スズキ アルトターボRS試乗 新MTのAGSに走りの快感を刺激された!

マニアック評価vol336

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ニッポンの誇るフジヤマとケイジドーシャ! アルトターボRSを箱根でたっぷりと走らせてきた

お買い求めやすく、気軽に乗れ、さまざまな用途に対応できるベーシックな軽自動車としてデビューした8代目アルト。そのスポーティ版として、本格的な走りが楽しめる「アルトターボRS」の試乗をしてきた。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

新型アルトのエクステリアデザインは、とてもユニークで印象に残るものだ。そのアルトをスポーティにそして走りを予感させるモデル、ターボRSはさらに効果的にデコレートしてクルマ好きの心に刺激を与えている。試乗のステージは箱根のワインディング。標高も高くアップダウンも厳しいステージだが、とっても楽しめる軽自動車だった。

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ターボRSの詳細はこの記事に詳しいが、専用チューニングされたエンジンと、サスペンションのほか、専用装備も多数ある。もっとも特徴的なのは、トランスミッションが5速のAGS(オートギヤシフト)のみの設定であることだろう。MT、CVTの設定はない。が、これがお気に入りになるという自信があればこその判断なのだろう。

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アルトターボRSのミッションはAGSオンリー。箱年のワインディングでその楽しさを実感

AGSはスズキの呼称で一般的にはAMT=オートメーテッド・トランスミッションやロボタイズド・トランスミッションなどと呼ばれている。ベースはマニュアルトランスミッションで、クラッチ部分を自動変速するように改良した2ペダルだ。したがってシフトチェンジはATというより、MTと同様にドライバーの意思でシフトしてあげるものだと思えば、理解が簡単だ。

さてAGSであることを踏まえ走りだす。最初のインフォメーションは、乗り心地が硬い方向ではなくしなやかに動く方向になっていることだ。もちろんスポーティドライブを視野に入れたモデルだから、専用のサスペンションチューニングがされているのだが、この乗り心地はボディ剛性や入力のいなし方などの工夫から、サスペンションがよく働くボディになっていることに由来しているのだろう。タイヤも専用開発されたブリヂストン・ポテンザRE050Aで、やはりしなやかで乗り心地のよいタイヤという印象だ。スポーティモデルにありがちな、固めた乗り心地ではなく、よく締まったアシで、乗り心地もよいサスペンションだ。

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フロントのシートはターボRS専用に設計された、大きめのシートが装着され、ホールド感の高いシート。特にサイドのサポート性と肩周りの包まれ感もあり、さらに座面の左右の盛り上がりにより太もものホールド感もあり、セミバケットのような印象だ。座面はしっかりした座り心地で硬めのため、よりサスペンションの動きなどが感じやすいのかもしれない。気になるのはサイドサポートなどウレタンの剛性と形状に由来する要素を多く感じたため、経年変化はどうなのだろうかという疑問は残った。

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アルトターボRSのボディカラーはホワイトパール、ブラックパール、ピュアレッドをラインアップ

標準装備されるパドルシフトを使ってマニュアルモードでワインディングを走ってみる。エンジンは7000rpmのレッドゾーンまで一気に吹け上がり、オーバーレブ寸前のところで回転をキープ。自動でシフトアップはしない設定だ。2速から3速へのシフトアップは、標準のアルトと比較してDモードで20%変速速度がアップし、Mモードはさらに10%変速速度が速くしてある。そのため、ワインディングを気持ち良く走れる。

減速する際にはブリッピングをするので気分も高まる。4速から3→2へとダウンシフトする際、コーナーへブレーキを引きずりながら綺麗にダウンシフトが決まる。ヒール&トゥのスペシャリストになった気分で、運転がうまくなったと感じられるだろう。これはかなり気持いい。

DSCN7147ブレーキのタッチもよかった。踏み応えがしっかりあり、前のめりをあまり感じることなく制動する。これは13インチのベンチレーテッドディスクやマスターシリンダーを変更し剛性感をアップさせているから、そう感じるわけだ。

Dモードではどうか?このモードは市街地走行で利用するのがベターだ。ワインディングだと勾配の影響を受けて自動でキックダウンをする場面がどうしてもある。その際にAMTのネガな部分の失速感を味わうからだ。シフトアップにおいてはスロットルを緩めてあげれば、失速感は全くなく、快適にアップシフトする。

市街地でのDモードの場合、エンジンのトルク不足によるキックダウンという場面は少なく、キックダウンが必要な場合、たいていスロットルを抜いている場面だ。そのためダウンシフトには抵抗なく、一段低いギヤに自動で変速し失速感を感じることなく走行できる。また、下り坂などでエンジンブレーキが使えるように、むやみにアップシフトしない制御も良くできている。

開発の山瀬哲雄氏によれば「もっともセンシティブな部分で、開発にはじっくり時間をかけました」というようにシフトチェンジには注力したようだ。そのポイントとなるのはソレノイドバルブで、数多くある製品とシフトエレメンツとの組み合わせから成り立つ。その制御次第でクラッチの切れるタイミングなどがきまり、失速感を味わったり、快適と感じたりするので厳しい開発であったことが想像できる。ちなみに、サプライヤーはイタリヤのマニエッティ・マレリ社製だ。

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ひとつ残念なのはエンジン音だ。走りが本格的に楽しめ、ハンドリングが楽しいと感じるアルトなのに、サウンドの点においてアルトのままであったのが残念。ターボRSらしくサウンドに厚みを持たせたり、ブローオフバルブの音が聞こえたりしたらもっと楽しいだろうと思う。

全体の印象として、ベースのアルトを上手にカスタマイズ&チューニングした印象で、自分の手も入れられると思う範囲もあり、カスタマイズの楽しさが残された魅力たっぷりのモデルという印象だ。だから、エンジンサウンドを好みにチューニングする、これもターボRSを手にしたオーナーの楽しみなのかもしれない。

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