マニアック評価vol353
低価格と低燃費を前面に打ち出してデビューしたスズキ・アルト。少し前にはアルトのスポーティバージョン「RS」がデビュー。そしてもう一台の派生モデル「ラパン」が3代目としてフルモデルチェンジデビューした。ユーザーの約90％が女性という特徴を持つ、3代目アルト・ラパンの試乗レポートをお届けしよう。＜レポート：髙橋 明/Akira Takahashi＞
冒頭でも書いたようにターゲットは女性。特に20代、30代がメインターゲットになるラパン。一家に複数台クルマを所有する環境のユーザーで、通勤や通学、日常のアシとして使うための購入層、というのがメインターゲットになる。そのため、求められる性能は毎日乗るクルマとして、アルトと共通の開発目標があり、それに加えて女性要素というのもあるわけだ。
20代の女性になったつもりで試乗してみる…のは無理なので、できる範囲で想像をめぐらしてレポートする。
ボディサイズは言わずもがな、軽規格いっぱいのサイズ。その中で日常のユーティリティを追及し、デザインされている。全長3395㎜×全幅1475㎜×全高1575㎜、ホイールベース2460㎜となっている。エンジンは660CCで自然吸気。デザインでは発表時の詳細記事で解説したように、丸四角いデザイン要素をあちこちに取り入れ、また「隠れラパン」というウサギをモチーフにしたアイコンを随所にちりばめる遊び心が楽しい。
開発スタッフに数多くの若い女性が参加して、使い勝手や性能に対する意見交換も行なっているため、まさに女性ユーザーのための、そして毎日乗るクルマとして造られている。例えば、小物入れ、ティッシュボックス、500mlの紙パックが入るドリンクホルダー、コンビニフック、などなどきっと便利なんだろう、と想像した。正直なところ、タカハシのマイカーにはモノがまったく置かれてなく、置く場所があると便利というのは女性ならでは？なのか…。
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ハードな部分での印象では、ここでも若い女性が毎日乗るクルマとして目標設定している。もちろん低燃費でなければならない。その結果燃費はJC08モードで35.6km/Lだ。
開発スタッフに話を聞いたところ、シャシー担当からはスタビライザー装着の提案を受けたという。つまり、ロールがそれなりに大きいのだ。それは、荷重が外側に大きくかかるようなコーナリングをしたときに分かる。だが、開発者の脳裏には、若い女性が毎日乗る…このワードがキーとなり、スタビライザーの装着は見送られた。
ターゲットをかなり意識した、そして絞り込んだ開発で特徴付け、ユーザー訴求をしていく手法は、ユーザー側からも歓迎される。こうした訴求ポイントを持ちながらも、気になったところをレポートすると、騒音だ。全般的に音の入りを抑えたいと思った。市街地を走ると頻繁にアイドルストップをする。逆に言えば、再始動が頻繁にあるわけで、その際のエンジン音の入りが気になるのだ。
またロードノイズも大きめで、長時間、長距離利用がレアケースだとしても、静かに越したことはない。高速走行でも音は大きめだ。音を静かにするには、吸音材が必要。そうなるとコストに跳ね返る…、制振材で振動も抑えたい…となると車重が重くなり、燃費が悪くなる…うむむ。
それとステアフィールでは、もう少し上質感があってもいいのではないかと思う。ハンドル操舵も軽く、女性にもやさしいのはわかるが、このあたりは部品を上級のものにする必要はなく、制御の中でフィールを変えられないのだろうか？
アクセル・レスポンでは、リニアに反応しないでワンテンポ遅れて発進する。このあたりもまさに意図する制御なので、好みなのかもしれないが、リニアに反応するハンドル、アクセル、ブレーキは車格に関係なく、歓迎される世界観だと思う。しかし、開発陣は反応遅れこそ、運転がしにくいと感じることは理解しつつも、妥協点を探した結果ということなのだろう。
こうして気になった箇所をピックアップしてしまうと、良くない印象に受け取られてしまうが、実際は好印象のクルマで、男性にもきっと好評だと思う。ターゲットがはっきりしているからこそ、ユーザーにも理解しやすい、ということなんだろう。女性専用にしておくのはもったいない気もするが、うさぎの絵が描いてあるリモコンキー（ラパンのアイコン）を持つおじさん、というのもどうかと思うので、ま、女性メインのクルマということで、おしまい。
