソリンが瓶詰され、あばら家の軒先で販売しているような環境でも使われているのがシエラだ。
そうした環境で故障した場合の修理も考えると、最新の先端技術満載エンジンでは修理対応できない事態になってしまう。修理部品はどこでも入手できることが重要となってくるので、コンベンショナルなモデルが必要になるわけだ。さらに、縦置きのエンジンというのも関係している。
スズキでは現在横置きモデルがほとんどで、縦置き用のミッションがない、という問題もある。専用にハウジングを作り対応する方法もあっただろうが、コストとの兼ね合いということもあっただろう。
ただ、エンジン同様に、どんな環境でも修理が可能でなれば働くクルマとしては未完成とも言えるわけで、シエラではそのあたりを踏まえ、4ATとK15Bの組み合わせになっているわけだ。もっともメインで販売されるのは5MTのほうでAT需要はかなり少数だと予測している。
こうしたメカニズムの選定においても、グローバルで働くクルマとしての完成度を、過酷な環境でも安心して走れることを目指していることが分かる。まさに本物志向だ。だから、痘痕もえくぼではないが、4ATもいい味に思えてくるかもしれないのだ。
ちなみに、乗ってみると新型ジムニーのNVHは素晴らしく、一般道では4ATであるネガを特に感じなかったのだ。この辺りはvol3の試乗レポートでお伝えしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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