【スズキ】新型車ハスラー試乗記 新しいニーズの創出に期待できる意欲作 レポート:髙橋 明

マニアック評価vol243

スズキ・ハスラー
発売直後から大人気のスズキ・ハスラー。今までにない新しいジャンルを再びスズキが提案してきた

2013年の東京モーターショーでも、ひときわ注目度の高かったスズキ・ハスラーが2014年1月8日から市販が開始され、「スズキ始まって以来の受注かもしれない」(販売店のコメント)というほどの人気になっている。そのハスラーに試乗してきたのでレポートしよう。

◆ポジショニング
開発コンセプトには「遊び」というキーワードがあって、遊びが中心となる商品開発が行なわれた。そして、コンセプトの確立、シルエット、デザインという手順を踏んで開発されている。スズキにはもともとKeiというセダンタイプでもなく、ワゴンタイプでもないクロスオーバー的なモデルがあった。評判が良かったものの製造は終了している。

一方、ハードな遊びをイメージさせるモデルにはジムニーがある。が、2ドアだ。そこで、遊びがテーマではあるが、スポーツカーのようにハードかつマニアックになりすぎず、ワゴンよりのモデルとして新規開発されたのが、このハスラーというわけだ。(発表会で鈴木会長は、コペンやホンダS660を意識しつつ、あんな2シーターの売れないクルマは造らない、うちはクロスオーバーだ!というメッセージも)。

できあがったモデルは新しいデザインであり、どこにもカテゴライズされない分野に位置するモデルとして誕生した。一方、四輪技術企画部の服部守悦氏は、「走りの性能では信頼があり、安心感が大切です」」ということでワゴンRをベース開発をしたということだ。20年継続している信頼のブランドだけに安心感は強い。

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◆デザイン

ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mmで言うまでもなく軽サイズのリミット。全高に制限はないが、今回は1665mmとしている。ホイールベースはワゴンRと同じ2425mmだ。デザインテーマにはコンセプトを具現化するために、3つのテーマがあり、ワゴンとSUVを融合したデザインをしている。その辺りの詳細は、発表時の記事を参照してほしい。

ハスラーの最大の特徴は、ボクシーなシルエットとヘッドライトを中心とした顔だろう。うるうるした目はかわいらしさを際立たせ、逆にシルエットはオフロードをイメージさせるような力強さがある。男性も女性も興味をひきつけられている理由だろう。

インテリアはインパネカラーが目を惹く。外装がオレンジのモデルはインパネもオレンジで、他モデルはホワイトになっている。しかも材料着色という方法で塗装を行なっていない。この手法でここまで艶感や硬質感、そして紫外線対策(変色)できているのは見事だ。

スズキ・ハスラー
材料着色のカラーインパネ。ツヤ、耐候性も高く質感のよいインテリアを演出する

室内長はワゴンRとほぼ同等で2160mmあり、幅も同じく1295mm。高さのみ15mm低いがそれでも1250mmでワゴン車と同等の広さを兼ね備えている。後席のセパレートスライドやリクライニングなどもあり、満足度は高い。ラゲッジフロアは濡れたものや汚れたものでも、汚れをふき取りやすい素材で収納は便利。ワンタッチでフルフラットになる後席は使い勝手がとてもいい。

スズキ・ハスラー
リヤシートはセパレートスライド式を採用。ニースペースも広く後席乗車でも圧迫感はない

◆パワーユニット
スズキ独自の環境技術であるスズキグリーン テクノロジーは言うまでもなく搭載(既報の記事)。5MTを除き免税モデルとなっている。ちなみに、5MTは75%減税。搭載のエンジンはR06A型で吸排気VVTシステムを持つDOHCで自然吸気とターボがある。トランスミッションもCVTと5MTがあるが、マニュアルは自然吸気モデルに限定される。自然吸気の2WD+CVT車の燃費は29.2km/L、ターボエンジン2WD+CVTは26.8km/Lとなっている。

スズキ・ハスラー
エンジンはターボと自然吸気(NA)の2種類。NA・2WD+CVTの燃費は29.2km/L、ターボエンジン2WD+CVTは26.8km/L

また、ユーザーからの声に応える形として「なぜ、今アイドリングストップしなかったのか?」の答えが分かるように、「アイドリングストップインフォメーション」」を新たに採用。アイドリングストップしない理由にはいくつもの理由があり、例えば低水温や、充電中である、ハンドルを切っているなど、ユーザーには分かりにくい状況があるため、新規に設定したということだ。

◆インプレッション

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試乗コースは東京ディズニーランドのある浦安周辺。こうした臨海エリアはフラットな地形と碁盤の目に区画整理された道路で、走行コンディションとしては快適な場所だが、詳細なチェックはできない環境ともいえる。

スズキ・ハスラー
ワゴンR同様のヒップポイントの高いドライビングポジション

インパクト十分なエクステリア&インテリのハスラーの試乗は楽しみでもあり、ワクワクもする。運転席からの景色はワゴンRと同じヒップポイントとしているものの、ウインドウが小さいためか、乗用車ライクな感じだ。

だが、走り出すと、なるほどワゴンRをベースにした車両であることを感じる。もちろんエンジンも同じなので、サウンドも同じように聞こえてくる。アクセルを少し踏んだだけでも、グッと走り出す制御は上手く、いわゆるアクセルの早開きにしているが自然吸気エンジンでもトルク不足、出だしのかったるさを感じさせない。ターボであればなおさら、力感を得ることができ「走るじゃん!」という印象を持つ。軽の非力をうまくカバーする演出だ。

ブレーキは13km/hからアイドリングストップするが、自然な制御だ。ペダルタッチにも違和感などなく安心感がある。ステアリング操舵感も軽く、低速時の車庫入れなど軽々と操舵でき、女性ユーザーからも好まれるだろう。

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タイヤサイズは165/60 15インチ
キャプション入る
専用デザインのスチールホイールはガンメタとホワイト

 

165/60-15という軽としては大径のタイヤは、乗り心地もいい。ステアリングの直進の座りはよく締まっているが、セルフアライニングトルクの弱さは気になるところだ。これはワゴンRにも共通するが、こちらの味付けもナチュラルになると、より直進性の安心感が高まるのではないかと思う。

気になる点として60km/h弱の速度のとき、CVT車のエンジン回転数は1500~2000rpmの間なのだが、エンジン音のこもりが気になった。特にターボ車では気になる。NAも同様にこもりがあるが、それほどではなかった。ワゴンRにはない現象なので、室内の広さや形状など複雑な要因が考えられるが、こもり音はなんともいえない圧迫感のような感じになるので、気になるものだ。

エクステリアデザインからは想像できないほど広いキャビンは、コンセプトどおり仲間とワイワイやりながら楽しい空間として活躍するだろう。カラーリングされたポップなインテリアをはじめ、チープさがない内装は好感度が高い。センターメーターやスピーカー、エアコンの噴出し口など、ヘッドライトと共通のうるうる系のデザインリングで装飾され、統一感のあるデザインだ。

ここまで先進的な印象のあるインテリアなら、コンベンショナルなシフトレバーも思い切って変更したい。例えばコラムシフトに変更するとか、ボタン式にするなど。また、走りの印象もワゴンRと同じという印象ではない、あらたなアジリティを追加してみてはどうだろうか。

スズキ・ハスラー
デザイン性とオーソドックス性が同居するインテリアは所有欲を満足させる仕上がり

もっとも、あまり先行しすぎるとユーザーをおいてきぼりにした、開発サイドの自己満足になりかねない。そのあたり、バランスを考えての今回のハスラーなのだろう。ユーザーがクルマを選ぶ最初で、最も重要な要素はデザインであることは間違いない。そのデザインで十分なインパクトを与え、好まれる仕上がりになっているのを確認するだけでもヒットする理由がよくわかる試乗だった。

また、現在の軽自動車の主流がワゴンRやムーヴ、NWGNというハイトワゴン系だが、そのきっかけとしてワゴンRが大きな意味を持っている。それまではアルトやミラのようなセダンタイプが主流であったが、軽乗用車の王道の形状はワゴンタイプであると、一変させた経緯がある。ハスラーもまたその新しいマーケットの創出という役目を担っているように感じる。今後の市場の変化にも注目しておきたい。

スズキ・ハスラー主要諸元

スズキ・ハスラー価格表

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スズキ公式サイト

COTY
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